第13話:全米(地元)が泣いた、私の名演技
市役所の会議室。そこは、私にとっての
『戦場』だった。
向けられた数台のテレビカメラ。光るフラッシュ。
私、麗は、一呼吸おいてから深く
顔を伏せた。
「……この町には、おじいちゃんとの思い出が詰まっているんです」
顔を上げた時、私の目には大粒の涙が溜まっていた。
……もちろん、目薬と『バレたら人生終了』という
恐怖の賜物だ。
「あの古い平屋、あの静かな庭……。
地下を掘り起こすことは、私たちの心を切り裂くことと同じです!」
私はあえてカメラを真っ直ぐに見つめ、
可憐に声を震わせた。
……実際は、地下室のガソタムが見つかるのが
怖いだけだ。
「皆さん、想像してください。
静かに眠る土地に、冷たい鉄のドリルが
突き刺さる痛みを。
私は、この町の……地球の呼吸を
守りたいんです!」
……言い過ぎたかな?
でも、メディアはこういうのが大好きだ。
記者たちが「おお……」と感嘆の声を漏らし、
ペンを走らせる。
これだけ大げさに言えば、強引に調査なんて
できないはず。
冷汗を涙に見せかけ、
私は心の中でガッツポーズした。
「だからお願いです。どうか、私たちの日常を壊さないで!」
最後は、祈るように胸の前で手を組んでフィニッシュ。
……完璧だ。これなら勝てる。
その時、対面に座る市側の担当者が、
静かに名刺を差し出した。
その名字が目に入った瞬間、私の演技は本物の
絶望に変わる。
『再開発推進課 安室』
……安室。
おじいちゃんの言っていた『運命の男』が、
よりによって私を追い詰める役として現れるなんて。
カメラの前で、私の顔が今度こそガチで
引きつり始めた。




