#13 アブナイ女とアブナイ男!(2)
ドタバタ城内、ハラハラ姫様!
姫さまを先頭に、あーしとドナキロもようやく謁見の間に到着した。
だけど中は結構な荒れっぷりで、姫さまは見るなり「なんてこと!?」って叫んでた。
だって家来の皆が床に倒れてるんだから、そりゃしょーがねーよ。
それになんか皆、体が黒いモヤモヤした煙みてーなのに包まれてるし。一体なんなんだよ、これは?
無事に立ってるのはサーニス公とダンタリアスおっさんの二人。……と、それともう一人。いかにも黒衣の魔道士って見た目した、あーしが初めて見る男だ。
「レティシア! お前は来てはならんぞっ!」
サーニス公が心配そうな表情で姫さまにそう叫ぶ。
けど姫さまはサーニス公の方はまったく見ねーで、黒衣――艶のあるまさしく漆黒色した衣の男に向けて話し始めちまう。
「エルギアド、今更いったい何をしにここにやって来たのですかっ!」
やっぱりソイツがエルギアドか。
フードは下がってたから顔が見えた。
漆黒のローブには映える、濃いブラウンの髪。
あーしよりほんのちょっと背が高くて、魔道士だからか細身だ。それでも目つきには活力ってヤツがみなぎってるから、弱々しい感じはまったくしねえ。
手にはあーしの煌綺妙杖程派手じゃねーが、カッチリした渋みのある魔法の杖を持ってる。
ただ顔が良いってだけのヤツじゃねえ。確かにコイツは内側からイケメンのオーラが出てやがるぜ。
「……」
だけど姫さまが悲痛な顔で話しかけてるってのに、エルギアドのヤツは黙りこくってる。
おいお前。すました顔ばっかしてねーで、姫さまに対して色々と言うことがあるんじゃねーのか?
「うおおっ、我が娘レティシアよおっ!? 私の言葉は無視するとはっ、ま、まだ私のことを怒っておるのかのおおおっ!!」
見ろ、サーニス公をよー。こんなうるせー位姫さまに話しかけたんだぞ。
「こ、これっ聖女様っ!」
――ん、このしわがれ気味なおっさんの声は。
なんだよ、あーしにはダンタリアスおっさんが話しかけてくるのかよ。この人なんか嫌なんだよなー。
「折角この場に駆けつけてくれたのなら、まずは倒れている者達をなんとかしてくれんかあっ!」
あ、でも思ったよりも良い内容だった。確かにこの人達のことも放っちゃおけねーもんな。
「わ、分っかりましたん。とりあえずその黒いモヤモヤがなんなのか見てみるっす!」
聖女としてぶっ倒れてるヤツをそのままには出来ねー。ここはおっさんの言葉に同意するぜ。
「ドナキロ、お前は姫さまの近くに付いといてくれ」
「分かったんじゃい」
ドナキロにそー指示を出しつつ、一番近くのヤツに駆け寄って手をかざす。顔色悪く、うーうーと呻いちまってる。
モヤモヤから、例のネチョネチョした感じを強く受ける。……これが闇の魔力ってヤツなんだな。実際に見るのは初めてだけど、なんとなく分かるぜ。
コイツが倒れてるヤツから力を吸い取ってるってんなら――。
「治癒!」
回復魔法を使ってみたけど効果が薄い。てかこのモヤモヤに回復の魔力がかき消されてるみてーだ。
倒れてるヤツの顔色はずっと悪いままで、これじゃラチがあかねー。
ちっ、このモヤモヤかなり厄介だ。
「あのエルギアドは入ってくるなり、この黒いモヤを謁見の間に充満させおった。ワシとサーニス公はなんとか跳ね除けられたが、他の者はモヤに飲まれてしまいこの様子なのだ」
おっさんの説明によると、どーやらこのモヤモヤが効くヤツと効かないヤツとで分かれるらしいな……。
くそ、ここにデゼルが居てくれたら何か分かったかもしれねーけど。
イラつきながらそう思ってると、なんとエルギアドの野郎があーしに話しかけてきやがった。
「キミがファリシアの聖女だね、今日この城に来ていたのは知ってるよ。……それは僕が不眠不休で頑張って、やっとのことで習得した闇魔法さ。幾ら聖女とて通常の回復魔法などは軽く遠ざけてしまうよ、ふふふ」
イケメン声で勝ち誇るよーにそう言ってくるエルギアド。うっぜえなコイツ、イライラが増してくるぜ。
「うっせーぞテメー。徹夜したことならあーしだってあるんだよっ!」
もっともそりゃニホンで遊びまくってた時のことだけど、何か言い返してやんなきゃ気が収まらねー。
「オール? ああ徹夜のことか。僕はニホンの言葉だって少しは勉強して――」
エルギアドが自信たっぷりな感じでそー言いかけたけど――
「エルギアド! この私を無視して先に違う女に話し掛けるとはどういうことですのっ!!」
――レティシア姫さまが尋常じゃねえ怒りのトーンで文句を差し込んできて、ヤツの言葉を完全に遮っちまった。
「レティシア……」
これには流石にエルギアドも気圧された感じになる。
いや、これは実際に見てみると一発で姫さまが惚れてるの分かるわ。ヤキモチの焼き加減がハンパねーじゃんか。
だけどサーニス公とダンタリアスおっさんは、これまたまさかの反応を見せてきやがる。
「うおおおっ、レ、レティシアよおっ。そんな唐突に怒り出してしまうとは、やはり私のことで日頃ストレスを溜めているからなのかのぅっ!?」
「姫さまぁっ! このダンタリアスがサーニス公に代わって、姫さまのお怒りを受けさせていただきますぅ! どうか、どうかこのダンタリアスの顔を踏んでくださりませぇっ!!」
うわぁ……。マジか、コイツら姫さまの恋心をカケラも分かってねぇじゃねーか!
姫さまがエルギアドを好きだって言ったから頭で知っただけで、実際の心の熱に関してはまったく理解してやがらねぇんだ。
あ、やべっ。姫さまが肩プルプル震わせだしてるっ!?
「やかましいですわよそこの二人っ! まったく、口を開いた分だけ邪魔になるというもの――それならばそこで黙っていてくださいませっ!!」
「レ、レティシアぁっ!?」
「姫さまぁ!? ……お、おぅふ……」
ぎゃあっ! これはさっき通路でも見た、姫さまの魂の叫び!
姫さまのあまりのブチギレように、サーニス公はホントにブワッと泣き出しちまったし、ダンタリアスおっさんの方はショックで気絶しちまったーっ!?
二人ともこの闇のモヤモヤの中でもまったく平気だったのにぃー!!
「レ、レティシア……」
あ、エルギアドまでちょっと引いてる。額から汗タラしちゃってんじゃん。
――(3)につづく!――
リノンの魅力にご興味頂けたなら、⬇︎にあるブックマーク登録と評価をよろしくお願いします!




