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ガラス景色

 ピキピキ‥‥‥パキパキ‥‥‥。


 音を立てて、向こう側が見えてしまうほどに透き通ったガラスの花が咲く。

 たった今咲いたばかりの花は、ガラスの壁の向こうから差す光に当てられて、キラキラ光っている。光が透き通った地面を照らして、次から次へと透明なガラスの花が音を立てて咲いていく。透明な地面からは、透き通った草花が生えてくる。


 光に照らされたガラスの花と、草と、壁が、キラキラと光を反射して光っている。

 お互いが光を反射させて、壁の内側がどんどん温まっていく。

 温まっていく空気に比例して、ガラスの植物がどんどん成長していく。



 ピシッ‥‥‥。


 ガラスの壁に、小さな小さな、近づかなければわからないほどの小さなヒビが入った。

 いつの間にかガラスの外側は暗く、内側に差してくる光は消えている。


 ピシピシ‥‥‥。


 透明な地面を覆っていた花に、草に、音を立ててヒビが入り始める。

 

 ピシピシ‥‥‥カシャン!


 音を立てて、ガラスの花が、草が、崩れ始める。

 どんどん崩れていくガラスの植物たちに比例して、空気はどんどん冷たく冷えていく。


 シャン‥‥‥シャリン‥‥‥シャラン‥‥‥。


 崩れてしまった植物たちの上に、私の上に、小さな小さな、細かい細かいガラスの雪が降りそそぐ。

 ガラスの植物たちに染められていた風景は、間もなくガラスの雪景色に染められてしまう。


 ピシピシ‥‥‥。


 ガラスの壁が、ガラスの雪の重さに耐えられず、どんどんヒビ割れていく。

 外の冷たい空気が、ひび割れた壁の隙間から入ってくる。

 ガラスの雪と、壁の隙間から入ってくる冷たい空気にさらされて、私の身体はどんどん体温を奪われていく。


 ピシッ‥‥‥。


 一際大きな音を立てて、ガラスの天井にヒビが入った時、外に小さな光の筋が見えた。

 じっと見つめていると、細かった光の筋がどんどん太くなり、眩しいほどに力強く、ひび割れてしまったガラスの壁を、内側にいる私を、透明なガラスの地面を照り付ける。


 パキ、パキパキ‥‥‥。


 崩れ落ちてしまいそうだったガラスの壁が、音を立てる。ヒビの入ってしまった壁が、深い深い傷のついてしまった天井が、どんどん修復されていく。


 ピキッ‥‥‥ピキピキ‥‥‥。


 私に降り注いだガラスの雪が、地面に降り積もった細かい細かいガラスの雪が、音を立てて芽を出す。

 崩れていたガラスの植物たちが、芽を出したガラスの雪の養分となる。

 養分をもらった雪たちは、種へと姿を変えて、また新しい花を咲かせる。


 冷え切ってしまった空気が、ゆっくりと温かく染まっていく。


 壁に、天井に出来てしまった、小さなヒビは修復された。

 大きなものは、薄く大きく傷がついたままで、元に戻ることはない。


 いつかまた、新しいヒビが入ってしまうかもしれない。治りきっていないヒビから、大きく広がっていくかもしれない。

 それでも今は、外側から差し込んだ光に照らされて、ガラスの植物たちがキラキラ輝いている。私達を囲むガラスを支えるように、強く優しく上を向いている。


 新しくヒビを入れてしまわないように、零れ落ちたガラスの涙を払って、私も上を向いてまっすぐ歩きだす。

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