トゥルーマン・ショー
同日、午後9時27分。東雲邸リビング。4号と木島、その他、女性陣は青白い光を放つ液晶テレビの前でくつろいでいる。流れているのは公共放送のニュース番組。民放各社も関心は先程起きた2度目の超人戦に夢中だ。新しい情報が追加される訳でもなく、ただ同じことを何度も、何度も繰り返し述べている。大半の人間にとっては他人事で、レンタルビデオ屋が大盛況だ。
4号も「脇谷くん、死んじゃったかぁ。可愛そうに」と心にもない言葉を述べたきり、関心を示さない。だが、何か気になるようで、テレビの音を聞きながら横になり、DSでポケモンを退屈そうに育てている。
「4号」
「なんだい。木島くん」
「脇谷って奴は強かったのか?」
彼の関心は事件を起こし、死亡した犯人と思われる人物として名前を連呼される『脇谷修二』にある。それは同時に義人への関心の強さへの現れでもあった。
「どうだろ? 強化はしたからまあ強くはなったとは思うけど、何か格闘技をやってたとかは聞いたことないなぁ。たぶん体育の授業で柔道やったとかそれぐらいじゃない?」
「——そうか」
4号の答えに木島は短く答える。彼の心は以前波紋一つない穏やかさを保っていた。
「何? あの男の子のことが気になるの?」
すっかり人を変えてしまった4号は木島に現れた変化かと顔を上げ、大いに喜ぶ。
「確かに気になると言えば気になるな。あれからどこまで成長したのか確かめなくてはと思った。このまま行けばいずれ再戦することになるだろう。そうなった時に対処できるよう準備をしておこうと思ってな」
「なるほど。仕事熱心なことで」
つまらない答えだと4号は再び視線をゲーム画面へと戻した。
「明日、武器の買い付けと情報を仕入れに組長のところへ行く。その3千万。いらないなら使わせてもらってもいいか」
木島の問いに4号は答える。
「それならまた、超人化薬を12本、用意するよ。今回のがいいデモンストレーションになった。きっと喜んで色々と手を貸してくれるだろうよ」
「そうか。ならさっそく明日会えないか話を付けてくる」
「頼んだよ」
そう言って木島は席を立ち、携帯の連絡帳から組員の連絡先を選び、電話を掛けた。
さて、どうなることやら…………。
まるで自分は無関係だとでも言うように綾乃へと手を伸ばし、自身の方へそっと抱き寄せ、口付けを交わす。DSはソファの上で泣き続ける。
同日、同時刻。義人は再び総合病院で検査入院となった。個室へと向かう途中に出会った優人の母親から彼はまた寝ていると聞かされる。眠いと言っては寝て、起きたかと思えばゴロゴロと、入院生活を満喫しているようだ。しかしそれは体がまだ変化に馴染んでいないのか。それとも1度死に掛けたことによるダメージか。どちらかは本人でさえ誰にも判らない。
「義人くんも気を付けてね」
「ありがとうございます。お休みなさい」
そう言って彼の母親と別れる。何をどう気を付ければいいのか。残る木島と謎の白い触腕の存在が気掛かりである。そもそも今回襲ってきたあの黒い犬はなんだったのか。なぜ自分の居場所が分かったのか。隕石とともにやって来た寄生生物の数は発表によれば5。このズレはなんなのか。なんらかの方法で増えたということか。
政府も木島らがなんらかの方法で超人を増やしたと考えている。この事実は福山政権にとって、とても大きな痛手だ。発表のタイミングを間違えれば支持率低下。最悪辞任は免れない。総理を含め、各省庁の大臣は頭を悩ませる。
であれば、まだ戦いは始まったばかりだ。
こんな人の多い場所にはいたくない。守り切れない。そう思う義人であった。
いつまでこの地獄は続くのか。隣を歩く佳歩も同じことを考える。
木島ともう1人の仲間はなんらかの方法で超人を増やした。このことが公になれば、世界中に混乱が広がり、どうにかして超人化の方法を知ろうと各国躍起になるだろう。
どこかの国が攻めてくるかもしれない……。
そんな恐怖を増幅させる夜の病院。地方から上がった火種は勢いを増し、蛇となる。そして国内のみならず、世界中を飲み込もうとそのとぐろを巻き、頭を上げた。




