#14 これが聖女のマジバトル!(2)
事態が動く中、皆がリアルタイムに判断して行動してます!
「サーニス公、腕で豪快に涙を拭いてたんじゃい」
ドナキロが感動で声が震えてるって感じでそー呟いてた。へへっ、あーしもちょっとだけジーンときちゃったかな。
姫さまはそんなあーしにも、気合いが入る言葉を言ってくれた。
「さあ聖女様、改めて私の意思は貴女に預けますわ。……それで良いのですわよね?」
深く心に問い正してくるその言葉。ハンパな返事は出来ねー重みのある言葉。
けどそれが良いぜ。友達との本気のやりとりは、そーでなくっちゃな!
「当たり前っしょ! この戦闘は姫さまとコイツの心の戦いを、最後までやり切る為のもんなんすからねっ!!」
姫さまとエルギアド、直接傷つけ合うには幾らなんでもまだ早いから。
「聖女様……。有り難う御座います。あの場で貴女が前に出てくださらなければ、私とエルギアドの戦いはただ心に哀しみを背負うだけのものとなっていたでしょう」
……へへっ。姫さま、やっぱあーしとのアイコンタクトで分かってくれてたんだな。
「心の何処かでブレーキ掛けながら戦闘してもきっと苦しいだろうなって、そー感じたんすよ。けどあーしが相手なら、コイツだって手加減無しで仕掛けてこれるでしょーからねっ」
あーしはそー言って、目の前のヤツに挑発的に言ってやった。
さっきからあーしに『コイツ』呼ばわりされてるままのエルギアド。
けどこのヤローだって、ただ黙ってこっちのやりとりに気圧されてたワケじゃねえんだ。
「……予測の付かない事が多く起きたけど、そういう出来事もしっかり見ていかねばならないのかもね。例えそれが自分の理想の外で起きたことだとしても」
静かな口調だ。けどその表情から、さっきまでよりもヤツの真剣さが増してるのが分かる。
「レティシア、それにサーニス公……二人が和解するのならそれはそれで良い。その絆も含めて、僕はこのフェイロード城に戦いを挑む!」
自分一人だけが蚊帳の外……けどそんなことさえも受け止めて、コイツはやる気なんだ。
「エルギアド、闇魔法を使ってこいよ。お前の本気を見せてみろ」
あーしはそう言いながら自分の魔力を集中させた。
ヤツもこっちをきっと睨みつけながら、魔力のオーラを高めてきてる。
「リクエストに応えたい所だが、闇魔法は魔力の制御が難しくてね。加減を間違えばとんでもないことになる、だから使う魔法の配分はあくまで僕が自分で決める」
「そーかよ、そーゆーところはお前クールなんだな」
「そういうキミも中々だ。勢い良く攻めてくるのかと思えば、初手で防御魔法を使ってくるとは」
「へっ、あーしがそんな力に物言わせるよーな女に見えんのかよ。適度にガードが固く、アクション起こす時は軽やかに……それがあーしのウリなのさ」
あーしの後ろのドナキロが喋る。
「そういえばワシと戦った時も、リノンちゃんは最初に防御魔法を掛けてワシの攻撃を防いだんじゃい」
へへっ、そーだったな。今となっちゃ懐かしいぜ。
エルギアドが杖を向けて二度目の攻撃を仕掛けてくる。
「ではこんなものはどうかな、ファリシアの聖女よ!」
最初の火炎魔法より更に魔力のオーラを練り上げて、新しい魔法を撃ってきたっ。
「蛮骨一閃!」
けどヤツの杖からはオーラがビュッと飛んで散り散りになっただけで、それ以外には何も出てこない。
「……はあ?」
いや、ちょっと待て!?
あーしはとっさにベルサレェトを構える。
――あーしの足元の床から突然青白いオーラが立ち上ってきた。
かと思えば、そのオーラは形を変えて骸骨の姿になりやがった!
骸骨はその手に持った剣で、あーしに斬りつけてくる!
「おわっ!」
あ、あぶねーっ!! なんとかベルサレェトで受け止められたけど、もうちょっと反応が遅けりゃ肩からスパァーンてぶった斬られるトコだったわっ!
