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銑鉄のワルキューレ  作者: 駄作卍
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閑話

私たちは円卓を囲んで座る。

空席が2つ。

もう、その席が埋まる事は無い。

「では、決議を始めましょう」

静まり返った議場は、無人の如く声の反響を返す。

「先ほど、ムーンセルの演算結果による世界寿命が823日に更新されました」

本題から入る。既に残された時間は少ない。それは既知の事実であり、私たちにも人類にも大きな事項だ。

「彼女は未覚醒な状態ながら、先の交戦にてセイバーを撃破。また、正体不明のランサークラスにより統率された70騎を超えるワルキューレをも撃破。しかし現時点まで依然、覚醒には至らず。よって戦うほどに危険が高まる為、特記条項に従いシールダークラス剥奪の可否を問います」

この決議での全会一致により、彼女に私たち全員で以って引導を渡し、その力で人類の、ひいてはワルキューレの悲願を叶える。それが私の下した決断であった。罵られようと、この変わらない現実という事実を以て合理的に、最早それしか道は無いのに踏み切れない皆の為に最も公平な自分だから決めるのだ。

皆が現実を見て、その票を賛成に入れてくれると期待していた。強固に反対し続けたセイバーも棄権し続けたランサーも居ない。これ以上進んでは崖までにブレーキが間に合わない。そんな最後の機会だったのに

「待って貰いましょうか」

反対1票

採択の場で一人が立ち上がる。

「最後のショック療法よ。その為に衛星砲の使用許可を求めるわ」

「控えなさい。主神の御前でありますよ」

アーチャーの発言。それはルーラーの私の許可無く許される筈が無く、私として許せるものでも無かった。

だが、ここまで沈黙していた主神はオーディンの名において全面的な許可を下す。

『衛星砲アルテミス、残存する全17門の使用許可』

「待ちなさい!あなたの衛星砲は各地の牽制に使っていた筈でしょう!?」

ワルキューレ総勢でも到底、万は届かない人数で億単位の人類を牽制し続けているのには隔絶した魔術、魔法、そして科学による優位があったからだ。しかし、ここ暫くにおいてそれは覆りつつある上、主要な戦力を戦線から離せば明日にでもワルキューレは殲滅されてしまうかもしれない。

なのに、積極的な人類への攻撃も禁止事項だ。

こんな不条理も、望まない戦争の継続も

全ては私利私欲の為に歪められた条項の所為。

だが、そんな人類でも嫌いになってはいけないのだ。私は公平なルーラーなのだから。

だからルールの範囲で戦う為に、彼女の力が必要だった。彼女が説得出来ないなら力づくでも連れてくる必要があった。

円卓を離れ、個々に散る面子の中、私は自身の無力さを呪った。

彼女なら、こんな時どうしただろう。

あの日、彼女を送り出したことに本当に意義はあったのだろうか。

ただ一度、支点をずらしてしまった私は絶対の天秤では無くなった。その事でクラスを形骸化された私は、今度こそ何処までも公平な道具であり続ける他ないのだ。


『アーチャー。単騎での作戦は推奨されません』

「いいのよ。衛星砲を使う以上、味方ごと撃ち抜いてしまうもの」

会議の後、ポッドに入りメンテナンスを受ける。

「それにしても、ついにルーラーも壊れたわね」

皆そうだ。まともな精神で人を殺しながら500年も生きればそうなるのは当然だ。

世界を焼いたのは私たちだ。それは間違いない。都市を遥か空から蒸発するまで攻撃したのも、命乞いする市民や非戦闘員を撃ち殺したのも。だが、私は。私たちはただの一度も引き金を引きたくて引いた事はない。

接続装置を介してアルテミスの管理システムを呼び出す。周回軌道にある衛星砲の軌道を変え、目標地点上空に集合するように再設定する。

「それにしても、あの建物どうしてか感知できなかったのよね。どんな仕組みかしら」

彼女達が根城にしているのは教会らしき建物だ。

あの辺りは暫く人類の生存圏だったが、今は前線が後退して無人地帯の筈だ。周囲には人もワルキューレも居ないから選んだのだろうが、どうにも腑に落ちない。

ともかく、システムへの接続ついでに砲は故障したものの操作は生きてる衛星も見つけたので、合わせて大気圏へ再突入を行うように設定する。

「全く、私が居るのに居場所を明かすなんて、派手に魔術反応まで出しちゃって。見つけて下さいって言っているようなものじゃない。

本当に私を忘れてるのね...なら、思い出させてあげなきゃね。私はあなたを信じてるから」


『設定完了。攻撃まで...』



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