第八話 飛び級したら推しの婚約者になりました
その日の夜、マリアンネは自室の机に座り、しばらく通信石を見つめていた。
送れば、きっとろくな返事は来ない。
分かっているのに、結局は専用の筆を手に取った。
『緊急です』
数秒もしないうちに、石が淡く光る。
『何?』
早い。
王女なのだから絶対に暇ではないはずなのに、こういうときだけ妙に反応が早い。
『今日、アレン様に飛び級を勧められました』
『理由は?』
『一緒に卒業したいからだそうです』
少し間を置いて、次の文字が浮かんだ。
『それで?』
鋭い。
どうやら、それだけで終わるとは思っていないらしい。
マリアンネは一度筆を止めたあと、覚悟を決めて続きを書いた。
『卒業したあと、早く私と結婚したいと言われました』
送ってしまった。
十秒。
二十秒。
いつもならすぐに返ってくる文字が、なかなか現れない。
もしかすると、さすがのセラフィーヌも驚いているのだろうか。
そう思ったところで、ようやく通信石が光った。
『だから言ったでしょう』
さらに間髪入れず、もう一文が続く。
『向こうから捕まえに来るって』
「今それ言います!?」
思わず机を叩き、勢いのまま筆を走らせる。
『もっとほかに言うことあるでしょう!?』
『おめでとう。よかったわね』
『まだ何も決まってません!!』
『どうして? 嫌なの?』
来た。
もう何度目か分からない、いつもの質問だ。
『それは禁止です』
『なぜ?』
『答えが分かってるからです!』
しばらくして返ってきたのは、あまりにもあっさりした一言だった。
『なら、私から言うことはないわね』
「強い……!」
完全に逃げ道を塞がれている。
さらに通信石が光った。
『飛び級はどうするつもり?』
『考えます』
『結婚は?』
今度こそ、マリアンネの筆が止まった。
すぐには書けない。
けれど、以前のように反射的に「無理です」と返すこともできなかった。
しばらく考えた末、ゆっくりと文字を綴る。
『……それも、考えます』
送ったあと、自分で書いた言葉をじっと見つめた。
以前のマリアンネなら、迷うことすらなく断っていたはずだ。
ほどなくして、セラフィーヌから返事が届く。
『前に比べたら、十分進歩しているわね』
マリアンネは通信石をそっと伏せ、そのまま机へ額をつけた。
「……王太子妃……」
あまりにも大きな肩書きで、まだ現実感がない。
考えるだけでも怖い。
けれど、その肩書きを一度取り払ってみれば、
浮かんでくるのはアレンダートの顔だった。
『そのあとも、ずっと隣にいてほしい』
遠くから眺めるのではなく、これから先もずっと隣にいる。
その未来を、以前のように即座に否定することはできなかった。
「……考えるって、言っちゃった……」
口にしてみると、その言葉の重みが改めて胸に落ちてきた。
◇
数日考えた末、マリアンネは特別進級試験を受けることを決めた。
アレンダートから渡された資料を読み込み、
教師にも試験範囲や進級後の履修について直接話を聞く。
決して簡単な試験ではなかったが、
何を学び、どこまで身につければいいのかが分かるにつれ、
漠然としていた不安は少しずつ薄れていった。
せっかく挑戦できるだけの成績があるのなら、自分の力を試してみたい。
それが受験を決めた一番の理由だった。
けれど、そのことをアレンダートへ伝えたとき、
彼が心から嬉しそうに笑ってくれたことも、その後の勉強を続ける支えになった。