剣を止められたガイコツ野郎は、空洞になってる目の部分から謎の赤い光をピカーンとさせやがった。
「うおっ、怖ぁっ!?」
いやいやいや、こんなんもーちょっとしたホラーじゃんかっ!
ガイコツ野郎はあーしを怖がらせるだけ怖がらせて、そのままスゥッと消えていく。
「んだよっ、何も無えのかよ! じゃあ最後のピカーンは完全にただの嫌がらせじゃねーかっ!」
焦って心臓バクバクになった分余計にイラッときたぜ。このままカウンター決めてやんよ!!
「絢爛!」
エルギアドに向けて、高速で光の玉を飛ばしてやる!
この光の玉はギュッと詰まったあーしの攻撃魔力! 相手に飛んでって爆発を起こすんだぜ!
エルギアドの方はさっきの魔法を使ったばかりだから、防御が追いついてないっ!
「くおっ!!」
光の玉はヤツの左肩に命中して、爆音を上げた!
「どうだっ!」
前にドナキロと戦った時、一発でアイツを沈めた高威力の爆発魔法――絢爛。
これでエルギアドも終わりか?
爆発の光が収まる……。
その中から、左肩周辺の衣が破け肌から血を流すエルギアドの姿が見えた。
意識を失うまではいってない。険しい顔であーしを睨んできてやがる。
やっぱ倒すまではいかなかったか。魔法を扱うヤツはそもそも素の魔法防御力も高めなんだ。
あーしの場合はそれにプラスして防護魔法を掛けてるってワケ。
――って、そんなことよりもあーしには言いてーことがあるっ!
「エルギアド、テメーっ! いきなり系統違い過ぎな攻撃してきてんじゃねーよっ! 今のガイコツ野郎もう一回呼んでこい、アイツ今度はぶっ飛ばしてやるぜっ!!」
あのガイコツ、マジでビビったんだからなっ。急に出てくるわ目ぇピカーンさせるわ!
一発やり返してやらねーと気持ちが収まんねーよっ!
「ふん。ぶっ飛ばしたとしても、呼べばまた別の蛮骨が来るぞ」
「んだよそれ、やらしーな! てかあんなホラーな雰囲気出してた癖に、あのガイコツ野郎闇魔法じゃねーのかよっ!」
「ああ違うね。アレは魔法の中でも戦闘使用に特化した、勇壮系魔法というものさ」
「あんな怖い見た目なのに勇壮系なのぉ!?」
あーしの驚きように、ドナキロとレティシア姫さまからフォローの説明が入る。
「リノンちゃん、ゼルトユニアでは骸骨は必ずしも恐怖を連想させる対象とは限らんのじゃい」
「特に戦場や冒険の地で見つかる骸骨の場合、最後まで戦い抜いたその勇気を称えられたりもするのですわ。それ故に勇壮なのです」
「そ、そーなんだ……」
ガイコツでも勇壮、勇壮で目ぇピカーン……。
けど二人共確かに、怖がってるって感じとかホントにねーもんな。
さ、流石異世界っていったトコか。剣と魔法と魔物が当たり前に存在してるんだから、それにちなんだ価値観ってもんが出来上がるんだな。
エルギアドが痛そーに肩を押さえながら、あーしに話しかけてくる。
「それにしてもファリシアの聖女よ、キミは咄嗟の判断力にも優れているようだね。あの蛮骨の一撃を見事防ぐとは」
「あぁん! んだよ褒めてみせたって飴玉とかやんねーぞ!」
「いや、飴玉は要らない。ただ素直にキミの能力の高さに驚いただけさ、今の反応の良さは魔力とは関係が無いからね」
なんか冷静な感じだな。てっきりもっと悔しがってくると思ったんだけど。
「ホントに演技とかじゃねーのか? 下手に出て回復魔法で肩の傷を治して貰おー、とかでもなく?」
「ふっ、そんな下卑たことは考えていないさ。それに魔道士である僕は魔法を使う際に必要な集中力も鍛えている、それを応用すれば傷の痛みに耐えることだって不可能じゃあ無いんでね」
「ふ、ふーん……」
流石に、その辺は覚悟が決まってやがんだな。
……ところでごめん。最初の方の下卑たって、どーゆー意味?
――(3)につづく!――
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