#15 ファリシアの基本理念!(2)
リノンは狐野郎変異種の女に、心の照準を合わせたようですね。
あーしは他にもう一個、気になったことについてサーニス公に聞いてた。
『ところで、封印の鍵があるってゆーことは、扉ってか魔物の守り神本体もどっかに存在してるんすよね?』
『その通りです。……かつて守り神の意識を鍵へと封じた時、ヤツの肉体は眠りにつくかのように石へと変化しました。しかし封印される直前まで凄まじき力を発していた故に、その力の残滓が障壁となり、我らの手で触れることは適わなかったのです』
『じゃあ、今どこに?』
『分かりません。時を経た後にその場に戻りましたが、何者かが持ち去ったのか、石の肉体は消えてしまっていました。……魔物の守り神は元々姿を変化出来る力を持っています。石となった際にも姿が変わったとしたら、探すのは困難であると思います』
サーニス公は少し悔しそーな顔になって言った。
『いや、封印して眠りにつかせただけでも凄えっすよ。今はこの先のことを考えていきましょ、なあドナキロっ』
あーしはとりあえずサーニス公を元気付ける為に、隣に居たドナキロを巻き込んで場を明るくしよーとした。
ただ――
『お、おうなんじゃい』
――ここでドナキロがめっちゃ薄い反応だったことに、あーしは疑問を持つことが出来なかったんだよなー。
『ありがとうございます、聖女様。そうだ、この後は是非夕食をご一緒になられてください。簡単な宴は用意させていただきますので』
まーこんなところで、メインの話は終わった。
勿論晩飯にはお呼ばれさせてもらったよ。
ひと騒動あった後には、気分の切り替えするのが大事だかんな。サーニス公や姫さまと一緒に和気あいあいと話してたぜ。
こーゆー時には歌や踊りの出来る職業の人を呼んで盛り上がるのが、ゼルトユニア流らしくてさ。
特に弾き語り担当の吟遊詩人って人からは、演奏してもらうだけじゃなく、今回のあーしの活躍について質問とかも受けたわ。
それを歌にして、後日街で民衆相手に披露してくれるんだってさ。素直に嬉しかったぜ。
なんせ聖女として本格活動を始めた初日に伝説残せたってことだかんな。頑張った甲斐があったってもんだよ、へへっ。
※
夜には寺院の奥の間で、デゼルに今日のことを話しもした。
ここでようやく、なんかもごもごしてた風だったドナキロが口を開いたんだよ。
『……リノンちゃん。魔物の守り神の封印されとる本体じゃが、実はワシには心当たりがあるんじゃい』
『えっ……。な、なんだってえーーー!?』
これには思わず身を乗り出さずにいられなかったわ、まったく。
――ふぅ。ちょっと長かったけどここであーしの回想は終わりっ。
こっから時間は元に戻るぜっ。
「といっても、本当にそうなのかは分からんのじゃけどな」
「いや、てゆーかなんで城に居た時にそれを言わなかったんだよ!?」
あーしの問いに、ドナキロはずいぶんと慎重な感じを出しながら答えた。
「すまんとは思ったが……。これはワシのオークの里にも深く関係する話じゃったから、軽々しく話すワケにはいかんかったんじゃい」
「オークの里に……」
「サーニス公達を信用してないワケではないんじゃい。しかし里のオークの暮らしにも関わる以上、ワシが一番に話すべきはやはりリノンちゃんとデゼル司祭だとそう思ったんじゃい……」
うつむきながらそう言ったドナキロに、デゼルがこう言葉を掛けた。
「ドナキロ、キミの考えは私は理解する。自分の里を何よりも大事にするというのは、心ある者としては至極当然の思いだ」
こーゆー時のデゼルは、ゆったりした口調ながらも手前の言葉をカッチリと言い切る。
日々迷いを持って礼拝に来る人達を相手にしてるデゼルは、そーすることを良しと自分で決めてるんだってさ。
「キミが感じている後ろめたさは、キミが心優しい者であることの証。意思を持つ生き物は自らの意思を自らが決定せねばならない責務もまた持つ……だからその決定に伴う心の苦しみは、いつかキミの心をより強く輝かせる糧へと変化をしてくれる原石なのだ」
相手の悩みに答えを出したりするのとはまた違う。
ただ悩みに揺れる相手の心を正す芯になるよーな言葉を、しっかりとした口調で伝えてやることを大事と――手前の意思でそー決めてるんだ。
「デ、デゼル司祭……。ありがとうなんじゃい……」
うつむいて沈みがちだったドナキロの目が、ゆっくりと元の力を取り戻していってるのがあーしにも分かった。
……これなんだよなぁ。この、迷いを持つ者に救いの言葉を掛けてやるには掛ける手前に迷いがあっちゃいけないっていう、確固とした気持ち。
これを持ってるのがデゼルの凄いところなんだよ。ホント、素直に憧れちまうわ。
迷いが軽くなったドナキロは、ちゃんとあーしらの顔を見て話をするよーになった。
――(3)につづく!――
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