それからしばらく、放課後の多くを試験準備に費やした。
生徒会の仕事はほかの役員たちが分担してくれ、分からないところは教師に尋ねる。
ときにはアレンダートと並んで参考書を広げ、苦手な部分を一つずつ潰していった。
そうして試験を終え、結果が発表されたのは、晩秋のよく晴れた朝だった。
掲示板の前には、珍しい特別進級試験の結果をひと目見ようと、
多くの生徒が集まっている。
その中に、はっきりと自分の名前があった。
『合格 マリアンネ・スターフェルト』
マリアンネはしばらく掲示を見つめたまま、動けなかった。
「……受かってる」
「受かってるな」
「本当に……私が?」
「言っただろ。君なら大丈夫だって」
隣に立つアレンダートは、
まるで最初から結果を疑っていなかったかのように平然としている。
「殿下、なんで平常通りなんですか!?」
「なんのことだ?」
「十年に一人いるかどうかの飛び級ですよ!? 驚いたりしないんですか!?」
「マリアンネだしな。
あれだけ準備してたのも知ってるし、何も驚くことはないだろ?」
「その信頼の置き方、相変わらず重いですー!」
アレンダートは楽しそうに笑うと、改めて掲示板へ目を向けた。
「これで一緒に卒業できるな」
「……はい」
マリアンネも、つられるように少し笑った。
試験を受けたのは、自分の力を試してみたかったからだ。
けれど、最後に背中を押してくれたのが
「一緒に卒業したい」と言ってくれたアレンダートだったことも、
もう否定できない。
合格できたことが嬉しい。
そして、それと同じくらい、この人と一緒に卒業できることも嬉しかった。
◇
その日の放課後、生徒会室ではいつもどおり仕事が進められていた。
提出する書類や翌日の予定を確認し、一人、また一人と役員たちが帰っていく。
最後に副会長も書類をまとめ、扉へ向かった。
「では会長、スターフェルト嬢。お疲れさまでした」
「ああ。また明日」
「お疲れさまでした」
扉が閉まり、室内に残ったのはアレンダートとマリアンネだけになった。
マリアンネも最後の書類を棚へ戻し、ようやく大きく息を吐く。
「私もこれで終わりです。今日はさすがに疲れました」
「朝からずっと声をかけられてたもんな」
「みんな、飛び級が珍しいから……」
「俺も嬉しいよ。これで一緒に卒業できる」
「……ありがとうございます」
少し照れながら振り返ると、アレンダートは机の上の書類を整えていた。
そして、何でもない話を始めるような調子で顔を上げる。
「よし。それじゃあ、婚約するか?」
「……はい?」
マリアンネの動きが止まった。
「婚約」
「聞こえてます! なんでそんな重大な話を、
『このあと少し寄り道する?』みたいな調子で言うんですかー!?」
静かな生徒会室に声が響く。
アレンダートはむしろ不思議そうに首を傾げた。
「前にも話しただろ。卒業したら君と結婚したいって」
「聞きましたけど!」
「飛び級にも受かったし、次は婚約の話を進めてもいいかと思って」
「人生設計を順番に処理していかないでください!!」
「順番としては合ってるだろ?」
「そういう問題じゃないですー!」
この人は、恋愛だけでなく人生まで一直線に進んでくるらしい。
マリアンネは額へ手を当てたものの、すぐに別の問題へ気づいて顔を上げた。
「そもそも婚約なんて、私たちだけで決められることじゃないですよね!?
