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銑鉄のワルキューレ  作者: 駄作卍
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襲撃計画

本官の任務はレーダー監視。

と言っても、ワルキューレは中継基地の補給路を狙う真似もしないから、形式上という面が強いが。たまに哨戒に飛ぶ機体を警戒する程度の仕事場だ。

「よう、なんか居たか?ほらコーヒー」

「ありがとうな。いや、相変わらず鳥の影がたまに映るだけだ」

昔は航空機を警戒する重要部署だったらしいが、航空機なんて飛ばした側から落とされる今日ではとうに廃れて、結果的に名前だけの部署で旧式の機械と睨めっこの毎日だ。しかしアナログの方が信頼できるなんて負け惜しみの様に言いながら、案外こう言った機械も嫌いじゃないもので。

「なあ、今一瞬何か影が映らなかったか?」

「どうせ間違いだろ。ワルキューレなら魔導反応があったってあちらさんが騒ぎ出すはずだ」

電波式が廃れた代わりに魔導反応を探知する部門が新設され、そちらが主流に代わった。

事実上この基地の目と耳の全てだが、そっちが探知してれば基地中に警報が響き渡る。何も言わないなら異常は無いのだろう

「そうだな。地表近くだし、どっかのバカが銃でも投げ上げたのかもしれん」

「あー、あの迷信か?銃を投げたらワルキューレに殺されないとかいう」

前線帰り、または襲撃の生存者の間で言われている真偽不明な噂だが、いつ死ぬか分からない戦場だ。誰だって藁にもすがる様に迷信を試したくなるものだ。

それに、最近は徴兵が増えて新兵も多く送り込まれてる。なんの変化があったのか分からんが、そろそろケリを付けに行くつもりはないかと言うのが俺の見立てだ。

そうして雑談に高じていれば、何やら表で犬が吠えている。軍用犬というほどの立派なものは使われなくなって久しいが、救助や単に愛玩ではまだまだ現役。

それにしても何かあったのだろうかと表に出てみると、犬を必死に宥めている奴がいるにも関わらず、彼らは狂った様に吠えていた。日が落ちて少しするが、何か興奮させる様なものがあるだろうか。いや!違う。彼らは一方へ向けて吠えているのだ。その事実に気付いた時、背筋に氷を入れられた様な感覚が走る。

もしあのレーダーの偽像が実態だったなら。教本に載っていない戦術があるとしたら。

声を上げるより先に建物へ駆け戻る。

「おい、どうしたっ!?」

一刻の猶予もない、邪魔な同僚を突き飛ばして無線機に飛びつき、通信ボタンを叩く。

「緊急!方位140、数不明、直ちに警戒を!」

「...落ち着け、貴官の所属は?それにその様な報告は上がっていない。確かか?」

「うるせえ!早く動け!奴ら低空で直ぐそこまで...」

いつのまにか、耳障りな高周波音が聞こえてくる。

大地を盾に急襲なんて奴らの手口じゃない。だが、事実として迫る死神の音が常識なんてものをあざ笑うかの様だ。

一機が頭上を通過したような音の直後、対空機銃の発砲音が、続いて爆発が夜の闇を裂き、もはやここは安全な後方などでは無くなっていた。


生身で飛ぶからこそ出来る、地に張り付く様な低空飛行。地表からほんの2、3mの高度を飛ぶのは過去の地形追従ミサイルより尚圧倒的に低い。

「エリニュス、本当にその作戦で良いんだな!?」

イオナが問いかける。

「信じて!」

ただ一言、私はそう返す。

そうして打ち合わせ通り、彼女達を引き離す様に僅かに速度を上げる。これで到達時間に20秒ほどズレが出来るはずだ。

地平線の向こうに目標が見えた。

その瞬間一気に高度を上げ、通り過ぎる様に回り込む。全ての対空兵器を惹きつける様に。


ロックされました。想定より4秒早いです。


地表にある対空ミサイルや機関砲が一斉に向けられているのを感じる。次の瞬間、20mmや30mmの殺意の塊が私に殺到した。

盾を出し、わずかに傾斜をつけて防御する事で少しでも衝撃を逸らす。だが、逆にある程度木の葉の様に揺れる事で命中弾も減らせる。


目標情報を送信。間も無くです。


盾の表面で弾ける暴威と、命中弾こそ無いものの至近で爆ける誘導弾に耐えていると、アイン達が突入と共に対空火器群を攻撃する。幾つもの誘導術式が編み込まれた光弾が正確にランチャーやCIWSの基幹部を叩く。

一気に機能不全に陥った対空火器はもはや脅威では無かった。


対空兵器の9割が沈黙。損害報告なし。


良い滑り出しだ。だがもう後にも戻れない。

足元で煙と混乱に包まれている基地を見下ろしながら、先に火器管制にアルターエゴを潜り込ませようと目標の建物を探す。


熱量、通信量、警備強度いずれもあの建物が電算機であると示唆しています。


見つけた。だが、少しでもこちらの戦力不足を補う為に可能な限り鹵獲もといハッキングしたい所だ。頑丈な建物ごと中身も破壊する訳には行かない。

近くの鉄骨で組んである簡易見張り台へ盾を構えて突っ込み、衝突で歪んだ構造の数箇所を、今度は刀で斬って完全に倒壊させる。

地上の歩兵は飛行も交えて三次元的に戦えば、建物の上に登るだけで死角になるのだから大した問題にはならない。だが、けたたましい警報の中で確かにエンジン音がこちらに向かってくるのが聞こえ、私はそのまま天井を破って隣の建物の中へ飛び込んだ。

壁も机も、偶に人間も障害物全てを無いものの様に薙ぎ払って一点で止まる。壁越しにマークされた装輪車両。どんな車両も地に足が付いている事が前提だ。それに今は都合が良い。

壁を打ち抜いて車の底面に盾を滑り込ませる様にしてひっくり返す。突然の攻撃に対応できないうちに底面から弾薬庫を打ち抜き、車両は派手な炎と共に炎上する。

だが、私の目的はそれでは無く上部につけられた煙弾発射機だ。もはや無用となったそれを拝借して、炸裂させ目標の周りを煙で充満させた。

更に、既に扉を見つけていた私は鍵穴の上で手を翳し、電子パネルには髪を伸ばす。

「...ひらけごま」

金庫の様な重い鉄扉だが、まさかワルキューレが丁寧に扉を開けて侵入するとも考えまい。恐らく私を見失って混乱するだろう。

そう思っていた矢先、基地内にただ無造作に置いてあるだけだと思っていたコンテナから無数のドローンが気の抜ける音と共に射出される。

その無数の羽音は基地の中央の方へ。つまりはイオナ達が攻略に向かっているだろう司令部の方へ向かっていた。

今から一台ずつ対処しても群れ(スウォーム)

には到底及ばない。なら到達前にと私は急いで重い扉の隙へ身を捩じ込んだ。

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