第二幕 〔目覚め〕の兆し 第一場 吟遊詩人の唄『南嶺の夜明け』
黄金の光が塔に当たる
砕けた光の粒はしきりに
濠に落ちる 森に散る
離宮へ続く回廊に
侍女たちの声かしましく
白亜の城の夢をみる
四季咲き乱れる湖畔の彩り
典雅の女神像は大理石
象牙色の四阿が霧に包まれひっそりと
湖面に影を落としている
古の神も気紛れに
ふと降りたちては心憩えん
南嶺の王城に、朝が訪れる。
明けない夜がないように、たとえ魔の手の悪戯で、いっとき闇に触れられようとも、それは朝陽によって追い払われる。城内は常のように、いやそれ以上に、妖精王女の誕生によって湧きかえっていた。
日々の勤めに飽こうというもの
口さがのない侍女や下男の噂の種は
綿毛のように旅をして
城壁の外で芽吹くは世の常
嘘も真実も物知り顔で
産まれし王女は氷雪の妖精
銀と青の[水]の属性
穢れを知らない心の主に
すべてを捧げて護ると云う
聖なる魔力は両刃の刃
正と出るか邪と出るか
望むと望まぬとに関わらず
既に、何をどう聞きつけたのか、吟遊詩人が唄っている。昨夜誕生した王女が、氷雪の妖精の取り替え子だと、唄っている。
星詠通りに集う、怪しい魔女や呪い師たちのもとへ、我先にと尋ねに行ったに違いない。それを唄って、世に広める。
おしゃべりな侍女や下男たちがささやく噂の種は、風に乗って飛び、城内外に疫病よりも早くに流布したが、恐怖や懸念に陥るかと思いきや、崇拝の声すら上がっているのは、南嶺城の思惑の外ではあった。
城外の民たちの日常が始まろうとしている。
彼らを見守ってそびえ立つ王城の上空で、ひとしきり風が巻いた。
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何かが起きる 何かが変わる
何かが正され 何かが壊れる
何かが暴かれ 何かが証され
誰かが傷つき 誰かが安らぐ
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予言のような風の唸りがそう唄っているのには、誰ひとり気づく由もなかった。




