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うちのメイドロボがそんなにイチャイチャ百合生活してくれない  作者: ギガントメガ太郎


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530/555

第530話 後日談です!

 ここは浅草。

 東京の一大観光名所。日々国内外から観光客が押し寄せ、祭りの気分を味わえる町。町の中心にあるのは、誰もが知る浅草寺。そこから真っ直ぐ伸びるのは仲見世商店街。八十を超える出店が立ち並び、グルメや買い物を楽しむことができる。

 浅草寺のすぐ東側には、神社が存在する。浅草神社、通称三社(さんじゃ)様だ。浅草寺の混雑に比べると閑散としているが、落ち着いた雰囲気を味わえる。

 

 その十二月の冷たい風が吹き荒ぶ境内に、白ティー丸メガネ黒髪おさげののっぽと、和風メイド服を着た金髪巨乳メイドロボが歩いていた。


「ふー、ようやっと落ち着いて参拝ができるよ」

「相当バタバタしていましたからね」


 黒乃の頭の上にはグレーのモコモコことチャーリーが乗っており、メル子の腕には真っ黒なロボキャットのハルが抱かれていた。


「ニャー」


 チャーリーは尻尾で黒乃の顔面をはたきまくった。


「ははは、そう怒るなよチャーリー。悪かったって謝ってるだろ」

「そうですよ、チャーリー。おいしいランチをたくさんあげますから、許してください!」


「ニャー」


 チャーリーはひたすら不貞腐れるだけだ。


「チャ王は申しておる。いずれこの日本も平定することになると」

「そういえば、ハルはなんで日本に戻ってきたのさ? あのまま肉球島にいればよかったのにさ」


 ハルはメル子の腕の中から飛び出した。


「バカを言うな。私には尼崎の工場に残してきた仲間達がいる。私だけのこのこと肉球島に帰れるものか」

「ああ、そりゃそうか」


 黒乃とメル子は、本殿の前にやってきた。手を合わせて目を閉じ、お辞儀をする。その途端、本殿の戸がぶち開けられた。


「こらこらこらー!」

「うわっ!?」

「ぎゃあ!」


 中から現れたのは、巫女装束風メイド服を纏ったロボットギャルだった。


佇立(ちょりっす)佇立(ちょりーっす)武夷(ぶい)武夷(ぶい)!」

「サージャ様!?」

「びっくりさせないでください!」

「お賽銭も投げずに手を合わせるとは、Zoo(ずー)Zoo(ずー)しすぎwwwマジうけるwww」


 サージャは本殿の段を降りると、二人の肩を抱き寄せて賽銭箱の横に座った。


「やぁやぁ、二人とも〜。ご苦労だったね〜」

「えへへ、いえいえ」

「サージャ様もありがとうございました!」


 これは、先日行われたロボヶ丘高校とロボヶ丘中学校の特別合同課外授業のことを言っている。太平洋に浮かぶ無人島肉球島で、ロボット作りを体験するというものだ。しかしそこで事件が発生。タイトバースの住人であるハイデンが忍び込んでおり、ローション生命体ソラリスを復活させようと目論んだ。その悪しき野望は半分成就されたものの、学生達の活躍によってソラリスは倒された。


「えへえへ、サージャ様が藍王(らんおう)関に話を通してくれたからですよ」

「あーね。横綱もね、藍ピッピが心配だったみたいね。一応お兄ちゃんだかんね」


 ソラリス攻略の鍵となったのが、元横綱の藍王関だ。藍王は肉球島の支配者藍ノ木藍藍(あいのきあいらん)の兄なのだ。黒乃の作戦に自らすすんで参加してくれた。藍王がきてくれなかったら、ソラリスを倒すのは困難だっただろう。


「サージャ様! そういえば、藍ノ木さんとコトリンはどうなりましたか?」


 メル子は二人を案じているようだ。藍ノ木とプログラミングアイドルロボのコトリンは、日本に帰ってきていない。そもそも二人は、浅草を壊滅に追い込んだ『浅草プチ事変』の罪を問われ、肉球島に島流しの刑に処されていたのだ。なので、帰ってこられるはずもないのだが。


「藍ピッピとコトピッピはね、宇宙に島流しにしたし」


 二人は一瞬サージャがなにを言っているのか理解できなかった。


「宇宙!?」

「どういうことですか!?」

「火星に島流しにしたしー! マジうけるwww」


 ケタケタと笑うギャル巫女メイドロボを、二人はプルプルと震えて見た。サージャは浅草事変の反省を促すために、肉球島に藍ノ木とコトリンを送った。だが、二人はそれを起死回生のチャンスと捉えてしまった。肉球島を乗っ取り、あろうことか王国を作ろうとしてしまったのだ。


