第18話:模擬戦の胎動、あるいは閉ざされた殻
「あの……古谷さん、よろしいでしょうか」
私とバロの醜い言い争いに、シートの真砂さんが
申し訳なさそうに、けれど冷静に割って入った。
「あ、ごめんなさい! ええと、このホログラムは
バロ。この機体の管理AIよ」
私が紹介すると、バロは真砂さんの前に浮遊し、
慇懃に一礼して自己紹介を始めた。
『初めまして。本機のサポートを務めるバロです。
……貴女のお名前をお伺いしても?』
「真砂聖奈二等空尉だ」
『真砂聖奈様。……たった今、本機のサブパイロット
として登録いたしました。以後、お見知りおきを』
登録が終わると、私はマイクのスイッチを入れた。
「野田さん! 起動しました! このまま真砂さんの
訓練に入ってもいいですか?」
『……ああ、許可する。そのまま進めてくれ』
地上の野田さんの指示を受け、私はバロを見た。
「バロ、訓練モード。真砂さんに操縦を教えてあげて」
私がハッチへと足をかけ、機体から降りた瞬間。
背後で「ガコン!」と重い音が響き、ハッチが閉鎖。
唸っていたエンジン音も、嘘のようにスッと消えた。
機体の外部モニターには『SIMULATION MODE』
の文字が青白く浮かび上がっている。
外側からは何も見えない、沈黙の鋼鉄。
その中で、おじいちゃんのスパルタ教育が、
ついに幕を開けたのだ。