国王陛下や王妃殿下にもご相談が必要ですし!」
「もうしてるよ」
今度こそ、完全に固まった。
「……いつしたんですか?」
「君に飛び級の話をする少し前くらいかな」
「早い!!」
そこで、マリアンネの顔が引きつった。
「まさか、うちの家にも?」
「スターフェルト伯爵には打診済みだよ」
「やっぱりー!!」
マリアンネは両手で頭を抱えた。
「両親から何も聞いてませんけど!?」
「俺から先に話したかったから、待ってもらってた。
君が試験を受けるって決めたあとは、勉強に集中できるように、
結果が出るまでこの話はしないでもらってたから」
「気遣いの方向がおかしいですー!」
「でも集中できただろ?」
「できましたけど! 今まとめて知る衝撃も考えてください!」
抗議するマリアンネを見て、アレンダートは少しだけ笑った。
けれど、マリアンネにはまだ確認しておきたいことがあった。
「……つまり、国王陛下も王妃殿下も?」
「賛成してくれているよ」
「うちの両親も?」
「君が望むなら異存はないって」
そこでアレンダートは、思い出したように付け加えた。
「マリウスにも話してあるよ。王城で会ったときに、俺から直接」
「お兄様までー!?」
思わず机へ手をつく。
「なんで家族全員知ってるのに、私だけ何も知らなかったんですか!?」
「一番大事な君の答えが、まだだったからね」
マリアンネは言葉に詰まった。
思っていた以上に、外堀が埋まっている。
というより、すでに綺麗に整地されている。
「……殿下。外堀、めちゃくちゃ埋めてませんか?」
「埋められるところは埋めといた」
「あっさり認めた!!」
アレンダートは楽しそうに笑ったものの、すぐに表情を改めた。
「でも、勝手に婚約を決めたわけじゃない。
マリアンネが嫌なら、全部なしにするよ」
それまでの軽い調子は消え、声も真剣なものに変わっていた。
「父上たちにも伯爵にも、そう伝えてある。俺はマリアンネと結婚したい。
でも、本人の了承はまだもらってないって」
「そこまで正直に言ったんですか……」
「当然だろ」
マリアンネは黙り込む。
「マリアンネがいいと言ってくれたあとで、
家格や両家の調整を一から始めるよりは早い。
だから、先に話を通せるところには通しておいた。でも、最後に決めるのは君だよ」
王太子としての段取りは、とんでもなく早い。
それでも、一番大事なところだけは勝手に進めない。
「王太子が有能すぎます……」
思わず漏らすと、アレンダートは真っ直ぐこちらを見た。
「だから、あとはマリアンネの意思だけだ」
胸の奥が大きく鳴った。
「俺はマリアンネと婚約したい。
卒業したあとも、その先も、ずっと俺の隣にいてほしい」
最初は、遠くから見ていられればそれでよかった。
アレンダートが幸せなら、その隣にいるのは自分でなくてもいい。
むしろ、自分がそこへ立つ未来など、一度も考えたことがなかった。
けれど、今は違う。
卒業して、この人と今までのように会えなくなるのは嫌だった。
いつか別の誰かが隣に立つのだと考えれば、胸の奥が痛む。
マリアンネはゆっくりと視線を落とした。
「……正直に言うと、怖いです」
「うん」
「王太子妃とか、その先のことを考えたら、本当に自信なんてなくて。
私にできるのかなって、今でも思います」
アレンダートは急かすことなく、その言葉を聞いていた。
「それでいいよ」
「……いいんですか?」
「怖くないほうがおかしいだろ」
穏やかに笑って、彼は続ける。
「最初から全部分かってるつもりで来られるより、ずっといい。
分からないことは覚えればいいし、俺もいる」
また、その言葉だ。
何度聞いてもずるいと思う。
けれど、その言葉に何度も支えられてきたことも、マリアンネはもう知っていた。
小さく息を吸い、今度は目を逸らさずにアレンダートを見る。
「……怖いですけど」
「うん」
「でも、それ以上に、アレン様の隣にいたいと……思うようになりました」
初めて自分からそう口にすると、アレンダートは珍しくすぐには何も返さなかった。
いつもなら迷いなく言葉を返してくる人が、ただ黙ってこちらを見ている。
「……アレン様?」
不安になって呼びかけると、ようやく彼の表情が崩れた。
驚いたように目を見開いたあと、心から嬉しそうな笑みがゆっくりと広がっていく。
マリアンネは思わず息を止めた。
こんな顔をするアレンダートを、今まで一度も見たことがない。
いつもの余裕のある笑みとも、楽しそうにからかってくるときの表情とも違う。
あまりにも素直に喜びが滲んでいて、今度はマリアンネのほうが言葉を失った。
「それ、ずっと聞きたかった」
「……そんな顔しないでください。心臓に悪いです」
「どんな顔?」
「とても嬉しそうな……」
「本当に嬉しいから、それは無理だな」
すぐに言葉へするところはいつもどおりなのに、
その声までどこか普段より柔らかかった。
アレンダートが一歩近づく。
「じゃあ、婚約してくれるってことでいいよね」
次の瞬間、身体が引き寄せられた。
背中へ腕が回り、頬が彼の胸元へ触れる。
抱きしめられているのだと理解した途端、マリアンネの顔が熱くなった。
「ちょ、ちょっと待ってくださいー!!」
「何?」
「展開が早すぎます!! 今、私ものすごく大事なこと言いましたよね!?
