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第186話

 上から冷たい風が吹き込んでくる。


 7階の階段を上りきった先の8階は既に丸ごと消失していたからであった。それまでの地響きの強さと激しい戦闘を物語る。代わりにそこには白い空が広がり、煙に覆われている中で乱雑する瓦礫と倒れている下っ端達。黒い翼を生やした銀髪の男が立ってその戦いを遠くから見守っているようだ。


「おーおー、これはこれは。ぞろぞろとお揃いで」


「遊鴉のレイヴン……!」


 フォルテシアはその名を呼ぶ。涼しげな声で背を向けたまま言ったのはそう、夜明けに外の警備にあたっていたワイルドコブラ構成員を黒い雨で殲滅させたあの男だった。カラスの羽が落ちていたのも、彼の降らす雨によるもので放たれた羽は投げナイフと同等に遠くから敵を刺す。


 彼は振り返ってこちらを見た。


「親父とカヴラさんの喧嘩の邪魔すんなら、オレが相手になってやるぜ?」


「スカールさんの側近だ、簡単にはいかねえぞ……!」


 シーザーも警戒しながら身構える。それもそのはず、ホテル屋上であるここで戦えば、翼で飛び回れて移動範囲も格段に広い彼の方が圧倒的に有利だ。奴が降らせる漆黒の羽による黒い雨の的にされてしまう。そうなれば特に蔭山が危ない。




 すると奥の煙が晴れ、その奥に立つ巨大なシルエットが露わとなる。上半身、肩幅がとても大きい怪物と長髪の男が互いに睨み合っていた。


 その巨大な怪物の鋭く野生的な目がギロリとこちらを向いて、視線が合う。


「ああん? いつの間にかギャラリーが増えてるな。それに無視できねえ女が……こりゃ面白くなってきたぞ!!」


 対する長髪の方もゴーグル越しで視線を向けてくる。


「この騒ぎを聞きつけてやって来やがったかフォルテシア! それに余計な奴らも混じってるな」


 ここまで上がってくるまでの地響きの理由はやはりだった。変身して人型から蛇人間としての本性を露にした怪物カヴラに対し、骨で作られし長柄な武器を持ってやりあっていたスカール。例えるならば、人と猛獣の決闘だ。


 その地響きもスカールを倒そうとその巨体でカヴラが動き回ったためだろう。奴が何かすれば下の階に建築時の想定以上の重圧がかかりそれが地を鳴らす。


「フォルテシア。ここに来たのはコイツが狙いか?」


 スカールはカヴラの方を見たままの姿勢で疑問の問いを投げかけてくる。 


「化蛸を捜して来ましたが、今はこの戦闘を止めに来ました。この街のために……」


「これ以上、戦いを続けるならばあなたも攻撃対象としますよ」


 投げナイフを懐から取り出し、三本の刃が二人の王に向けられる。


「チッ、喧嘩両成敗か。こちらの都合良くはいかないようだな」


 唇を噛み、面倒くさそうな顔をする不死王。どちらに加担するわけにもいかない。正しく、公平に、制さなければ。


「はははははははははは!! お前ら、スカールと同じでダーガンを捜してるのか? 一足遅か──────」


 ――――!


 その時、カヴラに待ったをかけるようにどこからか着信音が鳴り響いた。ロックでリズム溢れるメロディ。誰の電話かと辺りを見渡し他の面々も同じ動作をするが、音の方角で予測がついた。


 スカールかカヴラ。だが、それを取ったのは、


「……もしもし。おせえぞ!!!!!」


 それは意外にも後者であった。巨大な体の彼は懐から、自分の手よりも格段に小さいスマホをつまむように取り出し、耳に当てた。


「こっちは待機場所のホテルが襲撃された!! ったく、援軍はまだかよ!!!」


 ………………。


「なに? ダーガンがやられたァ!???」


「────え」


「なんだと……!?」


 一瞬、言葉を疑った。ここまで姿を見せなかった化蛸。蔭山も驚愕する。どうやら誰かにやられたようだ。その後も相手の電話にウンウンと頷き続けるカヴラ。


「もう着いてるのか。救援の兵隊はこっちに送ってくれると。ったく、もっと早くしろよな!! 仕方ねえ、今行ってやる」


 そっとスマホの通話を終えた彼はスカールの方を見る。



「援軍からの電話のようだな、カヴラ!! 誰だ?」


「ハッ、それは教えられねえよ! ともかく予定が変わった。本来なら迎えの車が来ると思ったんだがなあ」


 カヴラの背後にいる組織はどうやら彼を直接助けに来るようであった。すると怪物化した彼の姿は縮まって元の巨漢サイズへと戻っていく。


「オレとしてはここで戦いてえが、分が悪いからこの勝負は預けるぞ、スカール」


「――待てカヴラ!!」


 怪物化した姿では不可能だろう、屋上の外に向かって高速で突っ走る。そんな彼をスカールも追跡、更に横からレイヴンもとっさの判断でともに追いかけるが一歩遅く、



「ケリつけたかったら、渋谷まで追ってきてみろ!! ははははははははははは!」」



 笑い声とともに高く跳び上がった蛇拳王はビルから飛び降りて姿を消した。スカールはその真下を手すりから覗き見て、



「くそっ……レイヴン、今すぐ追え!!」



「はいよー、親父!!」



 スカールの横を黒翼を羽ばたかせ、レイヴンは急降下していく。



「俺は隊を整えてから追いかける!! 頼んだ!!」


 追跡に向かうレイヴンに向かって、スカールは叫んだ。それに対し、レイヴンは飛びながら軽く手を挙げた。



読んでいただきありがとうございました!

これが2月最後の投稿になります。


来月からは徐々に新展開へと入っていきます。

スカールとカヴラの戦いをお送りしている間出番がなかった諒花にも再びスポットがあたり、

ダーガン戦の後にあちらで何があったのかなどが明らかになっていきます。お楽しみにです。



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