第32話:桃色の罠、あるいは記念の代償
美しいピアノの余韻が漂う中、
バロが満足げに鍵盤から手を離し、私へ向き直った。
『皆様。これほど素晴らしい聖夜の思い出に、
記念撮影などはいかがでしょうか?』
「あ、いいかも! 写真撮ろうよ!」
サキの無邪気な賛成に、バロは待ってましたと
ばかりに瞳を怪しく光らせた。
『せっかくの機会です。全員で、あのガソタムの
「パイロットスーツ」を着用して撮影……
などというのは、一生の記念になりますぞ?』
その言葉が出た瞬間、私の頭の中で
全ての点と線が繋がった。
「……。バロ、さてはこれが狙いだったわね?」
おじいちゃんの魂胆はお見通しだ。
サキとチカに、あの特殊なスーツを着せて、
その瞬間の「換装(着替え)シーン」を
隈なく盗撮・記録しようとしているのだ。
「えーっ、あの動画のピンクの服!?
着てみたーい! コスプレみたいで楽しそう!」
「私も……ちょっと興味あるかも」
何も知らない親友たちは、ノリノリで
バロの提案に乗っかっていく。
「ちょっと二人とも! あれがどんなに
恥ずかしい服か分かってるの!?」
『フフフ、レイ様。人数分の「新品」を
既に地下で生成済みでございます。
さあ、皆様! 最高の……いえ、
記念すべき撮影会の始まりですぞ!』
おじいちゃんの剥き出しの欲望に、
私は眩暈を覚えながら天を仰いだ。




