第4話:街角の肖像、あるいは風化への願い
学校の帰り道、私は駅前の大きな街頭ビジョンを
見上げて、思わず深い溜息をついた。
『伊達じゃない! この冬、最高の輝きを君に』
そんなキャッチコピーと共に映し出されているのは、
あの日、必死の形相でタンカーを止めた私の顔。
宝石店の広告らしいけれど、許可なんて取られていない。
視線を落とせば、コンビニの雑誌棚にも、
スーパーのポスターにも、私の顔とあのセリフ。
「……どこに行っても、自分と目が合うんだけど」
駅のホームで電車を待っていると、
背後から「あの、すみません……」と声をかけられた。
振り返ると、同世代くらいの女の子たちが、
目を輝かせながらスマホを差し出している。
「ガソタムの麗ちゃんですよね!?
サインください! あと、一緒に写真もいいですか!?」
断る間もなく囲まれ、次々と焚かれるフラッシュ。
笑顔を作る余裕もなく、私はただ戸惑うばかり。
「ごめんなさい、急いでるから……!」
逃げるように電車に飛び込み、私は激しい鼓動を抑えた。
「まあ……。犯罪者にならなかったんだから、
これくらいは我慢、我慢。いつか風化するわよね」
私は自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。
ようやく最寄り駅に着き、マフラーに顔を埋めて
足早に自宅の門をくぐる。
ところが、玄関の前には見知った影が立っていた。
九条エマさんだ。
彼女は私の姿を見つけると、いつもの余裕ある微笑みを
少しだけ脇に置いて、静かに私を見つめていた。




