#15 ファリシアの基本理念!(3)
ファンタジー作品内での職業に関するお話って、神代は結構好きなんです。笑
「かつての魔王が倒れてすぐの頃は、魔王軍残党の動きも相当乱れてたんじゃい。軍に関する重要な品なんかも、散り散りになった」
「魔物の守り神の本体もそのひとつってことか」
「そうじゃい。……ある日、えらく風格のある魔物の男がワシらの里に現れてな。傲慢さ剥き出しで里の者に接してきよったが、ワシが立ち向かって止めさせたんじゃい」
その時点で、あーしはもうドナキロの言おうとしてることにぴんとは来たよ。
けど話の肝心なところを聞く前に、これだけは言ってやりたかった。
「ドナキロ、お前はその頃からやっぱイケメンだったんだな」
笑顔でそー言う。コイツはやっぱり、あーしの頼れる友達なんだってな。
ドナキロのヤツ、いつもみてーに照れ臭そーにしてやがるぜ。へへっ。
「う、うむぅ。と、とにかくじゃな、その男はワシの行動を逆に気に入ったらしくてな、懐から手のひらサイズの石像を取り出してワシに渡したんじゃい。――この魔神像を勇敢なオークの里に託す、とそう言ってな。そして男は何処かへと去ってしまいおったんじゃい」
なるほどな、やっぱりそーゆー展開になったか。
魔神像、ねえ……。
「かつての魔物の守り神は変幻自在だったと聞きます。石となり眠りについた際、大きさや見た目が変化したということは考えられますな」
「そっか。……ドナキロ、その男は魔王軍のヤツだったのか?」
「すまんが分からんのじゃい。何者か尋ねはしたんじゃが――名前などは捨てたわ、などと偉そうに言ってきおってのう」
なんだそりゃ。カッコつけてるつもりなのかよ、ソイツ。
……まあソイツ自身のことはいーか。今肝心なのはその魔神像のことだ。
本当に封印された魔物の守り神の肉体なのかは、まだ明らかじゃねえ。
でも元々魔王軍残党はドナキロの里にもちょっかい掛けてきてるし、ソイツらにもエルギアドにも渡していいもんだとは思えねーな。
「どうする? また今度改めてその魔神像のことをサーニス公達に伝えるか?」
だけどそのことについては、デゼルは首を横に振った。
「ドナキロが心配しているのもありますが、それとはまた別に、私には内密にしておいた方がよいという思いがあります」
「理由はなんだ?」
「我らが女神ファリーリーはこの世界に生ける者達の精神の躍動――その中でも特に情熱の発露を司っています。故に個人や組織間に生じる善悪を主眼に置いて介入することは好みません」
「情熱の発露、か」
なんとなくだけど、あーしにはデゼルの言ってることが分かった。
そんなあーしに、デゼルはゆっくりと頷く。
「リノン様はフェイロード城でサーニス公やレティシア姫だけでなく、見る者によっては悪と断じるであろう魔道士エルギアドに対しても、そのおおらかなお心で向き合いなされたのでしょう?」
「まあ、ぶっ飛ばしはしたけど、それでも確かに『悪いことしやがってコイツ!』みてーには思ってなかったな。――手前の思いが溢れ過ぎたんだなって、しょーがねーなコイツって、そんな風に思ってたよ」
「そうですな。そしてその者をフェイロード城の者が捕らえることには、こだわってはおられませんでした」
「……うん」
デゼルが微笑む。
「それで良いのです、ファリシアの者としてはそれで、ね。サーニス公達は善に属し信頼も置ける方々でありましょうが、それでも、彼らだけに肩入れをして彼らの思いのみを広めてしまっては、世界に存在する他の者らとの軋轢を逆に加速させることに繋がってしまいます。……争いというものは生き物が生きる上では決して避けられぬもの。しかしそれならば、せめてそれぞれの思い達が自らの誠心誠意で躍動をし続けられるよう調律の一助を担う。それがファリシアの理念であり、女神がその聖女たれと見込んだリノン様に成していただきたいことなのです」
「デゼル……」
最後の方の言葉を言ってた時には、デゼルは優しげな顔をしてた。
大変なことだけど、それでもあーしならきっとやり抜いてくれると信じてるっていう――そんな思いがひしひしと伝わってくる表情だった。
「そー出来るよーに頑張るよ、デゼル。けど多分、あーしの場合いちいち頭で考えてやる感じじゃねーだろーけどな、へへっ」
ちょっと苦笑い気味に、ほっぺたを掻きながらあーしはそー答えてみせた。デゼルと、それにドナキロもあーしの言葉に微笑んでくれたのが嬉しかった。
「よっし。早速だけどデゼル、お前に頼みがある」
「なんですかな?」
「ここらでドナキロにファリシアの加護を与えてやろーと思うんだ。三人で話し合って決めた、例のドナキロに合わせた加護の上級コースの方のヤツをな。だからその下準備として、ドナキロを連れてファリシア寺院御用達の清めの場に行ってほしい」
「リ、リノンちゃんっ!」
ドナキロが喜び半分、そして驚き半分って顔で身を乗り出す。
「フェイロード城での従者役もこなしたし、エルギアドとの戦闘ではあーしの心を支えてもくれた。もう文句言う修道士は居ねーよ」
「ふっ、確かにそうですな。その大役しかと引き受けさせていただきます。……しかしその間、寺院の主要人物はリノン様お一人となってしまいますぞ」
デゼルの言葉に、あーしはふっと笑ってみせる。
「ちょびっとだけ緊張するけど、でも今あーしはテンション上がってる状態なんだ。だからやってみせるよ。――ついでにヤツへのアプローチも、なんとかしてやってやるつもりだ」
「ヤツって誰なんじゃい?」
「狐野郎の変異種とやらだよ。……あーし的に、本当に今一番気になってるのはソイツだからな」
これはあくまで直感だけど。
あーしがこの世界の者として生きよーとする上で、ソイツの存在は避けちゃいけねー壁だって気がするのさ。
――#15 おわり!――
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