「今度は火星だかんね。さすがに反省するぞなもしー! うけるー!」


 黒乃とメル子は、あまりの仕打ちに顔を青くした。二人は空を見上げた。今日は昼間から月が見える。月にはいったことがある。飛行機と軌道エレベーター、宇宙船を乗り継いで数日がかりの旅だった。火星はそれとは比べ物にならないほど遠い。


「ふふっ」

「うふふ」


 不思議と笑みがこぼれてきた。あの二人なら、大丈夫なような気がしてきた。二人の知恵とスキルと狡猾さがあれば、どこででも生きていけるのではないだろうか? むしろ、火星に王国を作ってしまうのではないかとさえ思えた。


「まあ、ご主人様達が心配してもしょうがないかもね」

「ですね」


 二人は微笑み合った。


「ワロてるけど、黒ピッピ達も次なんかやらかしたら、島流しにするかんね!」

「ひぇ」

「ぎゃあ!」


 二人は怯えながら浅草神社から退散した。



 ——浅草市立ロボヶ丘高校。

 隅田川と荒川に挟まれた広大な敷地を持つ高校のグラウンドに、生徒達が整列していた。彼らの前の台に立っているのは、生徒会長にして二年生の茶柱初火(ちゃばしらういほ)だ。整った長い白髪に鋭い目、黒いセーラー服が生徒会長としての威厳を見せつけていた。


「では次! 戦車部! 前へ!」


 校庭では表彰式が執り行われていた。三十日間に渡って繰り広げられた特別合同課外授業の成果を讃えるものだ。戦車部のパットンが履帯をきしませ表彰台に近づいた。ハッチから戦車部部長が顔を出した。


「戦車部! あなた方は特別合同課外授業において、特別な成績を残しました。その献身的努力に感謝の意を表するとともに、ここに表彰します」


 初様から賞状が手渡された。生徒達から拍手と歓声が送られた。戦車部部長は大きく賞状を掲げてそれに応えた。その後も次々と部活動の名が連ねられた。ラグビー部、自転車部、帰宅部、茶道部、そして……。


「では最後! 最優秀賞を発表します!」


 校庭は静まり返った。特別合同課外授業で最も活躍したのは誰か? ほとんどの生徒はそれを確信していた。


「ちゃんこ部! 前へ!」


 その途端、弾けるように校庭が沸いた。生徒達は飛び跳ね、大きく手を打ち鳴らした。まるで波を打つように校庭はうねった。その波をかき分け、巨漢の力士達が進み出た。


「ちゃんこ部!」

「ちゃんこ部!」

「おめでとう!」

「よくやったぞ!」

「鏡乃ちゃん! すてきー!」

「ちゃんこ部!」


 大歓声に後押しされ現れたのは、ちゃんこ部部長三年生のまるお、二年生のふとしとでかお、一年生の新弟子ロボ、そして光り輝く丸メガネの鏡乃だ。


「わぁ! わぁ! すごい! やった! すごい!」


 鏡乃は興奮した様子で、台の階段を駆け上がった。


「わぁ! 初火先輩、こんにちは! フンスフンス!」

「鏡乃さん、ちゃんとそこに立ってください」

「はい!」


 初様は表彰状を手に取った。


「ちゃんこ部! あなた方は特別合同課外授業において、格別の成果を残しました。補給物資の確保、ハイデン抹殺、紅子さん救出、ソラリス捜索、すべてにおいて多大な功績を残しました。よってここに、最優秀賞とトロフィーを進呈します!」

「わぁ! すごい!」


 鏡乃は賞状とトロフィーを受け取った。トロフィーのあまりの大きさに思わずよろけたが、慌てて駆け上ってきたちゃんこ部達に支えられた。狭い壇上は力士で埋め尽くされた。


「狭いです! 早く降りなさい!」

「わぁ! 初火先輩、ありがとう!」


 大きな拍手が巻き起こった。拍手はいつまでも続いた。皆、肉球島に残してきたロボット達を思って手を叩いた。

 ちゃんこ部が台を降りると、続けて初様も降りようとした。しかし、そこに乱入者が現れた。


「ちょっと待ったー!」

「ぎゃぴー!」


 鏡乃を弾き飛ばして壇に上がったのは、帰宅部部長にして一年生の茶柱江楼(ちゃばしらころ)だ。短い白髪、鋭い目、日焼けした筋肉質の肌が太陽に照らされて光った。


「あ、江楼ちゃんだ! こんにちは! スンスンスン! お日様の匂い!」

「江楼!? 何事ですか!?」


 驚く初様からマイクを奪い取った江様は叫んだ。


「まだ表彰式は終わっちゃいねーぜ!」

「どういうことですか!?」

「一番表彰されなあかんお人が、まだ表彰されてまへんなあ」


 別のマイクを持って現れたのは、茶道部部長にして三年生の茶柱茶鈴(ちゃばしらちゃりん)だ。頭の上で結い上げた白髪、怪しく光る目、しゃなりしゃなりと歩く姿は雅を体現したかのようだ。


