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56ページ目 菫さん、お見舞いに行く




(……俺もしかして……死ぬのか?)




 薄れゆく意識の中、颯にとって最悪の事態が脳裏をよぎる。今ぼんやりと見えているのは、自分に駆け寄り必死の形相で声を掛けてくれている日向達だ。中でも日向は特に大きな声で叫ぶように颯の名前を呼んでいる。

 それでも視界は更にかすみ、意識がより混濁していく中……僅かに動く颯の頭の中はパニック状態になり、気が付いたら命乞いまでしていた。


(……おいおいやめてくれぇ! せっかく不良(ワル)の世界から足を洗えそうで日向とも仲直りできたのによ! なんで今!?)


 水泳を辞めざるを得なくなってからつい数日前まではいつ死んでもいいとすら思っていた。が、今となっては自分が死ぬかもしれないという現実が、どうしても受け入れられない。颯は今頃になってから、酒やタバコに手を出したことを激しく悔やんだ。完全に意識がなくなってしまう直前、颯が思っていたことはただ一つ……。



(こんなとこで……死んでたまるかよ……!)














 それからどれくらいの時間が経っただろうか。目を開けた颯の視界に飛び込んできたのは……辺り一面、白一色に染まった世界だ。そのうえ今は真夏だというのに全く暑さを感じず、むしろ暖かい。どこかに寝転んでいるのも何となくわかり、背中には柔らかくふんわりしたものが当たっている。

 それらに気付いた颯は……むしろ諦めの境地に入った。




(ここって……まさか……天国?


 やっぱり俺は……)


 


 

 再び目の前が真っ暗になりかけた、その時――


「颯ッ!!」


「やっと起きてくれたのね!!」


「お兄!!」


 声が聞こえてきたと共に、それまで真っ白だった視界に父・母・妹の顔が突如入ってきた。颯は特にここ数ヶ月のあいだ碌に家に帰っておらず、三人の顔を見たことすらかなり久しぶりだった。


(……親父、母さん、青葉(あおば)(妹)……なんでここに……?


 あ、もしかして……)


 ここで颯は今、自分がどこにいるのか気が付いた。天国にいるはずのない家族の姿があるうえ、口には透明なマスクのようなものが被せられている。少し前まであんなに息が苦しかったのに、今は何事もなかったかのように呼吸ができている。恐らくこのマスクのおかげなのだろう。




(ここ……病院か? つーことは……


 俺…………助かったのか…………?)



 

 まだ何が起こったのか全く聞かされておらず、何もわからない。そもそもまだ少しだけ頭がボーっとしている。それでも……颯は何となく確信していた。自分はまだ生きていると。

 すっかり胸を撫で下ろした颯は、知らず知らずのうちに涙を流していた。











 こうして意識を取り戻した後の颯の体調はみるみるうちに回復し、数日後には人工呼吸器を取り外した。もちろんまだ本調子ではなく安静にしなければならず、颯はずっと寝込んでいる。無論、酒も飲めないしタバコも吸えないうえ、スマホを見ることもできなくて暇だが文句は一切言わない。

 その間にも颯の元には誰かしら家族が毎日、お見舞いに来ていた。ある日は颯の記憶の中よりも白髪が増えてしまった父が


「本当に悪かった! 水泳ができなくなって、お前が一番辛かったのにわかってやれなくて……。」


 と、平謝りしてきた。またある日には……


「ごめんなさい……。お母さんには何の取り柄もないから、つい颯が自慢でSNSに投稿しちゃって……もう辞めたから」


「私も……ごめんなさい。前は正直お兄なんか大嫌いで、もう帰ってくるな!って思ってたけど……やっぱり生きてて欲しくて……」


 前よりも皺の増えた母と、颯につけられたタバコの火傷跡が手の甲に残る妹も、父同様に頭を下げていた。そんな家族の様子に、颯は罪悪感を覚えると同時に激しく後悔した。なんでこんな酷いことをしてしまったのだろう……と。


