#17 激熱、あーしとゼクレイ!(6)
皆を自身の思いに熱く乗せるリノンと、何処までも一人思いを高めるゼクレイ。
どっちも格好良いです。
「このゼルトユニアでははみ出し者になりがちな、獣人族の変異種。それでありつつ、あーしの美的感覚のセンサーにビリッときやがる、白紫の髪と花緑青のアイラインってイカした特徴。……どんなヤツなのか見てみてえ、実際に会って絡みてえってそー思った」
あーしの言葉を聞いたナナカは、改めてゼクレイの顔をまじまじと見つめだした。
「美的感覚、確かにね……。私も正直に言えば彼女のアイラインが赤ではないことに、個人的な興味を抱いてしまったわ」
絵師としてのナナカにとっては、色彩ってものには特に感じ入るもんがあるんだろーな。
こーしてナナカと話してる最中にも、あーしとゼクレイは戦闘してる。
ゼクレイのパンチをあーしは躱した――ってそー思ったのに、ヤツは素早くその拳を内側にひねって、そのまま拳の甲の方でまた振りかぶってきやがった。
「がっ!?」
裏拳ってヤツだ。それがモノの見事にあーしの頬っぺた、更に鼻にもヒットしたっ!
「回避の仕方が大振り過ぎる! さっきから奇襲的な攻撃には急激に反応が鈍くなってる――お前身体能力はそこそこあっても戦闘方法自体はシロウトに毛が生えた程度ね!!」
ゼクレイが思いっきりあーしを詰ってくる。……ふーん、ケンカにおける精神攻撃も出来んだな。
あーしをヘコませよーって魂胆ってワケだ。きっちりきっかり、心技体全部を使ってこのバトルに挑んでるってワケだな!
だったら、こーゆーのはどーだっ!
「いだぁっ!?」
あーしに思いっきり足を踏んづけられたゼクレイが、間抜けな叫び声を上げた。
その間にあーしは上半身を退け反らせる。
「シューティング・スタァーーーッ!!」
そー叫びながら、ゼクレイの鼻っ柱に渾身の頭突きをぶちかますっ!!
「ぐばぁーっ!!」
どーだっ! あーしは考え方は柔軟だけど、物理的な意味での頭はめっちゃ固てぇんだよっ!
「あ、あのゼクレイが額を抑えて、あんなにも悶絶させられているだとっ!?」
エルギアドがめちゃめちゃ驚いた様子でそー叫んでやがる。
「リ、リノン、一応聞くけどそのシューティング・スタァって何なの? 魔法なの?」
ナナカは顔を引きつらせながらそー聞いてくる。どーやらあまりの威力に完全に引いてるみてーだ、へへっ。
「いや、今のは単なる頭突きだよ。けどあーゆー風に叫んどいた方が必殺技みてーでカッケーだろ?」
そーさ、これはニホンに居た頃にケンカで使ってたあーしの必殺技だ。まあ実際にこの名を使ったのは今回が初めてだけどな。
「あーしの頭が大きく振りかぶられる時、このミルクティー・ベージュのロングヘアが流れ星のよーな軌道を描く……そこからその名前が付いたのさ」
ちなみに名前を付けたのはゼルトユニアに来てからな。如何にもこの世界らしいセンスだろ?
それでいてあーしらしいキラキラした感じもあって、結構お気に――
「ぬがあああっ!!」
――ちっ、ゼクレイの野郎もー復活したのかよ。こっちに向かってきてやがった。
片手で頭を抑えながら回し蹴りを撃ってくる。ダッシュの勢いが乗ってるから、より強い攻撃力になってるぞ。
なんとかガードはしたけど、それでもあーしの体は吹っ飛ばされる。
「がふっ!」
さっきのエルギアドと同じよーに、礼拝者用の椅子と机に激突しちまった。
礼拝の間に周囲の人らの悲鳴が響く。
けど、まだ大丈夫だ。あーしは片腕を机に乗せて、なんとか倒れるのを防いだからな。
「絶対にっ! お前をっ、泣かす!!」
ゼクレイが今度はジャンプ蹴りしてきた。
……や、やべえ、カッケー!
くそっ、この勢いで来られたら無理だな。これはもーただ食らうしかねーわ。
ドゴォッと、あーしが背中を床に叩きつけられる音だけが響き渡った。……へへっ、流石に皆声も出ないくらいドン引きしてるらしい。
あーしの聖女服、汚れたし所々ボロくなったか。まー最初から傷つくこと自体はなんも恐れちゃいねーけどな。
ふとナナカの顔を見る。ナナカはグッと堪えた顔であーしを見てた。
アレは、このバトルをしっかりと見届けてる顔だ。元々戦いってもんがどーゆーもんかを知ってる上で、この本気の戦いの行方を見届けてるって顔なんだ。
へへっ、そーだよな。戦う女のオシャレがウリのナナ・クゥのデザイナーやってんだ、こーやって服がボロくなるのは承知の上だよな。
そうさ、あーしも知ってるよ。この聖女服はさ、傷付いてこそっ! その気高さをより強く輝かせるんだっ!
「おおおおおっ!!」
ゼクレイが倒れてるあーしへと飛び掛かってくる。一気に畳み掛ける気だろうが、けどなっ!
「――悪いがここはあーしの間合いだぜぇっ!!」
気合いを入れて、脚をヒザが腹に付くくらいまで上げて、捻って! ヤツの胸の辺りに会心の蹴り上げを叩き込む!!
「がはっ!?」
ゼクレイの口から唾液が出て、それがあーしの顔にかかって、ヤツが、盛大に吹っ飛んだ。……ぶっちゃけ唾液は気にならねー、きっと激熱が効いてるからだろ。知らんけど。
ドシャアーーッ!!
あー、これはゼクレイが床に激突した音だな。
「よっ、と」
――あーしは立ち上がりながら、何人かには間違い無くあーしのパンツを見られたってことの方を一番に気にしてた。
タイツ越しだしほぼ一瞬だったから、そんなよく見えてはいねーだろーけどさ。でもその一瞬の奇跡に燃えるヤツとか、タイツ越しの方が寧ろ燃えるヤツとかってぜってー居るワケじゃん?
そんなことを考えながら、あーしは周りを見渡す。
「ぐ、ぐぅぅ……」
ゼクレイは完全にぶっ倒れてる。けどここだけは、まずは周りの様子を気に掛ける。
特にあーしが倒れてた時、足側に居たヤツらの様子な。
「……」
「「……!!」」
わざとらしく姿勢を正すなっての。
……ちっ。まあしゃーない。
「……V」
ここは何も意識してない体で、皆にあーしの逆転劇の様を控えめピースサインでアピっとくか。せめて心構えは上品にってな。
ここでようやく皆から歓声が湧き始めた。あーしの勝利を喜んでくれてるんだ。
サンキューな。……けどさ、あーしとゼクレイのトークそのものはまだ終わっちゃいねーぜ。
――#17 おわり!――
リノンの魅力にご興味頂けたなら、⬇︎にあるブックマーク登録と評価をよろしくお願いします!




