#17 激熱、あーしとゼクレイ!(1)
ゼクレイ登場!
彼女と交わる事が、リノンの一つの転機となる!?
目の前に居る狐耳の女が、かなりのキレ顔であーしのこと睨んできてる。
綺麗な顔してんのに……いや綺麗な顔してるからこそ、その眼光がより鋭く目立って見えるぜ。
白に紫の雫を数滴垂らして、丁寧に広げたって位の髪の色。あーしがイメージしてた通りの色合いだ。
服装の方は……。
美脚をしてるってのが分かる、気持ち濃いめグレーの細身のズボン。
マットな質感の青色をした前垂れ付きの上衣。しっかりした作りっぽいけど、コイツは意図的に胸元を大きく開けてる。
てか肩まで露出するくらいガバガバにしてんじゃん。で、その中のインナーには胸の上側が完璧に見えるタイプの黒のチューブトップを付けてるだとっ。
コ、コイツ! 手前のオシャレを確立してやがるっ!
凄えな。とにかく、まずは話していくとするか。
「フェイロード城で話聞いた時からアンタのことが気になってたんだ」
あーしは細かいことには触れずに、ホントに簡単な話を振る感覚で狐耳女にそー話し掛ける。
本題に関してワザと匂わす程度のニュアンスにして、相手からの言葉を誘う。カマをかけるってゆーヤツだ。
「ふん! それであんな歌を吟遊詩人に歌わせまくっていたと言う気!!」
……速攻で認めやがった。フェイロード城って単語とあの歌のことが組み合わさったら、もードンピシャだよ。
間違いねえ。コイツが城から魔物の守り神の封印の鍵を盗んだんだ。
周りの人らのガヤガヤとした声が上がり始める。
「おい、あれってまさか……」
「獣人族の変異種が来たってのか?」
「わあ、動物のお耳と尻尾だー」
「ああいうヤツらって、気難しいのが多いんだろ?」
皆思い思いのことを口に出してるな。別に変異種ってもんのことを無闇に毛嫌いしてるワケじゃなさそーだけど。
でもこーあちこちでザワザワされたら、当の変異種達にとっては落ち着かなくなるかもしれねーとは思う。
「……狐耳の女性? まさか、狐野郎の変異種!?」
後ろからナナカが驚きの声を上げた。どうやらナナカも変異種については知ってるらしい。
「あのアイラインの色味は、花緑青……。本当にゼルトユニアでは趣き深い色彩に出逢えるわね」
げと何よりも食いついたのは、ヤツの化粧に対してのよーだ。
あーしが薄緑って呼んでたこの色も、ナナカ流だと花緑青って言い方になるのか。なんかめっちゃ格が上がった感あるぜ……。
「ナナカなら分かるだろ? この狐野郎さん、結構良いセンスしてるみてーなんだ。お近づきになりたい気持ちも湧くってもんでさ」
「……」
あーしの相手の心へと潜り込もーとする言葉には、当の狐野郎ちゃんは反応見せずに黙りこくってる。
けどそんなコイツに更にたたみかけるよーに――
「あらまぁ、これまた可愛いお嬢さんだねえ。狐の耳と尻尾なんか生やしちゃって、ポップさ満点だよっ」
――あーし自身も思ってなかった伏兵として、さっきのあーし推しのおばちゃんまでもが、コイツの外見を目を輝かせながら褒めていった!
ここで言うポップは、【ハジケてる】って意味だ。元気さがあふれてる女の子を相手に、褒め言葉として使ったりする方のポップだ。
「……」
「へへっ。あーしから見たら美人って感じだけど、おばちゃんからしたら可愛らしいって風に見えんだな」
流石年季の入ったおばちゃん、いやおばさまってトコか。
「リノン様、危ない!」
「――っ!」
修道士が気ぃ利かせて声を掛けてくれて助かった。あーしがおばちゃんの方を向いてる隙に、狐耳の女が殴りかかってきてたんだ!
「呑気かますな、このクソガキがーーっ!!」
身を引いたからパンチは躱せたけど、狐耳女はそのまま連続で仕掛けてくる。
ギュンと伸ばしてきた手で、あーしの胸倉を掴みやがった。
「うおっ!?」
コイツめっちゃ素早い! それに力も結構強いぞ!
あと、言葉遣いがめっちゃ汚ねーっ!
「リノン!」
「あらやだ聖女様っ!」
ナナカやおばちゃん、それに他の人らも、あーしを心配する言葉を飛ばしてくれてる。
だけどまあ、この狐耳女のムカつきに関しちゃあーしの自業自得ともいえるんだ。その点を考えれば若干もーしわけ無くはあるぜ。
「皆、そんなに気にしないでくれ。コイツがここに来た時点で、こーゆー風になることはある程度予想してたかんな!」
皆に対してそー言って、あーしは改めて狐耳女の顔をじっと見た。
コイツは城では一人単独で行動してた。
それをあんな大々的に手前のことを歌にされて、しかもコイツからすれば知らん相手であるあーしに歌ん中で呼びつけられてさ。まー怒るとは思うよ。
「あーしがお前を呼んだリノンだよ。取り敢えず、名前教えてくれねーかな?」
「ゼクレイよ! 名乗ったからぶちのめすわね!!」
狐野郎変異種女ことゼクレイは、あーしから手を離したかと思った瞬間、横っ腹目掛けて回し蹴りしてきやがった!
「痛ってぇっ!」
くぅっ! 急いで放った蹴りだったからか、痛みはそこまででもない……いや、やっぱ痛いっ。
蹴られた横腹を抑えて呻くあーしを、ゼクレイが見下ろす。――凄え、蹴ったのに全っ然表情のキレ具合が変わってねえ。
あーしに対する溢れる怒りを、とにかくぶつけたくて仕方なかったんだな。その顔見ただけでそー直感出来たわ。
――(2)につづく!――
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