第六幕 新たなる葛藤 第二場 ドヴェルグの贈り物
かんかんかん、とリズムを刻み、それに合わせて『エイヤーサー』と陽気な掛け声が聞こえてくる。たまに、『早く酒が呑みたい』だの『さぼるな、もっと燃えろ燃えろ』だのと、おかしな台詞も混ざっている。慣れてくると面白い。
妖精は、ラムダの傍を離れて、品のない豪華なだけのゴテゴテした首飾りを拾い上げると、鼻にしわを寄せた。
ラムダはその様子を微笑みながら見守っていたが、ごつい手を差し出して待ち構えている爺に気が付くと、「あぁ」と呟いて、酒をひと壺、渡した。その代わりに、暁色の繊維で織った、刺繍の入ったローブを受け取る。
また差し出される手に、もうひと壺、乗せてやると、今度は赤メノウの指輪をくれた。
大豆の詰まった皮の袋は差し出す前から引ったくって、ヘリオトロープを象った額環を投げてよこした。
いつの間にか、妖精がラムダの傍らに立って、ふたりのやり取りを見ていた。表情はなかったが、オルロス爺がちょっかいを出そうとするのを、身を引いて拒絶した。面白がっているように見えたのは気のせいか。
ラムダは妖精を見下ろした。すると、視線に気づいてかれもラムダを見上げてきた。
語るよりも雄弁な、無言の瞳に貫かれると、幸せなようでいて居たたまれない、奇妙な心持になる。
「すべて、きみを護るものだ」
「……」
声にしたとしたら、『なんだと?』というところかもしれない。碧い瞳が、すぅっと細くなった。
“護る”というのが気に入らないのか、お前如きに何ができると言わんばかりの不信の視線に、ラムダは言葉を失った。
「いや、きみを裸のままでいさせるわけは……いかない……から」
「……………」
よけい、凝視が強くなる。
ものに喩えて言ったつもりだったが、不審の念を煽ってしまったようだった。
「おまえさんたち! しかたねえなあ!」
見兼ねたオルロス爺が、われがねのような声で笑い出す。そして、金槌を担いで腰に手を当て、独特のステップでふたりの周りをぐるぐる周回しながら歌い出した。
リョースアールヴ
月の申し子
赤子のように無垢な心
護れる者も護れる物も
人間界にはありゃしない
天下の細工師小人族の
魔力を秘めた3つのアイテム
魔除けとして持つがよい
すでにひと壺飲み干したオルロス爺は、すこぶる上機嫌だ。三つ編みにした長い顎髭をところ狭しと振り回しながら、そこらじゅうを跳ねて回って、古代のことばで歌いつづける。
ラムダは妖精を見下ろした。さきと同じように、氷のような碧石の瞳で見つめ返されたが、今度は畏怖は感じなかった。
凝った細工の額環を銀の頭上に合わせてみる。そして、暁色のローブをまとった姿を思い浮かべた。
「……」
ここにアミィストーンが居なくて本当によかったと、心の底からラムダは思った。胸の鼓動を抑え込みながら、ラムダはつとめて冷静に、氷雪の妖精の気に入る名前を与えなければな、と考えた。