「茶々姉様!? 江楼!? どういうことですか!?」

「わぁ! 茶鈴先輩だ! こんにちは! スンスンスン! 抹茶ラテの匂い!」

「抹茶ラテやのうて、抹茶どす」


 茶々様は台に上った。壇上に茶柱三姉妹が集結した。学園アイドル三役の揃い踏みに、学生達のボルテージは最高潮に達した。


「この特別合同課外授業で、一番苦労したのは紛れものう生徒会長の初火どす」

「だからよ、俺らからこれを送るぜ」


 江様は自分の背中から木刀を引き抜いた。


「これは……」

関ロボ六(せきのろぼろく)の木刀だぜ」


 初様は子供のころの記憶を思い出していた。家族で刀匠の工房に見学にいった時のこと。幼い初火は、刀匠が槌で鋼を打つたびに飛び散る火花に魅せられた。金属音が鼓膜に張り付き、火花が網膜に焼き付いた。炉から漏れ出す熱気が肌を焦がした。帰り際、母に木刀をねだったが、買ってもらえたのはおもちゃのプラスチック製の刀だった。それすらも姉に取られてしまったのだが。


 初様は江様から木刀を受け取った。それを腰に収めると、まるで最初からそこにあったかのように姿に馴染んだ。茶々様が初様に近づき、抱き寄せた。


「茶々姉様……」

「ようやりましたえ、(うい)。みんなが無事帰ってこられたのも、ハイデンを倒せたのも初のおかげどすえ」


 その言葉に、初様の目から思わず涙がこぼれ落ちた。そう評価されるためにがんばったわけではない。島にいる時はひたすら夢中だった。生き延びるために。だが、姉からの言葉はこの世のどんな評価よりも価値があった。


「そんな……茶々姉様も命を懸けたのに、なにも……」

「あてはもうもろうたさかい、気にしいひんでええどすえ」

「え?」


 初様に拍手が送られた。全校生徒五百名が生徒会長を讃えた。


「わぁ! わぁ! すごい! みんな仲良しになってる! よかったね!」


 鏡乃も夢中になって手を叩いた。


「なってねーよ! ぶっコロすぞ!」

「わぁ!?」



 表彰式が終わり、生徒達は散っていった。今日は授業は行われない。ほとんどの学生は足早に帰宅したが、理由もなく校内をうろつく者もわずかにいた。桃ノ木朱華(もものきしゅか)もその一人で、茶道部の部室に向かっていた。


「部室に茶器を置いたらはよ帰って、小汚い部屋の整理をせんと」


 朱華は、高校生にしては厚くて色っぽい唇を弾ませながら部室棟を歩いた。部室の扉を開けると、中に一人の生徒がいることに気が付いた。


「あ、茶鈴部長」

「朱華はん、お疲れさんどした」


 茶々様は風炉(ふろ)の前に正座をし、小さなシリンダーのようなものを眺めていた。


「それはなんですか?」

「肉球島で手に入れたお宝どす」


 茶々様はシリンダーを手の中で転がした。中には黒い物体が渦巻いており、時々微かに脈動していた。それを頭の飾りに引っ掛けた。


「きれい……ですねえ?」

「おおきに」

「そういえば、お怪我の具合はどうですか?」

「もう治ったわぁ」

「え!?」


 茶々様は黒いセーラー服を捲り上げた。真っ白な背中があらわになり、朱華は思わず手で顔を覆った。


「見とぉくれやす。ここどすえ」


 茶々様が指をさした場所に、朱華は顔を近づけた。茶々様はハイデンとの決戦のおりに、背中に刀を突き刺されたのだ。だが、その傷は見当たらない。


「なにも見えへん! もう治ってはる!?」

「昔から怪我はすぐ治る体質なんどすえ」

「ええ!?」


 朱華は傷跡を探そうと、必死に茶々様の背中に指を這わせた。



「もう! シューちゃん遅いよ! 部室でなにしてるんだろう?」


 鏡乃はルームメイトを追いかけて、部室棟までやってきていた。茶道部の部室前までくると、中から桃色な声が聞こえてきた。


「んん? シューちゃんの声だ。他に誰かいるのかな?」


 鏡乃は窓の隙間からこっそり室内を覗き込んだ。そこで信じられないものを見た。


「シューちゃんが、また茶鈴先輩とイチャイチャしてる!」


 鏡乃は腰を抜かして部室棟から逃げ帰った。


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