#17 激熱、あーしとゼクレイ!(3)
まさかまさかのエルギアド再登場!
でもズタボロ……。
「おいゼクレイ! ……さん。お前エルギアドとは仲間じゃなかったのかよっ! ……な、なかったんすかねえ?」
くっそ、それにしてもこの状況は予想外だ。それにまだこのゼクレイに対してどーゆー態度でいくか決め切れてなかったから、口調も探り探りになっちまう。
一方のゼクレイはずっと怒り顔のまま、「ふんっ!」と思いっきり鼻息を飛ばしてくる。
「コイツとはたまたま知り合って、その喋ってる内容が面白かったから手を貸してただけよ。別に仲間にも子分にもなったつもりは無いし、私のやることにしつこく口出ししてきたから黙らせたまでだわ」
そー言って、悶絶してるエルギアドを冷たい目で見下ろす。
「そ、そーなのか。しつこくなぁ……。まあ確かにコイツ思い込みが激しいし、揉めたらなにかとウザそーな感じだとは思うわ」
あーしの同意の言葉に、当のエルギアドは必死に抗議入れよーと口を挟んできた。
「ぐぬぅ、ウザそーとはなんだ……! このゼクレイはな、自分の姿を日々周りの者の好奇の目に晒されて、独り嫌な思いをしてたんだ。それを僕が『キミがおかしな扱いをされないようにこの世界を変えるから』と手を差し伸べて、そこから共に行動するようになった仲なんだぞっ!」
なんかめっちゃ熱入れて語ってやがる。残念だけどなエルギアド、お前の場合はそれがもーウザいんだよ。
話から察するとコイツは狐野郎の変異種であるゼクレイを、その生まれ的な問題から解放してやろーと思ってたらしいな。
けど肝心のゼクレイからは、イマイチそんな思いがあるよーに感じねえんだよな……。
実際、ゼクレイはめんどくさそーな感じでヤツの喋りを聞いてる風だったもん。
「私はお前に私のことをなんとかして貰いたいなんて、これっぽっちも思ってなかったわよ。ただお前のやることに協力すれば、生まれがどーだとか種族の中で普通じゃないだとか、そんなくだらないことでギャースカ喚く鼻垂れ連中に吠え面かかせてやれるだろうなと思っただけ」
な、なんかめっちゃ喋った。とにかくひたすら言葉が汚ねーっ!
でもまあ、言ってることの意味はぶっちゃけ分かるよ? ボンバーズってアレだろ、しょーもねーヤツらのことをまとめてそー呼ぶとかってノリだろ?
うんうん、あーしもニホンでそんな感じの言い方使ってたよ。
つまんねーナンパ野郎には『具無しのカレーが喋んな』とか、なんかもーニュアンス重視で罵りまくってたもん。
とにかく、ゼクレイ的にはこーゆーことか。
「つまり、その為にエルギアドを利用してたって感じ?」
あーしの言葉に、ゼクレイは目の光を強くして睨んできた。
「そうよ。――私自身は変異種であることに特別な思いは抱いてないわ、気にしてるのはいつでも周りのヤツらの方。そういうのにはウンザリなのよ」
ゼクレイはあーしに向かって歩いてくる。
「私をあんな感じで勝手に歌にしたお前もムカつくわ。……明日の血液が急いで作られなきゃ間に合わなくなるって位血塗れにしてやるから」
声を低めてそー言って、両の拳をポキポキ鳴らしてる。
……凄えな、コイツホントに凄え。真剣な怒りがビンビン伝わってきてて、途切れやしねえ。
あーしには分かるよ。このゼクレイは脅しなんかでこんな怖いこと言ってんじゃねーんだ。
本気でそんだけあーしをボッコボコにしたいと思ってるから、自然とその思いが言葉になって出てきてちまってるだけなんだ。
出来る出来ねーは別なんだ。第一、血の方だって頑張ったら早く作られるなんて、少なくともあーしは聞いたことが無え。
ただ気持ちでそーすると思ったなら、その為にただがむしゃらに手前の全力を出しまくるってだけなんだよ。
――こーゆーヤツは、居る。何処の世界にもこーゆー、心の熱量重視なヤツが確かに居てやがるもんなのさ。
エルギアドが呻きながら口を挟んでくる。
「に、逃げろファリシアの聖女。本気になったゼクレイは僕にも止められない……ここに向かう途中も必死で食らいついたけど、何度も投げ飛ばされたんだ!」
あー、それでそんなボロボロだったのな。お前なりに、なんとかしよーと頑張ったってワケだ。
けどなエルギアド、それはもう『この期に及んで』ってヤツだぜ。お前はやっぱり、相手の事を自分の意思でどーにか出来ると思い過ぎなんだよ。
「お前とあーしを一緒にすんな。てゆーかお前はあーしに一回負けてんだろーが」
「ぐはっ!? そ、それはそうだけどそんな冷たい言い方しなくたっていいじゃないかっ!」
コイツなんであーしにまで友達に話すみてーなテンションなんだよ。こっちはそこまでお前に心許したつもりねーよ?
ったく。
「後でケガの治療はしてやるよ。流石にお前に長く居られるのはファリシア寺院的に迷惑だかんな」
「ひ、酷い言い草だなっ。だけど僕はめげないぞ、こんな程度でめげるもんかーっ!!」
ホント元気なヤツだな、コイツ!
コイツの場合マジでアレだな。良くない業を覚悟して背負うことで逆に精神が負けん気で逞しくなるっつー、なんとも希少な性格してやがるわ。
「おいクソガキ、いい加減私の相手をしてもらうわよっ!」
近くまで来ときながらそこそこの時間待っててくれたゼクレイが、流石にしびれを切らせたって感じで怒鳴ってくる。
「へへっ、そーだな。余計な邪魔が入ったが、ここからはあーしとアンタの一対一だ。――修道士の皆も手ぇ出さなくていーぞ、コイツはあーしがもてなすかんな」
そーだ。コイツは他でもないあーしが、あーしの目的の為に呼びつけたんだ。
勿論ここで言うもてなすってのは、真剣勝負するってゆー意味だぜっ!
あーしは服の上に羽織ってる白の外套をバサッと外した。
そしてこの魔法を使う!
「激熱!」
ヒューリー、激熱――これはあーし自身へと掛ける、戦闘意思を増幅させる魔法。
激しい戦闘意思は肉体にだって影響を及ぼす。疲れを感じにくくさせ、戦う相手へと向かう視野は洗練されて動きが捉えやすくなるんだ!
「これ位のハンデはいいよなっ! お前とは肉弾戦でやりたいんだ、だから魔法の杖も攻撃魔法も無しでいくぜっ!!」
「ふんっ、ガキんちょが息巻くな! ギッタギタにしてやるわっ!!」
コイツに対して、あーしは最初に言ってたんだ。『来てくれたなら早速話しよーぜ。拳同士ででもいーよ』って。
その通りに、あーしとゼクレイの拳と拳の語り合いが始まったのさ!
――(4)につづく!――
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