第30話:卓上の饗宴、あるいは迷い子の二尉
突如出現した巨大なアイス彫刻と高級食材に、
真砂さんは「な、何だ、奇襲か!?」と
椅子を蹴って立ち上がり、激しく混乱している。
けれど、サキとチカはフォークを持ったまま、
「あー、始まった始まった」と平然としたものだ。
二人は既におじいちゃんの「異常」に慣れていた。
『真砂様、どうぞお座りを。今から目の前で
最高級の和牛をフランベさせていただきますぞ』
バロのホログラムが、空中に実体化させた
調理器具を自在に操り、ライブキッチンを開始した。
激しく上がる炎と、居間中に広がる芳醇な香り。
「バロ……。本当に、恥ずかしいからやめてってば」
私が頭を抱える中、バロは手慣れた手つきで
美しいクリスタルグラスを真砂さんの前に置いた。
『真砂様。本日は公務ではございません。
よろしければ、こちらのヴィンテージワインを
嗜まれてはいかがでしょうか?』
「え……。あ、いや、私はその……」
真砂さんは戸惑いながらも、バロの差し出す
宝石のように輝く液体から目が離せない様子だ。
『さあさあ、遠慮はいりませんぞ。
このワインは、レイを救ってくださった
美しき守護神への、心ばかりの感謝ですからな』
執事の顔でさらりと「美しき」なんて言葉を混ぜる
おじいちゃんのテクニックに、私は冷や汗を流した。




