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イタリアファンタジー戦史   作者:


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27/40

緒戦の勝利

 だがそれでも、縄梯子は剣によって切断され、白カフタンは血に染まって城壁の下に転がり落ちていった。

 正規兵と精鋭部隊の攻撃でさえ落ちない目の前の要塞に、イザク・パシャの焦りといら立ちが募っていく。

「なぜだ? なぜあんなちっぽけな要塞がここまで持ちこたえる? コンスタンティノーポリに比べればゴミのようなものではないか」

「それにあれだけ大砲を打ち込んだのに、なぜ城壁が崩れない?」

 苛立つイザク・パシャと対照的に、ヴァレッタは冷静だった。

 愛用の武器である戦槌を手に、城壁の上を駆けながら兵たちを叱咤激励している。

「ひるむな! 見ろあの指揮官を! いらついているぞ!」

 薄く高かった古代の城壁は、大砲に対抗するためにヴァレッタ指揮の下で必死に分厚くされ、大砲の衝撃を少しでも分散するため、地表近くの城壁は垂直でなく緩いカーブを描いている。

 だが戦において、数は力だ。

 三万を超えるトルティーアの正規兵と精鋭部隊は、やがて城壁を乗り越えて侵入してきた。

「相手が悪かったな」

 だが熟練の騎士ですら止められなかったトルティーアの精鋭部隊を、ヴァレッタは手にした戦槌の一振りでなぎ倒していった。

 身の丈を越えるほどの柄の先端に、大人の頭ほどもある大きさの鉄の塊。

 瞬く間に城壁の上は静かになった。

「ふん、遅いわ」

 だが西の城壁を守るガルーシアも負けてはいなかった。引き締まっているとはいえヴァレッタに比べれば細身の体で、刃が大人の胴体ほどもある巨大な幅広の戦斧を操る。  

 ある兵は頭から薪を割るように真っ二つにされ、ある兵は胴体を大木でも断ち切るかのように一刀両断にされた。

 パウロも負けてはいなかった。

 手にした幅広の剣、カットラスで並み居るトルティーアの兵たちを次々に斬り捨てていく。小柄な彼に合わせ、軽量化のため刀身に血抜きも兼ねた溝が彫られていた。

「死ね、しねえ」

「イタリアーナ人は皆殺しだ」

 狂ったように襲い来るトルティーアの兵だが、敵と向かい合っての実戦ならパウロは嫌というほど経験している。

 眼下に大軍を見下ろしたほどの恐怖はなく、冷静に敵を切り捨てていった。だがそんなパウロにも、おぞましさに似た恐怖を感じるときはあった。

「いい男じゃねえか」

「お持ちかえりしてえ」

 時折、パウロに熱い視線を向ける兵がいるのだ。

 トルティーアではひげを生やしていない男性は男娼とみなされ、年若いパウロは彼らの好みだった。王のハレムにも年若い男が多数召し抱えられている。

 日が西の空に沈むころ、兵を引いたのはトルティーア側だった。

 一方イタリアーナ・シュパーニエンの兵たちは初戦の勝利を喜び、抱き合ったり泣いたり、空に向かって雄たけびを上げたりしている。

「やった、やったぞ!」

「俺たち、勝った!」

「ざまあみろ、トルティーア共め!」

 負傷兵も多かったが、足を引きずりながら歩く者も、頭に血がにじんだ包帯を巻いている者もその表情は一様に明るい。

 一方指揮官は冷静だった。

 城壁の上でヴァレッタはイタリアーナのある北の方角に向かい。

 ガルーシアはシュパーニエンのある西の方角に向かいひざまずき、ディオスの神に対し感謝の祈りを捧げた。

 パウロもそれに倣いながら、シッタ・デ・マーリの方角に向けて呟く。

「クリスティーナ、まずは勝ったよ」


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