Ghost in the Shell
スーツを着た男たちや制服警察官らが周辺の住民らを避難させ、外の世界が騒然とする中、義人は足を止め、木島の気配を探る。
どこだッ!!
探知がほとんどできない義人は、敵の位置が解らない。
クソッ!!
事前に聞かされた情報によれば2階の居室で取引は行われるだろうとのこと。周囲を見回すも階段らしきものは見当たらない。見取り図の確認はしてはいたが、実際の中の様子と地図を重ね合わせることができない。
義人はもう面倒だと建物を倒壊させる勢いで上の階を破壊すれば超人化薬の破壊と木島を炙り出すことはできるだろうと考え、電磁砲を構える。
吹き飛べッ!!
しかし、そこへサブマシンガンや拳銃、アサルトライフルと武装した組員らが左右の居室から飛び出し、義人に向けて一斉に銃を放つ。
「!!」
義人は銃を構えた瞬間を見逃さず、すかさず後方へと飛び、左腕から触腕を出すと円盤状に丸め、盾を作った。鋼鉄の盾は銃弾を弾き、相手も焦って撃ったためか体を掠めることはあっても直撃は免れる。
あぶねぇッ!!
しかし、義人の身体は事務所敷地内ではあるものの、庭への一時撤退を余儀なくされた。
時間がねぇんだよ!! こっちは!!
焦っても仕方がないとは理解していても逸る気持ちを抑えることはできない。
「ほぉー。少しはできるみてぇだなぁ……」
急ぎ反撃を試みようとしたところ、巨大な鉄の塊が現れた。
全長2メートル。人の域では到達できない太い骨と筋肉が異様に盛り上がり、その表面が鈍い鋼が覆っている。上半身は裸で、下はスラックス。そして裸足だ。
「初めまして、1号さん。6号でぇーす!!」
よろしくぅ!! と男はぎらついた闘志を剥き出しに挨拶をしてくる。
ろ、6人目!!
新たな能力者の登場。手の打ちの判らない相手。迫る刻限。義人は焦った。
早く木島のところに行かないと……!!
しかし、そんな彼をあざ笑うかのように木島は組長とともに外に出た。
「木島、発見!!」
「撃てェッ!!」
住宅街に火薬の炸裂音。薬莢の落ちる音。何かに当たる音が響き渡る。
裏手か!!
急ぎ向かおうとしたところ、鋼鉄の男が一気に距離を詰めてきた。
グンと伸びてくる右の拳。なんとか体を左へ動かし、距離を取る。空気を切る音が耳の奥で残響する。一撃でも喰らえば再生に余計な時間を取られるだけでは済まないのは明白だ。男はその構え方から義人とは違い、明らかな経験者であることを雄弁に物語る。
ボクシングか…………?
左の拳を前に出し、右の拳が僅かに下っていた。触腕という手を温存しているのかどうかは現時点では不明だが、近接戦闘が得意なのはブラフではないはずだ。体に馴染んだ動きからその練度が素人目にも雄弁に物語ってくる。
「お前の相手は俺だ」
その冷たい声を前に義人は震えた。勝てる未来がまるで見えない。
ビビっていても仕方ねぇだろ!!
そう己を鼓舞し、盾を解くと4本の触腕を男に向ける。
さあ、どう攻める……?
震える体。逸る心。熱を帯び始めた脳みそ。全てを駆使し、この男を無力化しなければ前には進めない。
「…………」
いくぞ!!
義人は巨大な鉄の壁に向かって触腕を放った。最初は決まって右の触腕。義人の中で戦いの癖が出来上がり始めている。




