#16 深い話すんのは楽しいって思う!(2)
防具デザイナーのナナカが再登場してますね。
異世界転移の先輩として、リノンも安心感を得ているのです!
「そんなにも自分らしさのままで振る舞えて、それでいてこのゼルトユニアにすっかり馴染んでる……。貴女はやっぱりたいした人よ」
不意にニホンからの先輩転移者でもあるナナカから、そんな言葉が出てきた。
……ナナカは今、基本自分の工房に篭ってるか、ホントに用事のある場所にしか行けねーくらいの状態でさ。
その所為でここ最近の吟遊詩人の歌を聴けてもなかったらしい。まあそれだけ防具デザイナーの仕事で忙しいってことなんだけどな。
あーしはフェイロード城に行った時、ナナカの援護の為に目一杯このナナ・クゥ製聖女服をアピってきた。
その成果が形になって出たんだ。これからも人気になってってほしいと思う。
防具屋【飛ばない猫の為の店】に置いてたナナ・クゥ防具が売れ出して、工房の方に追加発注も来て現在その対応中。
工房の顔でもあるナナカがここにリノン特製スタミナ・ポーションを買いに来たのは、人気のきっかけを作ったあーしに礼を言うことも兼ねた必須の用事だったってワケだ。
「一番最初の、貴女が私に送った聖女服作製依頼の手紙……。あの文章に叩き込まれた貴女の強い思い。それに乗れば伸び悩んでたナナ・クゥブランドを一歩前へと押し出せるかもしれないって、そう踏んで行動した私自身を褒めてあげたいわ」
ナナカはそんなことを言って、あーしに微笑んだ。
この人は防具デザイナーとして技術が有って、そして自分にとってプラスになる相手を見極める力と、実際にその相手の手を取る柔軟さも併せ持ってる。
プロってのはナナカみたいな人のことを言うんじゃねーかな? 野心的とか、意欲的とかって、そーゆー言葉が良い意味で使われる感じの、さ。
マジでカッケーよ。改めてこの人に聖女服を作ってもらって良かったわ。
あーしはここでは、ナナカにぺこりしてみせた。その上であーしの野心をナナカに聞いてほしいって気になった。
「まだまだこれからっすよ。あーしとして聖女として、この世界にガンガン絡んでいくっす」
実際このゼルトユニアには色んな問題がある。それに対して気持ちで負けてなんていられねーって気持ちを、思い切ってぶつけたかった。
「そう。でもあまり根を詰めちゃダメよ。長くその姿勢でやっていくなら、ある程度のことは周りの人に任せられるようにしておいた方が良いわ」
あはっ。『貴女ならまあそんなことも言うでしょうね』って感じの目して前向きなアドバイスくれるの、マジであーしが見込んだサイジョウ・ナナカだぜっ。
「それもちゃーんと分かってるよ。礼拝しに来た者から話聞いたりするのは、修道士の皆もしっかりやってくれてるしさ」
あーしはそー言って周りを見回した。
寺院の運営に絡むよーなことは、流石にあーしのデゼルくらいしか背負えない。けどそれ以外の日々の務めってヤツは、他の修道士も十分やれるんだ。
その辺は頼りにさせてもらってる。
……相手に任せる、か。そーいえばこれもその内に入んのかな。
あーしは次の言葉を、軽くため息吐き気味にナナカに話した。
「ケガした人が治療を求めて来た時には、基本ポーションをお布施もらって渡すよーにしてるんだ。どーしてもすぐに治してほしいって言う人には回復魔法を使うけど、その場合はより高いお布施を貰ってる。勿論最初にどっちにするかを本人に選ばせてるよ」
「良い対応の仕方じゃない。そういうところをなあなあにしないなんて流石ね」
「そっか。やっぱナナカならそー言ってくれるよなー」
つい思わせぶりにも見えるよーな返事して、ナナカに不思議そーな顔をされちまった。
「――? え、もしかしてお金を貰うことに、自分で納得してないことがあるの?」
防具のデザインという技術を仕事にしてるナナカは、まさしく広い意味で技術ってものの価値の高さを知ってる。
だからあーしの魔力についても、その価値を自分で下げるよーな乱用は控えた方が良いって思ってくれてるんだ。
ナナカの言葉に、あーしは「いや、そーゆーんじゃないよ」って慌て気味に答えた。
金貰うことに納得してないんだったら、そもそもアンタにスタミナ・ポーション買わせたりせずタダであげてるもん。
ただこの話はそーゆー技術や魔力だけのことじゃなくて、寺院、更には聖職者特有の要素が絡んだ話でさ。
だから話し始める前に、腰入れて話さなくちゃなって気持ちを改める必要があったんだ。
「……実はさ、最初はそーゆー人のケガをあーしの回復魔法で速攻治そうとしてたんだ。でもその後でデゼルからこー言われちまったんだよ」
――民草に対して貴女のお力を使われるのでしたら、相手から必ずお布施を頂戴なさいませ。何の代償も払わせずにいることは、返ってその者に良くない業を背負わせることに繋がるからです。
要するに説教ってヤツだ。いつものよーに静かな口調だったけど、それでも叱られてるって感覚がその時は有った。
別にムカついたりなんかはしなかったよ。てか寧ろその説教はあーしの心にガツンときた。
いーか、ガツンとだぞ。これ大事だかんな。
「業、か。流石はデゼル司祭ね、あの人が言ったのだと思うとそういった言葉にも信憑性が増すわ」
ナナカは両腕を組んでうんうんとうなずいてた。
ニホンでファンタジー系を得意とする絵師だったからか、それとも元々こーゆー精神的な話にも造詣ってヤツが深いのか。とにかく、ナナカはこの話を普通に聞いてくれた。
――(3)につづく!――
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