#18 同じ舞台に上がった仲!(2)
このギャル聖女では結構マジに、善悪や好き嫌い以外な所での、人と人の絡み方を描きたいなーと思ってます。
全力でやるし、認める部分は認めるし、認めた上で全力でやるし、みたいなね?笑
「ね、ねえリノン。このゼクレイさんのこと、どうするつもりなの? 貴女のことだから単にフェイロード城に引き渡す気じゃないとは思うけど……」
ナナカの言葉に、あーしはうなずく。
「勿論、そんなことはしねーよ。ファリシア寺院とフェイロード城は友好関係だけど、それはそれとしてあーしはあくまであーし独自の行動を取る」
この答えに周囲の結構な数の人らがホッとした表情になった。あのバトルを経て、コイツに何かしら思い入れを抱くよーになったんだと思う。
あーしは、ゼクレイへと向き直る。
「そーだよ。コイツはあーしの大事な客だかんな」
――客って言葉に、けど当のゼクレイが一番強い拒否反応を示した。
「客ですって!? お前本当に、本気でそう思って吟遊詩人達にあの歌を歌わせたの!? イカれてるとしか思えないわねっ!!」
ゼクレイのこの言葉にナナカが口を開く。
「イカれてるってところは私も同意見だけど、吟遊詩人って街に居る吟遊詩人のこと?」
いやどさくさに紛れてイカれてるを押すなっつーの……。ムカつくけど、でも今はそこにツッコミ入れてる余裕は無えか。
「……実はあーし、ここ最近で街の吟遊詩人達とは仲良くなったんだよな。それでちょこっと頼み事したのさ」
あーしが言った言葉に、ゼクレイはまたブチギレる。
「その頼み事があの歌ってワケ!? アレの所為で私の神経がどれだけ逆撫でされたことかっ!!」
丈夫そーな白い歯を剥き出しにして激ギレ顔で怒鳴ってくる。……ちょっ、流石に戦闘中以外で顔に唾掛けられるのは嫌なんだけど……。
「すまねーな、けどどーしてもアンタに会いたかったからさぁ」
あーしは聖女服のポケットに入れてるハンカチで顔を拭きながら、若干もーしわけ無さげにそー言った。
「リノン、貴女一体どんな歌を……」
ナナカが恐る恐るそー尋ねてくる。ゼクレイのキレ具合から、きっとロクでもねー歌だと想像してるに違いねー。
……実際は、そんな悪い歌じゃあない。と思う。
「分かった。今からあーしが実際にその歌を歌うから聴いてくれ」
あーしのその言葉にゼクレイがまぶたをヒクヒクさせた。
「歌わんでいいわっ、このボケぇっ!!」
めっちゃ怒鳴ってきやがるけど、そこはあーしも負けじと怒鳴り返してやるぜ。
「いや、歌うっ! あーしの真面目な思いを直接お前に伝える為に、あーし自身が歌いたいんだっ!!」
ゼクレイがおぼつかねー足で、あーしが歌うのを止めさせよーと歩き出す。
「おい修道士の皆、あーしが歌ってる間だけコイツを取り押さえといてくれ」
あーしの言葉に、修道士達が一斉に「え、ええー!?」と情けない声を出していく。
けどその内にあーしはゼクレイから少しだけ距離を取って、歌う前の深呼吸を済ませた。
修道士達、めっちゃ『さ、さっきは手出しは要らないって言ってたじゃないですかー』みてーな雰囲気を出しまくってやがる。けどわりーな。
状況ってのは常に変化するんだ。今のお前達はな、あーしのノリに積極的に合わせていくターンなんだよっ!
歌うことに神経を集中しなきゃいけないあーしは、連中にはもー言葉は発さずに、指の仕草だけで『いけ』って命じた。
「そ、そん――」
『な』まで言い終わる前にあーしは歌い始める。
(ああー、狐の耳のー女ぁー、)
(うるわしき、白紫の、髪とー尻尾ー、)
うん。声の伸びは絶好調だぜ。
「コイツっ!」
ゼクレイが歌を止めよーと殴りかかってくるけど、最早よれよれパンチ。あーしはひょいと躱しながら歌い続けてく。
(ひとり、孤独に、路をー駆けるー、)
(心、誰とも、通いはーしないー、)
ゼクレイがなおもパンチを放ってくるのをずっと躱し、その中でたまたま目が合ったおっとり修道士へと、めちゃくちゃ圧を込めた眼光を飛ばす。
「う、うへぇぁぁっ!?」
(キミのこと、誰がぁー、知ってーいるのー、)
おっとり修道士はそりゃもー派手にブルったけど、でも両手を握りしめて「い、いきますよぇぁーっ!」って覚悟の叫びを上げた。
(人か、獣か、唯のぉ野郎かー、)
おっとり修道士が特攻をかける。
両手をガバガバ開きで前に出して、ガバガバだからゼクレイの身体を掴めず体ごとぶつかる形になる。
(知りたい、知りたい、とてもぉー知りたいー、)
「な、何よコイツ!? え、ええっ!?」
(フゥーゥーゥー、ウウウーフフフフー、)
けどそんなおっとり修道士の勇気に、他の修道士らも感化されたんだ。数人がかりのがっちりキャッチでゼクレイは完全に動きを封じられた。
ナイスお前達、やれば出来んじゃねーか。
(タタタンタタタン、タンタン、タンターン、)
ここは間奏部分な。楽器が無いからあーしの声で凌いでる。
(ああー、孤高のー、狐野郎変異種ぅー、)
「こぉの……クソガキャーーーッ!!」
怒りがてっぺん来過ぎて裏声になってあーしへと手を伸ばすゼクレイの――
(冷たい夜にひとりー、佇むキミにぃー)
――その手がギリギリ届かない距離まであーしは近付いて、真っ直ぐコイツの顔を見つめる。
(聖女リノンは、その手をー、重ねてーあげたいぃー、)
でもって大きく振りかぶるよーな動作で、コイツに向けて両手を広げる。
(ファリシア寺院へー、おいでーおいでーぇー、)
さあ、歌の締めだ。
(ふたりでー語ろー、キミは友達ー、)
(リノンと、キミはー、仲良しルルルー、)
……ふぅ。
歌い終わって、ここであーしは修道士にゼクレイを離すよー言ってやった。
「……ぬぅぅぅぅ!!」
「どーだ? あーし的にはフェイロード城での出来事だってことは伏せながら、あの時のお前の行動からあーしが受けたイメージと……きっとその後お前はこーしてたんだろーなっていう想像をドラマティックに表現してみたんだ」
あーしは両手を下ろしながらそー言って、ニカッと笑いかける。
「この歌の名前は【来なよ、孤高の狐野郎変異種】だぜ。――『孤高』ってのは、一人でも強い意志と精神の力でめっちゃカッケーっつー意味だ。なんつーか、お前っぽい単語だと思ってな」
あーしはこの孤高って言葉を吟遊詩人から教えてもらった。
歌を創る上で少しは締まりのある言葉を使えなきゃいけねーと思ってさ。それ以外にも今後知っとくと良さげな単語も、そこそこ勉強させてもらったよ。
歌を聴いたナナカが呟く。
「お、思ってたよりも悪くない歌だったわね……?」
そのためらいがちな表情は『この歌でなんでゼクレイさんはここまでキレてるのかしら?』って、そー聞きたげだった。
「……ぬぅがああああぁぁぁっ!!」
――けど当のゼクレイは怒り絶頂って感じで、最後の力の右フックをあーしの顔に炸裂させてきた。
「――くっ」
ほとんど痛くねー。けど拳からズシンと感じるもんはあった。
――(3)につづく!――
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