もう少し余韻とか!」
「十分噛みしめたけど?」
「殿下の余韻が短すぎるんですー!」
胸元で笑う気配がする。
けれど、抱きしめる腕にそれ以上力がこもることはなく、
アレンダートの声も少しだけ静かになった。
「こうされるの嫌?」
「……またそれ聞くんですか」
「聞くよ」
マリアンネは少し迷ってから、小さく答えた。
「……嫌じゃないです」
「じゃあ、このまま」
「またそれー!」
叫んだものの、離れようとは思わなかった。
むしろ少し迷った末に、マリアンネはアレンダートの制服をそっと指先でつかむ。
その小さな動きに気づいたのか、背中へ回った腕にわずかに力がこもった。
「マリアンネ」
「……何ですか」
「ちゃんと聞くよ」
アレンダートはゆっくり腕を緩め、互いの顔が見えるだけの距離を取った。
紫紺の瞳と、真っ直ぐに目が合う。
「マリアンネ・スターフェルト。俺と婚約してほしい」
今度は、逃げなかった。
「……はい。よろしくお願いします」
小さく、それでもはっきりと答える。
その瞬間、アレンダートの表情がふっと緩んだ。
「……よかった」
ぽつりと漏れた声は、珍しく本当にほっとしたように聞こえた。
その表情に目を奪われているうちに、アレンダートの顔が少し近づく。
「え――」
短く声を漏らしたときには、額に、柔らかな感触が落ちた。
何をされたのか理解して、マリアンネは固まる。
キス。
額に。
アレンダートが顔を離しても、すぐには言葉が出てこなかった。
「マリアンネ?」
「……今、おでこに……」
「キスしたよ」
「なんでそんな冷静なんですかー!?」
「嬉しかったから」
「返事した瞬間に実行しないでください!」
思わず額を押さえるマリアンネに、アレンダートが少し笑う。
「嫌だった?」
「……嫌じゃないです」
「じゃあ、またキスしてもいい?」
「ストレートに予告しないでください!」
とうとうアレンダートは声を立てて笑い、もう一度マリアンネを抱きしめた。
「よし、婚約成立だな」
「よし、じゃないです! まだ正式な手続きがありますよね!?」
「明日から進めるよ」
「早いですー!!」
「準備はできてるから」
「それが怖いんです!!」
胸元から顔を上げると、彼はひどく満足そうだった。
「……本当に、外堀全部埋めてたんですね」
「全部じゃないよ。
一番大事なマリアンネの気持ちまでは、俺には決められないからね。
……まあ、断られないとは思ってたけど。俺のこと好きなのは分かってたし」
それを言われると、何も返せない。
「……ずるいです」
「そう?」
「そうです」
小さく呟いても、アレンダートの制服をつかんだ手は、そのままだった。
◇
その夜、自室へ戻ったマリアンネは、机の前に座ったまましばらく動けなかった。
アレンダートとの婚約を承諾した。
改めて考えても、まだ現実味がない。
飛び級に合格し、生徒会室で二人きりになり、
気づけば外堀がほぼすべて埋まっていると判明した。
それでも最後に『俺と婚約してほしい』と言われ、『はい』と答えたのは自分だ。
そして、もう一つ。
「……おでこ……」
額へ手を当てると、まだ柔らかな感触が残っている気がした。
「……無理」
とうとう耐えきれず、マリアンネは机へ突っ伏した。
婚約に、抱擁。それから、おでこへのキス。
一日に摂取していい情報量ではない。
しばらくそうしていたものの、ふと机の端に置かれた通信石が目に入った。
