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ホッグ・ノーズ -Bygone days-  作者: ひろひさ
パルプ・フィクション

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16/22

ヒート

 直後、焼けた空気の臭いが鼻を突いた。放たれた衝撃で、突き刺さっていた窓枠の残骸が粉々に吹き飛ぶ。


 どうだ!?


 義人は目を凝らす。岩田は体を震わし、足を止めている。見れば、男の左上半身は地面に飛び散り、大きく抉れていた。


「…………!!」


 岩田は壊れた機械人形の動きで僅かに振り向く。先程までの余裕はとうにない。その瞳には怒りと後悔。油断してしまった自身への叱責が色濃く映る。焼かれた肉はすでに再生を始めていた。


 マズイッ!!


 義人はチャンスとばかりに飛び掛かり、腕の銃身を1本の刃へと変え、その刀身に電磁波を送る。 刀身は赤く染まり、周囲の空気が陽炎のように揺らめき出す。そしてそのまま触腕を鞭のようにしならせ、熱した刃で岩田の首を撥ね飛ばした。一閃――――。熱の前には鋼鉄の体も意味を為さず、巨木のような首は胴体と別れを告げ、地面へと落ちた。


「…………」


 終わった…………。


 義人の肉体も再生が始まり、刺さっていたガラス片が地面へと落下。そのままコンクリートの上に転がるのであった。


「…………ハッ!!」


 感傷に浸っている場合ではない。


 義人は痛みを堪え、急ぎ木島らの後を追う。






 時は木島が触腕で組長と側近1名を抱え、脱出した時刻まで巻き戻る。木島は駅の近くまで移動し、2人を下ろすと超人化薬を抱えた組長は当てがあると言う。


「では、自分が足止めをしてきます」


 それだけ言うと、木島は再び組事務所へと戻り、追ってきた隊員らをバラバラに切り刻んだ。


 そして腹の底から揺さぶるような雷鳴を耳にする。


 事務所の方か……。


 駆け付けてみると、現場には大量の硝煙と死臭が渦を巻いていた。見れば岩田が首を斬られて地面に転がり、残った組員らも地面に叩き付けられている。そしてSATらの前に立つ満身創痍なスカルフェイス。肩で息を整える少年。義人だ。彼の血走った目と交差する。


 木島…………。


 互いにゆっくりと向かい合う。勝負は一瞬。木島は右腕の鎌の触腕を調節し、最速最短で少年の首を狙う。反対に義人は左腕を前に盾を展開させ、右腕の触腕を中へと戻す。そして人差し指と中指を伸ばし銃を形作ると2本の指を細い触腕で固定した。


 これで終わらせる…………!!


 義人の覚悟は本物だ。その覚悟は木島にも伝わる。


 なにか奥の手を用意しているな……。


 残った隊員らは事務所の捜索と組長の確保に向け、移動した。地面を蹴る音が鳴り響き、訪れる一瞬の静寂。互いに間合いは必中。必殺の構え。


 指先に巻き付いた細長い触腕が目に見えない震えとともに耳の奥を刺すような高周波音を上げ始めた。


 なんだ……?


 レールガンであれば避けようがない。迂闊ではあったが、それは相手も同じだ。発射時、その身を隠す盾が大きく下がる。その動きを読み、撃たれるよりも前に動けばいいだけの話だと盾の動きに意識を集中させた。


 さあ、どう来る……。


 睨み合い。木島が右腕を上げ、鎌の切っ先を義人に向ける。それを受け義人は盾を僅かに上げた。


「…………」


 レールガンではないのか?


 左腕の鎌も下から攻撃できるよう切っ先を足元へと向ける。義人は右足を半歩下げた。左足と直線上に並ぶ。


 何を考えている?


 逃げる。それは考えられない。SATとの連携か?


 自分を囮に時間を稼ぎ、撃つと見せ掛けてSATによる左右からの同時攻撃。


 頭数が揃っているのだから集団で襲ってくるのは考えられるな。


 そうなると厄介だ。左右の物影にも意識を向け、木島は僅かに一歩、足を動かした。


 その瞬間、盾の上から拳銃のようなものが向けられる。だが、聞こえて来たのは空気の弾ける僅かな炸裂音。木島は避ける間もなく6発の弾丸が体に撃ち込まれる。冷たい楔が体を穿った。

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