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ホッグ・ノーズ -Bygone days-  作者: ひろひさ
パルプ・フィクション

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アイアンマン

 接触。金属同士がぶつかり合い、火花が飛び、不協和音が鳴り響く。


 固い!!


 見た目通りの強度が触腕を通して義人に伝わる。だが、押し負ける。強度は相手の方が上ということはない。


 6号が左腕で触腕を弾き、迫る左の触腕を右の拳で相殺する。異形同士の殴り合いに発展するかと思いきや、6号は素早く見切りに切り替え、縫うように距離を詰めてきた。


 クソッ!!


 義人は一歩下がり、3本目を動かし、牽制。


 6号はニヤリと笑みを浮かべる。その余裕に義人は僅かに怒りを覚えた。


 遊ばれている……。


 相手の目的は時間稼ぎなのは明らかだ。そしてこの男はこの戦闘を楽しんでいる。その事実が義人には不愉快であった。


 早くコイツをなんとかしないと……!!


 しかし、どうやって無力化すればいいのか。そこまでの道筋を立てることができない。方法は解る。関節だ。関節を抑えることができればどんな超人であっても人体の構造は無視できない。


 この触腕で各関節を縛り上げることができれば……!!


 義人は4本の触腕を展開し、その先端を男へと向けた。




 こいつ、スペック頼りの素人だな…………。


 だが、間合いを気にする様子になんらかの武道を齧っていることは容易に想像がつく。


 得物を使う競技……。剣道か?


 そうなると触腕の能力とは相性がいいかもしれない。そう思う6号、岩田弦哉いわた げんやである。


 岩田は元々ボクサー志望だった。幼い頃は空手。中学、高校に掛けてボクシングジムの門を叩く。夢はボクサーになって金を稼ぐ。そんな青写真を思い描く少年だった。そんな彼が道を踏み外したきっかけはなんだったのか。最早誰も、自分自身でさえも覚えていない。それは当時付き合っていた彼女が妊娠した時か。喧嘩で相手を病院送りにした時か。ヤクザに目を付けられ、いいように使われ始めた時か。高校を退学した時か。家を出た時か。パチンコ、スロット、違法なギャンブルに手を出した時か。タバコを吸い始めた時か。上げて行けばキリがない。そして岩田は暴行と傷害、恐喝、強姦と前科を積み上げていき、ヤクザの子分となっていた。そんな時に超人化薬がこの組に持ち込まれる。


 最初は借金で首が回らなくなった連中に使ったが、全員適応できずに死亡した。のたうち回り、奇声を上げ、体は千切れ、事切れる。その一連の現場を見守り、岩田は突然、自分も試したくなった。命を天秤に賭けたギャンブルに魂が火を灯す。結果、男は6人目の超人となった。そして与えられた今回の命令は時間稼ぎ。木島と組長、幹部連中を逃がす時間を稼ぎ、目の前の子供を殺す。なんてことはない簡単な仕事だ。


 だが、能力的にはこちらの方が劣っている。向こうの持ち味は手数の多さだ。だが、それも使いこなせなけりゃ宝の持ち腐れ。豚に真珠ってやつさ。アイツは戦うことに慣れていない。焦り、すぐに冷静さを欠く。典型的な素人だ。その隙を突いて、その頭を叩き潰してやる!!


「ふぅー……」


 岩田は静かに息を吐き、集中力を研ぎ澄ます。


 来る…………!!


 全身の細胞がさざ波立つ。突っ立っているだけではただの的だ。足を動かさなくては!!


 集中力をかき乱すように聞こえてくる銃撃戦。組員と隊員らが市街地での戦闘を繰り広げている。義人と岩田が庭で戦闘を行うことで、玄関からの侵入を防いでしまっていた。


 早く終わらせないと!!


 とにかく動きを止める!! その強い意思で義人は2本の触腕の先端を開き、岩田に向かって電磁波を浴びせた。脇谷の動きを止めた時の戦法だ。体力の消耗は激しいが、これなら確実に動きが止まるはず。そう思っていた義人であったが、素人考えは岩田には通用しない。


 そう来ると思ったよ…………。


 反社のネットワークというものは侮れない。どれだけ情報の流出を防ごうとしても奴らはその嗅覚と資金力に物を言わせ、掠め取っていく。人の口には戸は立てられぬという訳だ。


 岩田は後方へと跳躍し、大きく距離を離す。


 な…………ッ!!


 電磁波は空気を焼き、火花を散らすだけに終わる。


 触腕を伸ばせば!!


 左右の触腕を岩田に向かわせるも弄ぶようにわざと庭中を飛び回った。電磁波の射程距離を測り、正確にその間合いの外へ大きく移動する。こうすることで時間を稼ぐとともに義人に躍起を躍起にさせ、無駄な体力を消耗させるつもりだ。電磁波を避け、触腕を掴み、投げ飛ばすタイミングは何度もあったが、そうはしない。時間を掛け、じっくりと嬲り殺しにしなくてはならないからだ。


「岩田さん!!」


 その時である。玄関から拳銃を持った若い男が岩田に助けを求める。


「ああっ!?」


 チッ。もうちょい踏ん張れよ……。


 使えねぇなぁと溜息をつき、仕方がないと一気に義人に向かって突っ込んできた。


 クソッ!!


 急ぎ触腕を正面から放つ。岩田はそれをバックステップで回避すると、前方へと跳躍。2本の触腕の間に入り込み、両脇で抱える。そしてそのまま義人を一回転させ、力任せに庭の外へと投げ飛ばした。


「オラァッ!!」


「グッ!!」


 背中から民家の2階へと突っ込み、その窓ガラスへと突き刺さる。


「ぐうぅ……ッ!!」


 ガラスが背中の肉にその歯を立てた。


「ガッ……」


 しまった…………。


 鋭い痛みが脳を支配する。心が折れそうだ。だが、岩田をこのまま行かせれば隊員らは生きて帰ることはできなくなる。待っている家族もいるはずだ。


 そんなことはさせない…………。俺にだって、意地があんだよ…………。


 義人は歯を食いしばり、右腕に触腕を巻き付ける。そしてぼやける視界の中、無防備な岩田の背中に狙いを定めた。体内の電流が銃身へと溜まっていく。


 当たれ!!


 弾ける稲妻。青白い光とともに放たれた弾丸は空気を切り裂き、岩田を抉るべく、その身に迫る。

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