第14話:冷徹なロジックと、乙女の涙
対面に座る安室さんは、微塵も表情を動かさない。
私の名演技など、最初から視界に入っていないかのようだ。
「古谷さんの感情は理解しました。ですが、現実は別です」
安室さんは淡々と、再開発の必要性を説明し始めた。
人口減少、経済の停滞、地下鉄による物流の効率化。
淀みなく流れる完璧なロジックに、ぐうの音も出ない。
「再開発が行われない場合、この町のインフラは維持できません。
……感情論だけで、未来を殺すおつもりですか?」
「なんだと、この若造がーーッ!」
横に座るデモ仲間のリーダーたちが、一斉にブーイングを上げる。
会議室は怒号で包まれるが、安室さんは眉一つ動かさない。
……性格が悪すぎる。理屈が正論すぎて、反論の隙がない。
このままでは、論理的にねじ伏せられて調査を許可させられる。
私は、最後の手段に出た。
再びカメラを真っ直ぐに見つめ、わざとらしく両手で顔を覆う。
「うっ、うう……。安室さんは、冷たいんですね。
理屈さえ通れば、私たちの心はどうなってもいいんですか?」
指の隙間から、しっかりとカメラ目線で涙を流してみせる。
……名付けて、最終兵器『被害者ムーヴ』。
「こんなに怖い思いをさせるなんて……ひどいですぅ!」
わざとらしい震え声。メディアの記者たちが一斉にシャッターを切る。
安室さんは初めて、わずかに眉間にシワを寄せた。
……勝った。どんな正論も、カメラの前の涙には勝てない。
私は心の中で、おじいちゃんのガソタムに勝利を報告した。