「いや…………俺こそ本当にごめん……もう殴ったり蹴ったりしないから……」


 いずれに対しても、颯はぎこちないながらも謝罪し、もう二度と暴力は振るわないと心から誓った。



 颯のお見舞いに来たのは家族だけではなく……


「万波さーん!」


「うるせーな……ちょっとは声小さくしろよ、ここ病院なんだから」


「えー、これでもいつもよりかは小せえさぁ〜」


 日向も毎日のように会いに来てくれている。ただでさえ声の大きい日向に、颯が口に人差し指を当てるのも最早お約束となっている。

 颯の意識が戻った日も、日向はあの瞬のバーで再会した日と同じように病室まで飛んできた。「万波さぁん……本当によかったさぁ」と心の底から安堵して涙ぐみながら。だが、颯はそんな日向を病床から眺めながら、「あたりめーだろ……」とも思っていた。なぜなら……


「日向……お前らが助けてくれたんだから、今こうして生きてるんだよな……ありがと……」


 照れ臭くなりながらも改めて礼を言う颯だが……なぜか当の日向はキョトンとしている。


「……俺のおかげじゃないさぁ。それはお医者さんが治療してくれたから……」


「ちげーよ、俺が倒れた時しっかり応急処置してくれたんだろ? うちの親から聞いたぜ」


「……ぁあ〜!」


 颯がそこまで説明したところで、日向は納得した。

 あの夜、喧嘩の後に颯が倒れた後すぐに菫が救急車を呼んでくれた。しかし到着までは10分ほどかかると告げられたので、男子三人で協力して応急処置をしていたのだ。寛斗と凜が代わりばんこで心臓マッサージを施し、日向は人工呼吸をしていた。颯が心臓に持病を抱えていたことを日向は知っていたのと、倒れた時に胸を押さえていたうえ、息も苦しそうだったから。

 しかし……日向は謙遜する。


「……いや〜、これぐらいやらんとダメだわけさぁ。万波さんが倒れたのは俺のせいさぁ……」


「……は?」


「だってあの時、本来は俺が万波さんを助けるつもりでいたのに逆に助けてもらって……俺のために戦ってくれたせいでこうなったばーよ」


 そう言った日向に、颯は暫くの間ポカーンと絶句していた。


「……お前それ本気で言ってんのか?」


「え?」


「おいおい、俺が倒れたのはお前のせいじゃないぜ。酒飲んだりタバコ吸ったり夜遊びしてた俺が悪いんだよ、こんな身体なのにな。てか俺、なんで酒もタバコもやっちまってたんだろ……」


 颯は窓の外を遠い目で眺めながら、そう呟いた。日向は引き続きキョトンとしていたものの……自然と口角が上がり、ふふっと笑った。


「万波さん……にふぇーでーびる」


「だからそれはこっちの台詞だって」


 つられて笑い出した颯に……日向は別の話を切り出した。


「それと……俺、万波さんが倒れる前に言おうと思ってたんですけど……」


「? ……ぁあ、」


 そういえば何か言いかけてたな……と、颯はあの時のことを思い出しながら耳を傾ける。すると、日向は思いもよらないことを提案してきた。




「万波さん…………うちのガッコに戻りませんか!?」




「…………はぁ!?」




 颯は思わずそう口走った。高校を辞めてからの約一年間、また同じ高校に戻るなんて考えたことすらなかったから。


「いやいや、冗談はよせって……」


 そうは言ったものの……日向の目は真剣だ。


「いやいや本気だわけさー! だって……これからどうするんすか? もう悪い奴(アシバー)と付き合うこともねぇんですし……」


「こっ、これからって……まだ何も考えてねぇよ! だいたいまだ暫く入院しねぇと……」


「じゃあ退院したらうちの学校に行けばいいさー。また万波先輩と同じ学校行きてぇさー」


「………………」


 あまりにもグイグイ来る日向に、颯は黙り込んでしまう。退院後のことを考えてくれていたり、また自分と同じ学校に行きたがってくれているのは悪い気がしないのだが……。しかも、日向はまた何か閃いたのか、「あっ、そうさー!」と言って手をポンと叩く。そして目をキラキラ輝かせ、もう一つ提案する。




