↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銑鉄のワルキューレ  作者: 駄作卍
72/73

閑話

あれから私も対策は講じてきたつもりだった。

老人たちが思いつきで始めては放り投げた諸計画を進め、来たるワルキューレとの全面戦争には備えてきたつもりだった。

だが結果はどうだ。きっかけは不明だが、敵の制圧火力が弱まったのを機に全軍が一斉に進撃を開始。

その背景には扇動者が居るとされているが、そちらの真偽は分からん。

ともかく、「人類の生存圏を取り戻す」だの「今がワルキューレ殲滅の好機」だのと言った文言が飛び交い、一部の部隊が突出したのをきっかけに統制が瓦解。勝手に陣地構築や補給を考えずに戦線を進めた結果、一転したワルキューレの反転攻勢により攻勢に出た部隊の3割が被撃破。今までとは違った敵からの積極的な交戦に、対応しきれなかった現場は多数の死傷者が出て収集が付かん。

「第二方面軍より緊急入電!第4、第6歩兵連隊が壊滅、第4から第6機甲大隊も戦闘不能!第一機甲大隊を核に再編を急ぎますが、その後前線を10km下げる許可を求めています!」

「第三方面軍、師団司令部に敵の強襲!指揮系統を喪失し統制を失った砲兵が重火砲を捨てて敗走!現在、各部隊で指揮を引き継ぎ応戦中。一部で友軍誤射が起きています!」

「第二方面軍の後退は8kmの第3防衛線までだ!その後ろの補給所や野戦病院は絶対に死守しろと伝えろ!

第三方面軍の先任将校は?誰がラインに居る!」

「了解。第二方面軍へ通達」

「第三方面軍、第9連隊長の副官が生き残っています!」

「なら、直ちに再編した後に第二方面軍の援護に回せ。敵を側面から叩き戦線を維持しろ!」


明け方から急な全面攻勢に中央指揮は混乱。まだ朝食の時間かというのに、今夜には完全に突破されそうな調子だ。

「おい少将」

恐ろしい事に、これでもまだナンバーズが出て来ていないのだから、奴らが帝都へ直接侵攻すれば数時間とたたずに人類は人口の過半数とその文明を失うだろう。

「聞いているのか少将!」

ああ、俺だった。

「はい。考え事をしておりました。何のご用でしょうか」

「貴様の虎の子を貸せ。既にここを突破されれば、もう組織立っての抵抗が出来なくなる瀬戸際だ」

「虎の子と言いますと...」

「貴様の抱えている航空戦力の事だ!今こそあれを使う時だろう!」

ああ。実物を飛ばせばすぐに撃墜されるからシミュレーターで訓練した飛行部隊の事か。旧時代の航空機を、失伝した部分を今の技術で継ぎ接ぎしたアレを。何故か老人どもが執着していたが、結局有効な手とは言えずに死蔵しているが。

「はっ、しかしワルキューレに対してでありますか」

「しかしもあるか!ここを突破されれば永遠に地上の置物で終わるのだぞ。良いから飛ばせ!」

まあ、置いてあっても仕方ないのは事実だ。幸い設計だけはきちんと残したから、老人たちが求めるならまた作れば良い。

「はっ、直ちに」

それに、ここを離れる良い口実だ。私の方でも手を打たねばならないが表向きは今は一般将官で勝手に離れる訳に行かなかったからな。

特にワルキューレの重要戦力を「ノルン」で拘束できれば勝ちの目が出てくるはずだ。少し計画を早めるか。

廊下を足早に抜けながら、電話を掛ける。

「朝からすまないな。作戦C2のシナリオDを発動してくれ...ああ、私も出向こう。足を用意しておいてくれ...」

最低限の指示を出したら素早く携帯を分解してチップを指で折る。

当初は巨大な肉塊だった彼女たちだが、流石に施設最深部へ敵の本隊を誘い込むのは現実的ではない。2体一対の兵器をどうにか運べないかとあれから研究して、別のプロジェクトの副産物でコンテナサイズまで縮めることが出来た。

貴重な素体故に量産は効かないが、ノルンの方を運ぶなら作戦の幅も広がる。

もうあまり時間が残っていないだろう前線の崩壊までに、味方が押し留めている敵部隊へぶつけられれば理想的だ。

合わせて、今度は役の方の携帯で指揮権移譲の指示を出す。命令系統を中央指揮直轄とし、直ぐに近接航空支援に移ってもらうが、果たしてどれほど役に立つものか。


到着した車に乗り込み、軍の制服を脱ぎ、諜報部の制服に着替える。

「本当にあれを使うんですね?」

運転席から彼が聞いてくる。

私の補佐に就くにあたって幾つかの計画資料を読ませた。そしてノルンは彼に直接見せたものの内の一つだった。

訓練学校で人の惨殺死体やらは見慣れて居るだろうが、それでも堪える程にあの肉塊は強烈だった様だ。確かに、私でさえ信じてもいない神の憎悪を一身に受けた様だと思ったが。

それでも、そんなものを「傑作ができた」と満面の笑みで報告を上げてくる奴らが居るのだから、自分の言えた義理ではないが、やっぱりこの世界は狂ってる。

「ああ。手筈は?」

「輸送機を用意しました。コンテナを積んで間も無く離陸。目標上空で高高度から投下、地表から200mの高さで発動。試算では効果範囲はおよそ半径4km程と出ています」

「ナンバーズはうまく釣り出せそうか?」

「それが...今まで確認されているナンバーズが一体も何処からも報告されていません。それでも260機余りの通常個体を巻き込む想定で陽動が組まれています」

前線維持には、確かに大きな一手だ。

だがナンバーズの出鱈目さは一機で戦術レベルの超兵器だ。絶対に見逃せない。

不在の間に何があったかを資料で確認しながら、次の一手を考え続ける。

特にあの盾のワルキューレ。彼女には何かがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。