第9話:唯一の鍵、あるいは計算済みの罠
九条さんたちが帰り、ようやく静まり返った居間。
私はドッと出た疲れに身を任せ、ソファに沈み込んだ。
「……。結局、また関わることになっちゃった。
でも、教えるだけなら何とかなるわよね」
私が自分に言い聞かせるように呟くと、
バロがふわりと現れ、絶望的な事実を口にした。
『レイ様。あの方々に操縦を教えたところで、
ガソタムが一歩でも動くことはございません。
あの子は、レイ様にしか動かせないのですから』
「……え? どういうこと?
自衛隊の人が下手だから動かないんじゃないの?」
『いいえ。認証システムはレイ様の精神波でしか
起動しませんし、最高フレームを起動させることも
レイ様にしか不可能なよう設計されております』
私はあまりの事実に、持っていたクッションを落とした。
「……はあ!? じゃあ、他の人がどんなに
訓練したって、絶対に動かせないってこと?」
『左様でございます。レイ様という「鍵」がなければ、
あの子はただの豪華な鉄のゴミ箱に過ぎません。
おじい様の、執念のプロテクトでございます』
私は頭を抱えて、ソファの上でのた打ち回った。
「ちょっと待ってよ! 私、さっき『了解』しちゃったよ!
動かないものを教えるなんて、詐欺じゃない!
どうするのよ、これ!!」
教えたところで誰も動かせない。
その事実に政府が気づけば、結局、最後には
私が乗るしかないという結論になるのは目に見えている。
「一生ガソタムから解放されないじゃない!!」
おじいちゃんの野望は、私が思うよりもずっと深く、
私を逃がさないように張り巡らされていた。




