外伝 第1/6話 邂逅あるいは泥濘の天使
秋の気配が混じり始めたある日の放課後。
私は居間で、国防色の球体――バロに向かって、
ずっと気になっていたことを切り出した。
「ねえ、バロ。私のおばあちゃんって、
一体どんな人だったの?」
私が赤ん坊の頃に亡くなったと聞いているおばあちゃん。
アルバムの中にしかいないその人は、私にとって
どこか遠い国の住人のような存在だった。
『……ほう、シズのことですかな。れい様が、
あのお方のことを聞きたがるとは珍しいですぞ』
ホログラムのバロが、眼鏡を指で押し上げながら、
慈しむように過去のデータを探り始めた。
『あのお方は……そうですな。泥の中に咲く蓮の花の
ように凛として、それでいてお日様のような
温かさを持った人でしたぞ』
バロの語りとともに、ホログラムが居間の景色を
セピア色の古い街並みへと塗り替えていく。
『あれは、源造がまだ若く、己の技術を何に使うべきか
答えを出せずにいた頃の話ですぞ。
……街の灯りも乏しい、暗い夜道でのことです』
ホログラムの中で、高いビルに挟まれた狭い路地裏が
映し出される。街灯の光も届かないその暗がりに、
一人の青年が立ち尽くしていた。若き日の源造だ。
そこで彼は、赤ん坊を抱え、追っ手から逃れるように
潜んでいたシズと出会うことになる。