報告するべきだろうか。
絶対に何か言われる。
それは分かっている。それでも、これはさすがに知らせたい。
マリアンネはゆっくり身体を起こし、専用の筆を手に取った。
『緊急です』
数秒で文字が浮かぶ。
『何?』
「早い……」
ちょうど手が空いていたのだろうか。
それにしても、この人は緊急連絡に強すぎる。
少し迷ってから、書いた。
『アレン様と婚約することになりました』
十秒ほどして返事が届いた。
『おめでとう』
普通だ。珍しく普通の返事だった。
少し安心して礼を書き込むと、その直後、また石が光った。
『ついに捕まったのね』
『その言い方やめてください!!』
『だから言ったでしょう? のんびりしてたら、向こうから来るって』
『通信石越しに勝ち誇らないでください!』
少し間を置いて、新しい質問が届いた。
『それで、ちゃんとプロポーズされたの?』
『されました』
『何て?』
それを書くのか。
恥ずかしい。
それでも、マリアンネは迷いながら筆を動かした。
『俺と婚約してほしい、と。
卒業したあとも、その先も隣にいてほしい、と言われました』
しばらく返事がなかった。
今度こそ、少しくらい感動しているのだろうか。
やがて通信石に浮かんだのは、短い一言だった。
『いいじゃない』
その直後、さらに文字が続く。
『で、キスはしたの?』
「なんでそこに行くんですかー!?」
思わず声を上げ、即座に返す。
『してません!』
『本当に?』
筆が止まった。
額。
マリアンネはまた、額を押さえた。
『……おでこには、されました』
『よかったわね』
『またそれ!!』
『嫌だったの?』
来た。いつもの質問だ。
『その質問は禁止って言いましたよね!?』
『答えは?』
『……嫌じゃないです』
『では、よかったわね』
『話が一周した!!』
通信石の向こうで、セラフィーヌが満足そうに笑っている気がした。
さらに文字が浮かぶ。
『あなたは、自分から殿下に何か言ったの?』
今度は、本当に手が止まった。
少し考えて、書く。
『アレン様の隣にいたいと思うようになった、と』
今度の返事には、少し長めの間があった。
『それは大きな進歩ね』
からかわれると思っていた。
だから、その一言は少し意外だった。
『前は、遠くから見ているだけでいいと言っていたものね』
『……はい』
『今は?』
マリアンネはしばらく通信石を見つめた。
そして、ゆっくり書いた。
『今は、近くにいたいです』
書いただけで顔が熱くなる。
届いた返事は、短かった。
『なら、よかったわね』
いつもと同じ言葉なのに、今度は少し違って感じられた。
マリアンネは小さく笑った。
『……そうですね』
送ると、すぐに次の文字が浮かぶ。
『ちなみに私は今日、ケヴィンに髪を褒められたの』
「急に惚気!!」
『私の婚約報告の流れでそれ言います!?』
『嬉しかったから私も報告したかったの』
『強火すぎます!』
『あなたももう、人のこと言えないでしょう?』
否定しようとして、やめた。
『……そうですね』
数秒後、最後の返事が届いた。
『おやすみ、未来の王太子妃様』
マリアンネは勢いよく身体を起こした。
『その呼び方やめてくださいー!!』
返事は来なかった。
完全に逃げられた。
「セラフィーヌ様ー!」
誰もいない部屋に声が響く。
その夜は、婚約を承諾した実感が追いつくより先に、
『未来の王太子妃様』と呼ばれた衝撃で、しばらく眠れなくなった。




