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銑鉄のワルキューレ  作者: 駄作卍
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計画の破綻

結論から言えば、蘇生は可能だった。

ただ尾は残り3本。補充するべきか迷うところだが、今代償を受けたら内容次第では不味いかもしれない。

だがこれでドライが本調子に戻ったなら、等価交換と言える。やはり世界は魔法の乱用を許さないということなのかもしれない。

腕の中で顔色の戻ったドライが目を覚ます。

「...あれ...?」

「ドライ、良かった...何があったんだ?」

訊くと、彼女は一瞬止まった後、目の焦点が定まり

「そうだ、イオナ!私たち、襲撃を受けて!」

直ぐに身を捩って降りようとしたので降ろしてやる。

襲撃。それもドライの能力で簡単に解決が出来ないとなれば、残りも危険に晒されているのだろう。

ドライと一緒に急いで駆け出す。

だが、そこで目にしたのは倒れている彼女たちでは無く

「フンフ、ツヴァイ、やりなさい!」

アインが両手にそれぞれ何かを掴んで持ち上げている。両腕に刃物に刺されている様な傷が何度も何度も出来るが、アインの再生はそれをものともせず、万力の様に締め上げ続ける。

ついに手の中で現界した二人の少女を一方はフンフが空へ向けて落とし、もう片方をツヴァイが巨大化して踏み潰した。

そして、背後から急に肉が焼ける様な音がしたと思って振り返れば、血も流れない程に炭化した腕を抱えて蹲る少女がいた。ナイフを握ってはいるが、あの火傷では握ったまま離せないほどに動かないのだろう。

すぐさま隣のドライが彼女を蹴り倒し、頭を撃ち抜いた。倒れている似た格好の恐らく敵が先程飛ばしてしまったものも含めれば四人。

「...終わったのか?」

訊けば、ドライは微妙な顔をしている

「...多分?」


私は自分が死んだと思っていた。実際私の身体は死を予感するほどに冷え切って、指の一本さえ動かなかった。

だが次に目覚めた時、身体は十分に寝た日の朝の様に快調で頭は冴え、目の前にはイオナの顔があった。

その瞬間、僅かに呆けていた意識もはっきりして直ぐに、攻撃を受けて私にはどうしようもなかったと、縋る様にイオナに助けを求めた。だが戻った私を迎えた光景はむしろ逆。まるで因果関係そのものが私の知っているものとは不連続な事象に置き換わったかの様だった。

いとも容易く殺せてしまった敵を足で突いてみる。だが当然即死の傷だ。隠し玉もない。

先程までの必死の繰り返しは何だったのか、私の気がおかしくなったのだろうか。

だが、原理は分からないが不可視になっていた能力が狙撃の邪魔をしていたなら、今なら。

私は慎重に狙いを定め、砲身に光が走る。

空を裂いて飛んだそれは次こそ命中し、見事に建物の一部を吹き飛ばした。



殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

金属のフレームは歪み、外から強引に潰したコックピットは中の様子は伺う術もないが隙間から流れ出る血液が中にいた人間の末路を示している。

ミスをせず、必要なら駒を差し出す様に犠牲を計算しながら千日手を指すような戦術に手こずらされ、当初の予定より大きく遅れた。兵器のスペックを操縦手が限界以上に引き出していた。おかげであまりにも美しくない戦いだった。というより、本当はイオナに任せた方が適していたのだろう。

どこまでも自分が不甲斐ない事実への苛立ちさえ込めて最後に一発殴りつけ、もはや動く事は無くなった瓦礫を見下ろす。

まだ仕事は残っているだろうか?顔を見上げれば今、空を裂いて飛翔した光弾が目標に4つ目の穴を穿った。もはや制圧は時間の問題だろう。なら直ぐに用を済ませて合流しようと、あたりを見回す。ちょうど良く近くに最初に破壊したファランクスの内の一機が鎮座している。

(...アルターエゴ)


基盤部分のみの損傷で給弾機構含めた砲自体の機能は生きている様です。


返答を聞くや否や上部の白いドーム部分の残りを切り飛ばし、地面への固定を力任せに引き抜けば、意図を察したアルターエゴが勝手に髪を配線に繋いでくれる。


システムステータス・イエロー

暴発の危険がありますが、20mm掃射可能です。


砲身が回転を始め、鉛の暴威を吐き出す準備をする。

私は来たる反動の制御に身構え、他の格納庫や、燃料タンクへ向け照準を置いた。

瞬間、身体ごと浮きそうな程の反動が身体を襲うが、腕でそれを押さえ込み、身体を後ろに結界を置いて押し留める。

甲斐あって見事に建物を薙ぎ倒し、タンクを蜂の巣にして燃料ラインを燃え上がらせる。連鎖的な爆発は弾薬などへの引火だろうか?

間も無く基地全体の給電が止まったのか明かりは消え、基地は我々の手中に落ちた。


イオナの戦う場所を見つけるのは容易い。一際強い炎が何度も上がるところに彼女はいるのだから。

彼女達を見つけて降り立つと、彼女の尻尾は大きく減って3本しか残っていなかった。どれほどの激戦があったのか。なぜ使う羽目になったのか問いたかったが、何より6機無事にいる事が大事だった。最悪をも想定していた私は胸を撫で下ろす。

「遅かったじゃないか、エリニュス」

「ごめん、結構手間取っちゃって」

「ああ、だがやれたんだろ?こっちも丁度だ」

もはや指揮系統を失い、闇の中で散発的な攻撃を繰り返すだけの烏合の衆となった相手は最早敵ではない。

分散配置してあったのか装甲車なども出てきたが、組織的に援護もなく現れれば大きな良い的にしかならず、砲旋回も間に合わないうちに瓦礫に変わった。

その内、銃声さえ聞こえなくなり、もはや基地に私達以外の人の気配は無くなった。


轍を見るに、6台ほどの車列で逃げ出したようです。追いますか?


地面に残った形跡を分析させれば、情報が返ってきた。だが目的は殲滅でなく略奪なのだ。

「よし、じゃあ皆必要なものを貰いに行こうか」

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