「万波さん、うちのクラスに来てくれたらいいさー! あの時も何人かいたけど、2-3のうまんちゅはジョートーばーよ!」


「………………」




 更に輪をかけて突拍子もない提案をされ……颯は困惑の表情を浮かべ、再び口をつぐむ。


「……な、なんでお前ら2年と一緒なんだよ!? 俺お前らよりも一つ年上だぜ?」


 暫しの沈黙の後で颯はまずそう訊くと、日向はあっけらかんと答えた。


「だって万波さん、去年、ってことは2年生の2学期あたりで辞めましたさぁね? それならちょうどいいじゃないですか。俺らはこれからですし」


「……てかそう簡単に戻ってこれるもんじゃねーだろ! だいたい俺一旦学校辞めてるんだぞ」


「でも……!」


 颯が突っぱね、日向が言い返そうとしたところで、病室のドアがガラッと開く。そこには看護師が一人立っており、かなり冷たい目で日向をギロリと見る。


「あの〜、そこの君……そろそろ面会時間終わるんだけど」


「すっ、すみませんさぁ! じゃ、万波さん……俺、待ってますさぁ〜」


「あっ、おいっ……」


 尚も困惑する颯に構わず、日向はそれだけ告げて病室を去って行った。




(あ〜、危ねぇ危ねぇ。もう少しで(わじ)られるところさ〜。とりあえず万波さんが元気そうでよか……)


 そんなことを考えながら、病院の階段を軽やかに降りて出口へと向かっていると、マナーモードにした日向のスマホが鳴り出した。


(……ん、誰さぁ…………あ!!)


 日向はスマホの画面を見るなり、病院内では流石に走れないので早歩きして総合受付の前を通過し、開いたドアから外へと出た。それから電話に出る。


「……あ、もしもし〜。ごめんさぁ〜、ちょっと病院にお見舞いに行ってて……」



 この日、颯の元を訪れたのは日向だけでなく……


(確か……ここね)


 日向から颯の入院先を聞いた菫も、電車とバスを乗り継いで病院へと足を運んでいた。本来は一人で行くつもりはなく、LIMEで寛斗と凜にも声をかけていたのだが……断られてしまい、今日は菫一人だ。寛斗は部活があるから明日にするとのことで、凜に至っては……


“別に俺が行かなくたっていいだろ。たぶん上原は毎日のように行くんだろーし”


 と言って撥ねつけた。確かに凜の言う通り、日向はほぼ毎日見舞っていると話していたが。


(全くもう……生田目君らしい断り方ね。


 …………ん?)


 地図を見るために手に持っていたスマホをバッグにしまい、いざ病院に入ろうとしたところで菫は一旦立ち止まった。入口のところの柱の裏側に、人影があることに気付いたからだ。


(あっ、上原君今日も来てたのね。それともこれからかしら? でも今電話中ね。先に行きましょ)


 柱の裏側に背中をもたれかけていたのは……日向だ。どうやら電話をかけているらしく、スマホを耳に当てがいながら何か話し込んでいる。時折笑顔を見せながら、親しげな口調で。なので、菫は彼が友達または颯と電話をしているのかと推測し、声をかけずにそのまま病院の中に入った。




 数日ぶりに会った颯は、前よりも落ち着いていた。髪の色こそ変わらないものの、ツンツンに立てていた髪はすっかりへたっており、沢山つけていたピアスも全て外している。


「あ……! お前は……」


 菫の姿を見た途端、颯はハッとしたが……名前が出てこないらしく口籠る。同時に菫もハッとし、今更だがまだ自己紹介をしていなかったことに気が付いた。そもそも初めて颯に会った時も「通りすがりの者」だと名乗っていたのだ。


