第一幕 王女誕生 第六場 南嶺王妃の想い
ほら雪のようなその肌と
降る霜のようなその髪に
宵闇色の青紫で
染めたローブの濃 淡が
なんと似合うことでしょう
入り江で髪とく人魚の鱗に
はじける飛沫のような眼には
処女の爪の丸みを帯びた
はにかむような桃色の
小さな真珠をあつらえよう
靄に溶けゆく語り声に
罪のあろうはずもなく
未来を憂えておののく心を
揶揄して笑う水晶の
冷たく真摯な輝きに似て
まるで私を諭すように
明日を占い筮を読む
人差し指に神秘をたたえた
血の通わない手に罪はなく
庭に出ては花々を愛で
蝶を追っては虚空を切り
まるで妖精の戯れに似て
ふわふわと羽ばたくように
部屋に香気を振りまいていく
性がないとはいうけれど
この美しさは女神の象徴
王女として育てましょう
翌朝、南嶺王妃は、集めた侍女や下女たちを前に気丈に振る舞い、努めて明るく、慈しみを込めた声でそう告げた。
昨夜、出産に立ち会い、自分と同じように震えあがっていた彼女たちを、「大丈夫、悪いことなんか起きないわ」と励まさなければいけない。そう必死に気持ちを切り替えたのだった。
だが、どういうわけか、一夜明けて今朝には皆して、楽しみが降って湧いたかのように、そわそわとしているように見える。
深窓育ちの、まだうら若い王妃は、“母”になろうと自らに必死に言い聞かせながら、ひとり置いていかれたような焦りと不安を感じずにはいられなかった。




