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銑鉄のワルキューレ  作者: 駄作卍
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夜は誰の時間か

「っしゃ!やりぃ!」

「喜ぶのには早いですよ、フィア」

事が思い通りに進んで浮かれるフィアをアインが嗜める。

「そうだぜ。エリニュスがシステムを抑えに行ってくれたんだ。こっちも仕事にかかるぞ。フンフ、狙撃を頼む。ツヴァイとアインが護衛。後はあたしと蹴散らしに行くぞ!」

「「「「了解!」」」」

ついでに可能なら燃料弾薬は吹き飛ばしておけなんて、なんてご立派な命令か。だがそれで十分。

即応に集まってきたトラックを、中の兵ごと炎で焼き出してやる。生憎ワルキューレの武装が使えない私は、敵の落とした小銃を鹵獲しようとしたが、手に持つと樹脂部分が溶け出してきてしまうので諦めた。

やっぱり暴れるには自分の手足が一番。幾つかの家屋の窓に炎を投げ込みながら、こちらに銃を向ける相手へ一足で迫り、銃口を逸らさせて顔を掴む。

ハイヴの連中と違ってここのには恨みは無いが、しかし子供を平気で使う軍だと思えば殺すのにも幾許か心が軽くなる。

動かなくなったそれを放り、フィアとドライを見遣るが、相応に戦えている様で問題ない。奇襲効果がある内に戦力を削ぎたいと私は更に火力を強めた。



「いい?フンフ。落ち着いて狙えば貴方が一番成績が良かったんだから大丈夫」

アインお姉ちゃんが頭を撫でてくれている。

「...ん」

期待に、応えたい。

「ねえ、こんなもんで良い?」

ツヴァイお姉ちゃんが多分イオナお姉ちゃんの攻撃の残骸だと思うスクラップを引っ張ってきてくれた。

その上に砲身を据えて、その向こうに司令部と思われる少し高い建物を見据える。

引き金は付いていないが、ゆっくりと引き絞る形で

「...ファイア」

光弾は空を駆けて、命中すれば載せた炸裂術式が建物を大きく損壊させる、筈だった。

直撃軌道にあったそれは建物を掠める様に傍を通り抜け、背後の虚空で炸裂する。キラキラと舞うガラスが見えたが、損害はその程度に収まるだろう。

「っ!?」

外した事で、直ぐに二発目を撃とうと気を急いていた私に、突然そばに居たアインが覆い被さる。

その直後、彼女の肩口から血の花が咲いた。

撃たれたと気付いたのはツヴァイに二人まとめて抱えられて物陰に引き込まれてからだ。

「イオナ!聞こえる!?狙撃は失敗、ポイントを変える!」

ツヴァイは遠くへ向けて叫んでいる。

だが私は、それどころじゃ無く、ただ声も震えて上手く紡げなくて

「ご...ごめ、ごめんなさい。ごめんなさ...」

強く、片腕で抱きしめられる。

「大丈夫。フンフ、大丈夫だから。私なら20秒もあればこの怪我は治るんだから。だから良い?フンフ。落ち着いて狙えば貴方なら当てられる」

そうしている内に、撃たれていた腕も上がる様になっていた。

「さ、もう良いならさっさと移動してカタ付けましょ」

「そうね、ツヴァイ。さっきはありがとう。フンフは?まだやれる?」

目元を拭って立ち上がる。

どれだけズレるかは分かったからもう大丈夫だ。

3人で飛び出し、先とは別の地点に移動して伏せる。

目標周囲には確かにサーマルで確認で熱源が伏せているのが多数確認できた。だが、こちらを確認するのは近くでイオナが暴れている以上難しいだろう。とすれば撃った時が見つかる時だ。

再度狙いを定める。

「...右に3シュトリヒ修正」

今度は当たる筈だ。先ほどの失態が、恐怖が躊躇わせる。だが、本当に撃てなければここで誰かが死ぬ事になる。私のせいで。

「...ファイア」

再び飛び出した光弾。先ほどと違い、直ぐカバーに入る。

先ほどの1射を踏まえての調整、外れる筈は無かった。

だが今度も、いや今度は分かった。光弾は不自然に建物を外し、背後で虚空を照らし出した。

「また外した!?」

「...ちがう」

ツヴァイは私が外したと思った様だが、初めから建物が見た通りの位置に無かったのだ。こんな現象が起こるとすれば必然

「敵にも魔法使いがいる」

世界の理を書き換える事ができるのはこちらだけではないという事だ。

近くで12.7mmにコンクリートが弾け飛ぶ音を聞きながら考える。

「なら、急いでここを離れましょう」

アインが言って、一度思考を中断する。

その時、近くに無造作に置いてあったありふれたコンテナから、気の抜ける音と共に何かが射出される音がする。

数十もの羽音がこちらに迫り

そして

私たちを庇う為に巨大化したツヴァイの背中で炸裂した。

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