外伝 第2/6話 鉄拳あるいは不器用な騎士道
ビルの暗い隙間。追い詰められた赤ん坊を抱いた女性に、
数人の男たちが下卑た笑みを浮かべて迫っていた。
「へっへ、もう逃げられないぜ。
大人しく俺たちと一緒に来な」
その時だ。暗がりの奥から、
不敵な若者の声が響いた。
「待ちな。どういう事情か知らねえが、
女性に対するマナーがなっちゃいないぜ」
そこに立っていたのは、作業着を翻す若き日の源造。
「なんだてめーは!」と男たちが殴りかかるが、
源造は鋭い眼光でそれを見切る。
鮮やかな身のこなしで拳をかわすと、
重いカウンターを一閃。
瞬く間に数人を叩きのめすと、男たちは
「覚えてろよ!」と捨て台詞を残して逃げ去った。
源造が「お怪我はないですか」と優しく
手を差し伸べた――
「ちょっと待ったぁぁぁーーー!」
私の絶叫が、居間のホログラムを激しく揺らした。
「私、おばあちゃんのこと聞いてるの!
どこのアクションドラマよ! 脚色が過ぎるでしょ!」
詰め寄る私に、バロは眼鏡をクイと直して
平然と言い放った。
『はい、ですから。これがおじい様とおばあ様の
真実の出会いですぞ。……いやはや、
若き日の源造様は、実に絵になりますなぞ』
私は、あまりに出来すぎた展開に、
引きつった笑いを浮かべてソファに沈み込んだ。
「……あ、そう。……へぇ、すごぉい……。
おじいちゃん、昔から無鉄砲だったんだね」




