第23話:剥き出しの本性、あるいは最低の告白
「いいからやりなさい!」
私の命令が飛んだ瞬間、バロのホログラムが激しく乱れ、
執事の仮面が音を立てて剥がれ落ちた。
スピーカーからは、怒鳴りつけるような
おじいちゃんの生々しいダミ声が響き渡る。
『ええい、やかましいわい! ええか麗、
ガソタムへの正規の搭乗手順ちゅうのはな、
コックピットの中でスーツへ「換装」する工程が
不可欠なんじゃ! それがロマンちゅうもんじゃろが!』
おじいちゃんは、悔しそうに声を荒らげて続ける。
『さっきの真砂は、外で着替えてきおってからに……。
一番肝心なシーンを記録できんかったんじゃぞ!
それでも女じゃからと、必死に自分を納得させたんじゃ!』
コックピットに、おじいちゃんのドス黒い
欲望が充満していく。
『なのに今度は、男じゃと!? 野郎のデータなんぞ
1ミリも需要がないわ! そんなもんのために
わしのリソースは割かせんぞい!』
「……おじいちゃん、最低」
私は冷めた目で、空中を漂うホログラムを見つめた。
驚きを通り越して、もはや憐れみすら覚える。
「自分の孫に変なスーツ着せただけじゃなくて、
他の人の着替えまで覗こうとしてたなんて……。
本当、この世で一番最低のじじいね」
私の蔑むような視線を浴びてもなお、
おじいちゃんは「わしの美学じゃ!」と叫び続け、
断固としてシミュレーションを開始しようとしなかった。




