#14 これが聖女のマジバトル!(6)
闇さえ友達にしていく。
出来るんです。そう、リノンならね!
「やったぞ、リノンちゃんーーー!!」
あはっ、ドナキロのヤローめっちゃ喜んでる。
「おうっ、信じてくれてサンキューなっ!」
……相手の力を受け切って、見届けて、その上でそれを超える力で撥ね返す。
普通に戦闘るよりもしんどいけど、でもそれがあーしが聖女として、相手と本気で向き合いたいと覚悟決めた時にやる戦い方なんだ。
そーすることで相手は撥ね返された自分の力と共に、その力に乗せた手前の思いを省みる……。
省みるったって、別にそれで改心させよーとかそんな大それたことは思っちゃいねーけどさ。
ただソイツ自身にとって、それがほんの少しでも前向きな何かを掴むきっかけになればそれで良いんだ。
誰にでも意思ってもんがある以上、最低限、手前の道は手前でしっかりと決めて進んでるんだって、そー思えば少なくとも充実感は出るだろ?
ニホンでのあーしが、そーだったから。
あーしはさ。凄え力を振りかざして、それで周りからちやほやされて悦ぶよーな女じゃねえもん。
だってマジでイケてる、ギャル聖女だかんな。へへっ。
…… 螺旋嶺華に飲み込まれた後のエルギアドは、もう立ってるのもやっとって状態だった。
いや、立ってるだけでも凄えんだ。
けど戦った以上、勝負の結末ははっきりさせなきゃいけない。
「あーしの勝ちだな、エルギアド」
あーしは真っ直ぐにヤツを見てそー告げる。
さあ、戦い終わって今お前の心はどうなんだ?
エルギアドの目は、それでも死んではいねえ。悔しそうな顔で、けど負けは受け入れて、あーしを正面に見据えてる。
「聖女でありながら闇を味方に付けてみせたか……。キミはいったい何者なんだ」
「あーしか? ……少なくともニホンじゃただの女子高生だったよ。楽しいこともムカつくこともそれなりに有った、ごく普通の女子高生」
改めて言うのはなんか照れ臭いから、つい髪をいじりながら答えちまった。
「けどあーしは、そのただの女子高生であることに手抜きはしなかったぜ。明るく騒ぐのもネチっこく誰かにムカつくのも、その場の勢いでやってたにせよ、それでもいつも本気だった」
「……勢い任せだというのに本気、か。その言葉には矛盾を感じるが、しかし……」
「しかし、なんだよ?」
エルギアドは次の言葉を、悔しさはそのままな――けどそんなに悪くねー笑顔で言った。
「……確かな情熱を感じるよ、ふふっ」
「……サンキュー」
今ほんの少しだけだけど、エルギアドと心が通じたって感じるわ。
コイツとは敵同士だけど、それでも……いや、それだからこその通じ方ってゆーのかな。
……あーしに教えるつもりで闇魔法を撃ってくれたことも、今はなんとなく分かるぜ。
あーしはここで、姫さまと顔を見合わせる。
「さあ姫さま、この後どーします?」
微笑みながらそう聞く。エルギアドへの煽りとか、姫さまを焚きつけるとかじゃねー。
今ならきっと姫さまも、地に足付けて考えられるっていう確信が有ったから聞いてるんだぜ。
姫さまはゆっくりと前に出た。
「……エルギアド。この城の姫として、貴方の暴挙を許すことは出来ません」
真剣な表情でヤツを見て、そー告げた姫さま。
エルギアドは少しの間だけ寂しいって顔をしたけど、でもその後で優しげに微笑んだ。
「……キミは僕とは道を違えた。けどどうしてだろうね、不思議と今は悪くない気持ちなんだ」
「私も、ですわ」
姫さまもこれまでの気丈な感じとは違う、慈愛を感じさせる微笑みを見せてた。
「レティシア……。ここからは僕らは敵同士、だけどそれでも、次に逢う時を楽しみにしているよ」
エルギアドはそう言いながら、衣の懐から何かを投げた。
瞬間ヤツの周りに黒く濃いモヤが出てきて、それが晴れた時にはヤツはもう居なくなってた。
「アイツ、逃げやがったか。まったく元気なヤツだぜ」
「そう来ることは予測してましたわ、彼の目は……まだ自身の理想に燃えていましたから。急いで捕まえようとしたところで、結果は同じだったでしょう」
姫さまは軽く息を吐いてそー言った。
そして、あーしへと向き直る。
「……有り難う御座います、聖女様。貴女が彼の本気を見させてくださったことで、私も己を見つめ直し心を新たに出来ましたわ。お陰で私も、私の道を一歩前へと進められます」
その言葉の中で、あーしに深々と会釈までしてくれた。
姫さまの目にもまた、自分の決意の光が宿っていたんだ。
「へへっ。あ、こーゆー時に合う言葉はあーしも知ってますよ。『聖女冥利に尽きます』……どーすか?」
姫さまは苦笑する。
「ふふっ。確かに意味は合ってらっしゃるのですが、なんとなーく、カタくって聖女様には似合わないかなと思いますわ」
「ええー、マジでー」
姫さまは今度は自然な笑顔を見せてくれた。
でもって。自分の意思で、早速倒れてる人らをなんとかしよーと動き始めたんだ。
「ほらダンタリアス起きなさい。貴方は闇魔法に冒された訳ではないでしょう? 起きて他の者達を救助するのです」
本当に頼もしーな、レティシア姫さま。
これならまた何かとんでもないことが起きたとしても、ありがたくこの城の力を貸して貰えそーだ。
さてと、あーしももーひと仕事だ。今度こそ周りの人らを黒いモヤから回復させてやんよ。
※
……それからあーし達は、戻ってきたサーニス公の話を聞いた。
やっぱり魔物の守り神の封印を解く鍵は奪われちまったらしい。
けどサーニス公は代わりに、奪ったヤツの手掛かりを掴んでくれてた。
それから、更に別の情報をドナキロが教えてくれたんだ。
「……リノンちゃん。魔物の守り神の封印されとる本体じゃが、ワシには心当たりがあるんじゃい」
「えっ……。な、なんだってえーーー!?」
――#14 おわり!――
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