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銑鉄のワルキューレ  作者: 駄作卍
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閑話

「ところで、先ほどのご連絡は?」

電話を切った後に、彼は躊躇いがちに訊いた

「なんでも無い。ただ試験部隊の一つが全滅したという知らせだよ」

前線に合流させて兵器試験隊と合わせて運用しようとしていた部隊が経由地の基地と共に壊滅。

よくある話だ。それが偶々私の管轄だっただけの事。

小隊名も開発班が決めたもの故に私の娘というわけでは無いが、目を掛けていたプロジェクトの一つだっただけに目立った戦果のなかった失望はある。

まあ、オリジナル同様に処分予定だった部隊だ。

「そんなアッサリで良いんですか?賢人会から下賜されたプロジェクトのはずじゃ...」

「既にプロジェクトの破棄は認可済み。それに、扱い切れない兵器は早々に処分するに限る。君ももう少しすれば分かるよ」

隣を歩くこの少年は、まだ育成途中の人材、エージェント見習いで付けられた私の補佐ということになっている。訓練課程の修了すら終わっていない者を現場へ出すとは、老人達の焦りは相当らしい。

それに、不自然に戦力を潰し続けている私の見張りの役目もあるのだろう。私とて好きでしているわけでは無いが、こればかりは運が無かった。

そう言った経緯もあって、別に来たい場所では無いがわざわざ本日出向いて来たのは、他でも無い盾のワルキューレについての資料を探しにだ。

諜報部の存在するこの支部には大戦期から全ての交戦記録がある。あそこまで強力なワルキューレが昨今に生まれたとは考えづらいが、私の知っている限り急に現れたかの様にそれまで何処の交戦にも参加している記録がない。

表向きは偽装の為、何の変哲もない雑居ビルの様な建物。奥に歩いて行けば、常に同じ場所を清掃し続ける清掃員が居て、すれ違い様にカートから取って差し出されたフォーチュンクッキーを受け取る。

歩きながら中の紙を引き出せば占いに偽装した暗号文が現れ、指示通りに扉横の入力パネルに入れれば扉の横の壁が開いて私たちを出迎える。

いつも思うが、何に備えてこんな面倒な仕組みを作ったのか。


過去のログを遡ってみる。私の知っている範囲よりもっと昔。範囲を指定して検索をかけていく。

ざっと百数件程の候補が上がった。だが、問題はその記録された日付だ。最近の上げられた報告以外では、大戦期あたりまで、つまり500年以上昔の記録に遡る。

試しに一つを開いてみる。フォーマットが違って読みづらい上に黒塗りも多いが、要約すれば、あらゆる兵器でもって貫けない最悪の装甲をもつ人型の核シェルター。艦隊を容易に殲滅する程の強力無比な武装。なんとも現実とは思えない様な形容が並んでいる。

その時の被害が、大規模な交戦だった為概算だと付けられているが、単騎による戦死者約5万。損害額にして古い通貨の米ドルで書かれているから約3000億ドルと言うのがどのくらいに当たるか換算は難しいが、莫大な損害というのは分かる。

付帯する資料はほぼ残っておらず、写っている写真も不鮮明で、人と同じくらいの大きさの盾を持っているシルエットしか分からないが、あの様なワルキューレが二人といるとは思えない。

どうしてか分からないが、私は亡霊に目を付けられたというのだろうか。

ナンバーズの認定前の記録故、ナンバリングには存在しないが明確にナンバーズの一体に数えられる程の個体であるのは間違いない。

資料室を出た私を少年は待っていた。

「すまない。クリアランスの関係で入れないとは言え、待たせすぎたかな」

「いえ!大丈夫です。それより賢人会から出頭要請がありました。プロジェクト:メサイアに関する閲覧権限を与えるとも...」

私が閲覧しに来た事を彼方は当然のように把握しているのだろう。それには驚きも無いが、それよりメサイア計画についてだ。私が訓練校にいた時に立案したものの一つだが、確かに賢人会に目を掛けられるキッカケになったとは言え計画自体は棄却されていたはずだ。

私が書いた内容なのだから閲覧するまでも無いと考えたが、加筆内容次第で重要な事が書かれているかもしれない。

「すまない。もう少し待たせる事になるが、構わないかね?」

「ええ。大丈夫です」

私は再び資料室へ赴く事になった。

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