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銑鉄のワルキューレ  作者: 駄作卍
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襲撃計画

戦闘に関して向き不向きの程度はあれど、全くの素人だった頃より格段に動きは良くなっていた。

ワルキューレの身体を使った動きに慣れ、魔法も前より使いやすくなっているそうだ。

そんな訳で、いよいよ襲撃のためのブリーフィングを行う。

「いい?まず襲撃目標はここに決めた」

私は地図上の一点を指す。

「兵力の予想は規模からして約400。この基地は隠蔽目的でなく高度に要塞化されているから接近する段階から対空射撃や他の迎撃措置に晒される。周囲は比較的平坦な土地だけれどギリギリまで低空飛行で近づく」

「なあエリニュス、ハイヴの時の様な高高度からの降下は?」

イオナが尋ねる

「考えた。でも、要塞化されたハイヴと違って降り立った場所に全方位から火力投射を受ければ損害が大きい」

「そうか。でも敵は空を飛ぶ手段は持たないから上空から一方的に砲撃出来れば...」

「私の他に長距離の高火力投射出来る人が居るならそうした。でも、私は最前線を離れるわけにはいかない。イオナの炎は対空火器を避けながら爆撃できる?」

「あー、なるほどな。確かに有効射程で考えたら非効率か。なら突破力に振った方が良いな」

威力減衰と精度を考え、各個撃破の恐れが上回ったから行えないと判断した策だ。連夜アルターエゴとの議論は非常に有意義だった。私一人では力押しな襲撃をかける他なかっただろう。

「他には?無ければ続きを話させて」

誰も声を上げないので続ける

「制圧目標はTOC、FDC、そして燃料貯蔵庫。司令部は吹き飛ばしてくれれば良い。火器管制システムは私がアルターエゴを侵入させて混乱させる。燃料貯蔵庫はあくまで副目標、撹乱に発破しても良いし発電機が止まれば明かりを失う」

「というと、襲撃は夜に行いますか?」

アインが訊く

「奇襲効果が高まるし、何より...サーマル越しの方が人を撃ちやすい筈。死なない為に躊躇わず引き金を引いて貰わなきゃいけない」

本当は人を殺す事に躊躇を持つのが正しい。でも、

「分かりました。エリニュス、お心遣いありがとうございます」

でも、これで感謝されるというのも酷く悲しい

「他に質問は?」

フンフがおもむろに手を挙げる

「魔法の...制限は?」

よく見ている。彼女達が魔法を使うたびに私がよく思っていない事を見抜かれている様だ。でもこと今回の作戦においては手段は選んでいられない。

「魔法の使用は無制限、と言いたいところだけど身体に負担をかける使い方だけはしないで」

本当は可能な限り使うなと言いたい、だが必要な瞬間ためらえば死にゆくのは彼女達だ。

「...あと話しておくべきは...過去に私は一度人類の不可解な兵器で機能を停止させられかけた。それに、ワルキューレは無敵じゃない。構造的に脆弱な点もあるし、特殊な弾頭や大口径の前では装甲も抜かれる。そもそも水で溺れさせたり強力に拘束されるかもしれない。だから、どうか誰も死なないで」


それから全員で夕飯を食べた。箱の中に残り少なくなった糧食を取り、イオナも同じ席に着いた。

明日の今頃には始まる。明後日にも同じ景色である様に、今この瞬間を目に焼き付ける。

誰もが真剣だが、その顔に悲壮感は無い。もとより孤児として逞しく、また十分に賢く、年齢に対してあまりにも成熟していて、ワルキューレになりながら人間らしい彼女達の手を汚させるのは私だという責任を私は一生背負うだろう。

幾夜の議論を通じて心は揺れた。私が単身襲撃を繰り返し、幾許かの物資を強奪し続けて暮らす事も過った。だが、そこに未来はあるか。そんな生活が続くか、私がいなくなったときどうなるか。なればこそ彼女達に共に戦って貰う他ない。

皆が寝静まった後も私は、元より睡眠は不要な身体だが、昂って眠れない様な心持ちであった。

(あの夜のレモングラスのお茶が飲みたいな)


エリニュス、応急的にプログラムを一つ組み終わりました。


唐突にアルターエゴから伝えられる。

(何?)


防御策です。装備の一部を流用して歩兵火器への防御とする術式を組んでいました。最も、併用出来ず使用中は砲の使用も飛行術式も制限される不便なものですが、白兵戦において多少なりとも使えるかと。


メッセージを読み終わると、左手に勝手にラウンドシールドの様な、というよりはバックラーに近い大きさの光る盾が展開される。


攻性概念を軸に組んであるので物理的防御には用いることは出来ますが、魔法への防御効果は極めて限定的です。多少なりとも彼女達の生存率上昇に寄与できるでしょうか?


(十分。彼女達が使うには?)


インストールには首後ろのジャックにアクセスして下さい。切り替えは砲展開の様に思念による操作に対応していますが...慣熟が必要かもしれません。


だが、無いより圧倒的に良い。

突然だったが襲撃前に形になったのは僥倖。実際に盾で護るだけが守護ではない。

少しゆとりが出来てきたところで、私は睡魔に誘われ...

(あ...れ?おかしい...な...)

睡眠の要らない筈の身体は何かに誘われる様にゆっくりと目を閉じた。

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