「あっ、すみません。まだ私の名前言ってなかったですよね。私、上原君と同じクラスの宮西菫です」


 改めて自己紹介をした後、菫は持ってきたヒマワリの花を渡したが……ベッドの脇に置いてある花瓶にも同じ花が飾ってあることに気が付いた。颯によると、そちらは日向が昨日持ってきてくれたものらしい。菫は今日も日向を入口前で見たと告げたところ、颯は吹き出した。


「アイツ今日も来たし、何ならさっきまでいたぜ。長居しやがるんだから看護師に怒られそうになってやんの」


「そんなに長く居たんですか。……まぁそれだけ万波さんと話したいことがいっぱいあるんですね」


「あぁ、ほぼ毎日来てくれてんのによ……しかも今日は変なこと抜かしやがるし」


「変なこと?……って何ですか?」


 ついその「変なこと」が何なのか気になった菫は、思わず訊いてみた。すると、颯は退院したら公ヶ谷高校に戻ったらどうだと勧められたこと、更に自分のクラス、すなわち2-3に来て欲しいと言われたことを話してくれた。うんざりした様子で話した颯だったが……


「いいんじゃないですか? 別に戻っても」


 それとは裏腹に、菫も日向の意見にあっさりと賛成した。当然、颯は菫がそんな反応をするとは全く思っておらず、ただただ絶句する。そればかりか菫も日向と全く同じ話をしてくる。


「ていうか万波さんは退院した後、何するつもりなんですか?」


「だ、だから何って言われても……」


「まさか病気を理由に学校も行かず働かず……ってことはないですよね。あっ、お医者さんに止められてるんなら話は別ですけど。

 ……でも今のご時世、高校ぐらい卒業してないとまともな仕事はないですよ?」


 私がそうだったから、今更だけど高校に通っているのよ……と思いながら、菫は悪い笑顔を見せながら颯に忠告する。これに対し、颯は焦った様子で菫と目を合わせずに小声で言う。


「……いや確かに高校は出とかなきゃって思ってるぜ? これまで散々迷惑かけた分、家族孝行したいって思ってるし……。それならちゃんと高校出て、ゆくゆくは定職を持たねえとダメだろ」


「ちゃんと考えてるじゃないですか、これからのこと」


「でも何も前と同じ高校に行かなくたって……。俺、部活辞めた後で学校行くのガチで嫌だったんだからな! 皆エースじゃない俺にガッカリしてたんだし……」


 どうやら颯は菫と同じく高校に行って卒業しないと……とは思ってはいるものの、かつて通った公ヶ谷高校が嫌なようだ。過去のトラウマに縛り付けられているせいで。

 なので、菫はそのトラウマへの対処法を颯に伝授する。


「ガッカリする奴にはそう言わせとけばいいんですよ。どうせお前らなんか50メートルも碌に泳げねーだろ、病気の辛さだってわかんねーだろ、こっちは前まで学園のスターだったんだぞ!……って。そんな感じでメンチ切っとけば誰も何も言わなくなるんじゃないですか?」


「…………」


 菫の斜め上のアドバイスに、颯は意表を突かれたのか黙っている。そのリアクションからして、颯はスターだのエースだの持て囃されていても、謙虚な姿勢を崩さなかったのだろうと菫は判断した。同時に、それなのに水泳を奪われてしまった颯のショックは計り知れないものだろうと察する。

 それでも、菫は颯に優しく語り続ける。


「それに……万波さんには上原君がいるじゃないですか! 水泳がなくてもここまで慕ってくれてますし、彼がいてくれるだけでも百人力だと思います。しかもその上原君がウェルカムって言ってるんですよね?

 それなら……願ったり叶ったりじゃないですか」


 日向もいることを伝えられ、颯は目を丸くした。と同時に、菫には颯の目が少し輝いたようにも見えた。しかし、颯はすぐに表情を変えて腕を組み、「うーん」と唸る。


「……いや、そりゃウェルカムって言ってくれんのは嬉しいぜ?

