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#13 アブナイ女とアブナイ男!(3)

父であるサーニス公に対し、やっぱり言うことは言う姫様です。

「ちょっと姫さまっ。この人らだって姫さまのこと心配して言ってんだから、そんなにまでキレなくたっていーっしょ!!」


「聖女様は今日初めて父達とお会いになられたから、そのように言えるのですわっ。けれど私は毎日毎日っ、この鈍感な二人の相手をさせられているのですわよっ!」


 注意したあーしにまでテンション変えずにキレ散らかすレティシア姫さま。


 た、確かにそー言われたらちょっと言い返しにくいけどさぁ……。


 あーしも学校の()な先生とかの何が嫌って、『あー明日もあのムカつく先生の顔見なきゃいけねーのかー』って日々思わされることだったもんなー。


 いやあれはもーホント()()()()気分だったわ……って今そんなこと言ってる場合じゃねー!


「レティシアぁ、ぐすん……」


「あーもーサーニス公! ほらこの飴でも舐めて落ち着きなって!」


 急いで泣き顔のサーニス公に駆け寄って、ポケットに入れてた飴玉を取り出す。


「ほら口開けて。あーんってして」


「……あーん。あむあむ」


 サーニス公はあーしの言葉に素直に従って口を開けた。


 いーね。あそこに居る変に尖った若いヤツなんかより、こーゆー(かど)の取れた丸い反応してくれるおっさんの方がよっぽど可愛げがあるってもんだぜ、へへっ。


「……うむ、心安らぐ甘さだ。ありがとうございます聖女様、貴女の飴のお陰で冷静さを取り戻すことが出来ましたぞ、あむあむ」


「そっすかー、良かったっすー」


 まあその飴、この城に有ったのをそのまま持ってきただけなんだけどなっ。


 とりあえずサーニス公だけでも助けられて良かったぜ。回復魔法よりも飴玉の方が役に立ったってのは、ちょっとばかし複雑な気分だけど。


「エルギアド! 黙りこくってばかりいないで何かお話しになったらどうですの!」


 姫さまのヤツ、もうこっちのことは完全に無視(スルー)してやがる。自分の親父が他所(よそ)んちの娘に飴玉食わせて貰ってんだぞ、普通こっち向くだろ。


「なんつーか姫さま、マジでエルギアドしか目に入ってねーって感じだ。まさかここまでとはな」


「あむあむ、前にエルギアドを捕らえようとした時も、あの子はあのように一心不乱だったのです、あむ。一体何がレティシアをあそこまでにさせるのでしょうか……あむ」


 だから恋だっつーの。でも今はそれを細かく説明してるヒマは()え。


 そーこーしてる内に、ようやくエルギアドが姫さまにしゃべり始めた。


「その闇のモヤはね、僕とこの城の人達とで無益な争いをしなくて良いようにと思って出したものなんだ。今は苦しめてしまっているけど、ちゃんと命に別状は無いようにモヤの強さを調整してある」


 コイツは床に倒れてる人達を見ながら、落ち着いた感じでそー言った。


 ……気に入らねえな。それでもお前が苦しめてることに変わりはねえだろーが。


 あーしはエルギアドの言い分にムカついたけど、姫さまはあーしよりもまだ冷静な感じでヤツに言葉を投げかける。


「通路に飛んでいたあのコウモリくん達も、そういう目的で放ったのですか?」


 そっか、アイツらも居たな。確かにあのコウモリ達は城中混乱させはしてるけど、城の人らを大きく傷つけるまではしてねー。


「その通りさ、レティシア。僕はこのファイロード城と(たもと)()かったけど、城の皆のことは今でも思ってる」


 エルギアドは真面目にそー答えてる。


 見えすいたウソって感じじゃねー。コイツは本気(マジ)にそー思ってやがるんだ。


 けど……。


「被害の大小ではないんじゃい。それを言い分に自分の行動を正当化しようとするその心が危険なんじゃい」


 ドナキロがあーしに代わって言ってくれた。そーだよ、あーしもそー感じてた。


『皆のことを思って。皆の(ため)を思って』……口でそー言ってたって、実際に相手のことをやり込めようとしてるならそれは悪いことになるんだぜ。


「オーク族に説教をされるなんてね。でも僕には大儀がある、大義を貫くには危険は付いて回るものさ」


 エルギアドのこの言葉……。ダメだ、コイツは話して分かるヤツじゃねえ。


 コイツを幽閉しようとしたサーニス公は正しかったんだ。


「エルギアドめ、すっかり己の思想に飲まれてしまいおって。……あむあむ」


 サーニス公が苦い顔をしながら甘い飴玉を()めてる。……そ、それって一応気持ちを中和出来てるってことでいーのかな?


「ぬぅ。エルなんとかというヤツ、まるで自分自身のことは見えてないように感じるんじゃい」


 ドナキロがそう言って見構えたのを、姫さまが制した。


「従者ドナキロ、あまり彼を非難しないであげてくださいませ。彼は、エルギアドはその、肝心なところでつい()()()()()()なってしまうだけなのですわ」


 いやそれもう致命傷だろ……。


 でもやっぱあれかな。あーゆーダメな部分も持ってる男の方が、姫さまみたいに気丈な女からしたら逆に『なんとかしてあげたい』って思っちまうもんなのか。


 実際、姫さまは今ドナキロよりも一歩前に出てる。


 けど考えなしに好きってだけで、エルギアドと近い距離に居るワケじゃねー。


 その手に兵士からひったくった剣をしっかりと握って、ヤツに向けて構えてるんだ。


『なんとかしたい』、いや『今度こそなんとかしたい』っていうその気持ちが、本気(マジ)のものとして伝わってきてんのさ。


 ――(4)につづく!――

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