 でも……俺学校辞めてんだよ! 辞めた奴がそう簡単に戻ってこれる訳ねぇ……」


 颯が言い終わるのを待たずして、再び病室のドアがガラッと開いた。程なくして中年女性の声が聞こえてくる。


「あら、アンタ学校…………辞めてないわよ?」



 菫に続いて病室に入ってきたのは……颯の母だ。菫はせっかく面会にいらしたのに邪魔をしてしまったと恐縮するが、颯の母は気にしていないとでも言うかのようにニコニコする。


「あら、颯のお友達かしら? 来てくれてありがとうね」


「いえ……お邪魔してしまってすみません」


「あら、いいのよ〜」


 つい先程かなり重大な発言をしたにも関わらず、颯の母はまず菫にしれっと挨拶をする。が、母のその発言に耳を疑った颯はもちろんそれどころではなく、意味がわからないとでも言いたげに問い詰める。


「……はぁ!? どういうことだよ辞めてないって! 確か親父が退学届学校に持ってったって……」


 半ばパニック状態の颯とは反対に、颯の母は冷静に説明する。




「実はねぇ、お父さん退学届じゃなくて休学届出してたのよ。表向きは病気のためってことにして。いつかアンタがまた学校行きたくなった時のために……」




 まさかの事実に……颯はもちろん、菫も動揺する。


「……ま、万波さん、自分のことなのに知らなかったんですか?」


「お、おう……てっきり退学したのかと……だって親父が届出す前は碌に学校行ってなかったし……」


 唖然とした顔の菫に聞かれ、颯はしどろもどろになりながらもそう返す。こんな状況にも関わらず、颯の母はニコニコ笑っている。


「だから学校に連絡さえすればいつでも戻れるわよ〜。よかったじゃない、あの沖縄の子(日向)と同じクラスに行けるかもね!」


「……母さん、ひょっとしてさっきの俺の話聞いてたのか?」


「……だって私が病室に入ろうとした時にちょうど颯とお友達(菫)が話してたんだも〜ん」


 今度は颯の母が決まり悪そうに、息子と目を合わせず小声で言う。颯は心底呆れた様子で頭を抱え、大きなため息をつく。


「ったく……もう学校行かねぇつったのに……何勝手なことしてくれたんだよ親父め……」


 そうぼやくのとは裏腹に菫がニヤニヤ笑い出すので、颯は「何がおかしいんだよ」とでも言いたげに睨む。が、菫は全く気にせずに口を挟む。


「それじゃあ話が早いじゃないですか〜。まだまだ若いですし、幸い警察に捕まったこともなけりゃ十分やり直しがききますよ! てゆーか今こそやり直すチャンスだと思いますけど?」


「…………」


 再び二の句が告げない颯をよそに、彼の母に遠慮したのと面会時間がもうすぐ終わるので、菫はこれだけ告げて病室を後にすることにした。




「私も万波さんがうちのクラスに来てくれるのは全然アリって思いますし、待ってますよ〜。まぁ無理強いはしないですけど。

 じゃあ時間になるんで、私そろそろ帰ります。早く元気になってくださいね!」


「ま……待て!!」




 踵を返してそのまま帰ろうとした菫を、颯は引き止める。「え?」と思いながら菫が振り向くと、颯はすぐに口を開く。


「お、お前……一体何者なんだよ!? 俺より一個年下のくせにやけに達観してやがるし……」


「コラ! 女の子にお前呼ばわりしないの!」


 颯の母がすぐさま彼を咎めているのを見て、菫はついふふっと笑った。


(……実は9個年上なんだけどね、あなたよりも……)


 そんなことを考えながらニッコリ笑い、菫はこう言ってからドアを開け、その場を離れた。




「……ただの普通の高校生ですよ。それじゃあお邪魔しました〜」




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