#12 タテマエの上にノリを乗せればウマイ!(3)
リノンは結構聞き上手でもあります。
良い雰囲気。そんな中、姫さまがふと思い立ったよーに話を切り出す。
「……聖女様。逆に私から貴女にひとつ、質問して良いですか?」
おー、良いぜ。断る理由なんて無いだろ。
「聖女様は一体どのような男性を格好良いと思われますか?」
いきなり男の話題かー。姫さまこーゆーところはやっぱ思い込み強いんだろーな。
「そーだな。……あーし自身は考えたこと無いすね。格好良いヤツってのは普段他人と同じことをやってても格好良いもんですし。寧ろ何が格好良いかは、見る側が決められるもんじゃねーのかも」
割とマジであーしはそーゆー風に思うんだよな。
「……つまりはその人次第、ということですか」
「まあそーゆーことっすね」
「聖女様が仰ることはつまり、所謂容姿が良ければよい――ということでしょうか?」
「容姿すか? それとは違いますね。容姿が良いのと格好良いのとは全く別もんっすよ」
ここにはあーしと姫さまの女二人しか居ねーかんな。ぶっちゃけトークしたって何も構うことはねー。
「容姿の良し悪しってはあくまで、こっちがその相手を見て楽しめるかどーかって為のもんじゃないすか。はっきり言えば見る側の都合の問題っす」
「それは、そうですけれど……」
「逆に格好良さってのは、格好良いソイツ自身の為にあるもんなんすよ。ソイツが手前の意思でやってること、やり通したことに対して、それを見た側が心から褒めてやるのに必要な言葉っていうか。――分かりますかね?」
例えばドナキロと出会った時で言うならこーだ。
最初はアイツのこと、礼拝堂で暴れて凄えメーワクな野郎だって思ったけど……。
でもアイツが言った『オークが神に祈ってはいけないって、一体誰が決めたんじゃい』っていうあのセリフを聞いて、あーしのアイツへの印象はその場で変わったんだ。
まだ会って間もない状況だったにも関わらず。アイツがどんなヤツかもろくに知らなかったにも関わらずな。
あの時のドナキロの真剣な表情は、魔物だろーが文句無しに格好良くて。
その格好良さに、上っ面だけで見てたあーしは黙ったんだ。
「多分姫さまはあのオークのドナキロに対して、ただのデケェ筋肉野郎って位にしか感じてなかったでしょうけど。でもあーしはアイツの格好良さを知ってるし、アイツがあーしに付いてきてくれてるのを凄え自慢に思ってます。――けど、アイツの何が格好良いか言葉で説明しろって言われたら、それはあーしには無理なんすよ」
あーしは静かな感じでそー語る。
「なんで格好良いのか言葉に出来ない。でもそれ位だからこそ、強く惹かれるんすよ」
「……聖女様があの従者さんに強く思い入れしてらっしゃることは、私も言葉で伝えられていなくとも分かりましたわ。言葉では測れない――格好良さとはそういうものだというのですね」
「ええ。きっと他人から見たら問題児でも、姫さまにとっちゃあ格好良い……。そんなヤツだって居るんじゃないすかね」
「私にとっての、格好良い人……」
姫さまは思いつめた表情でそう呟く。
……繋がるところに繋がったな。
狙わずにそーなった部分もあるけど、会話ってのは流れに乗りながら上手く進めるもんだからさ。
「私には分からないのですわ。その、自分が本当にその人を格好良いと思っているのかどうかが」
「そーなんすか?」
「はい。――彼は確かに優秀で思慮深くて、その考えごとをしている時の表情に、私の目はつい吸い寄せられてしまうのです」
こーゆー時は、優しく話を聞いてやんなきゃダメだ。
なるべくあーしの主観を入れないよーにしながら、姫さまのエルギアドへの気持ちを話させてやんなきゃいけない。
「それってやっぱり、ソイツが気になってるんじゃないのかな?」
「けれど彼はその、それでいてちょっと抜けているところもあるというか……。端的に言うと、えと、少々というかかなり間が悪いのですわ……」
「へえ。例えば、どんな風に?」
「そうですね――」
姫さまが続きを喋り出そうとした。
けどその時……。
ドッカァァンッ――!
……遠くから爆発音が響いてきやがったんだ。
「きゃっ!?」
「な、なんだぁ!?」
この爆発って、もしかして魔法か? 魔力の波長ってヤツを感じるぞ!
それも、なんかこう……!
「なんか、めっちゃネチョネチョした魔力の波長がするんすけどーっ!」
「それは、まさか! ――ああ、本当にもう間の悪いっ!!」
姫さまはそう叫んで、テーブルに置いてた本を取ってページをめくり出した。
部屋の外からはドナキロの叫び声が聞こえてくるっ。
「リノンちゃん、今の爆発で城の外の壁に穴が空いたんじゃい! ここから下の階、謁見の間があった辺りかもしれんのじゃい!」
「なんだとぉっ!?」
今度は姫さまが開いた本を見せてくる。
「これ、実は魔道士についての基礎情報が書かれた本なのです。この内容によると今日は、エルギアドの魔力が色々あって高まる日らしいのですわ!」
「色々あって高まる日ぃ!? なんだよ色々って! てか姫さま、もーエルギアドって名前出しちまうのなっ!!」
いきなりの展開についタメ語になっちまったけど、これはもーしょーがねーだろー!
「何ページにもまたがって書かれていることを、この非常時に事細かく話せる筈ありませんわっ! それに彼が実際にこの城に来てしまっているのだとしたら、何よりも急いで駆けつけなければなりませんものっ!!」
姫さまがめっちゃくちゃ必死な顔になってる。んだよ、この短時間にマジに色んな顔見れんじゃん……。
とにかく。
このネチョネチョした、闇っぽい魔力の波長。それに色々あって高まってるらしいエルギアド――。
そーだな。その可能性がある以上、もーここでうだうだやってるワケにはいかないか。
「聖女様、私は行きますわ。……その、貴女としては本当はエルギアドのことを、もっと詳しくお聞きになりたかったのでしょうけど……」
ドアの取手を持ちながら、姫さまはあーしにそう言ってきた。
その表情からは本物の気遣いってヤツが感じられる。
それと同時に、年頃の女らしいいじらしさもな。
「エルギアドに会ったらどーするつもりなんすか?」
「それは分かりません。分かりませんけど、とにかく私は行かねばならないのです!」
まったく理由になってない必死の答え。
必死過ぎて危なっかしくて……けどちょっぴり懐かしいと思う感じもして。あーしはつい、微笑んじまった。
「ちっ、しゃーねーな。――あーしも行きますよ。展開次第じゃあこの先、あーしと姫さまは敵同士かもしれねーっすね」
「そうですか。――けどそれならそれで、別に構いませんわ。聖女様とは何故か、どんなケンカをしたってきっと楽しいという予感がしますから」
皮肉か、本気か、友情か。どれかは分かんねーけどさ。
姫さまのその言葉には、あーしに対する友達としての熱い気持ちがこもってたんだ。
いーぜ。友達同士で本気でバトるってのも、それはそれで悪くねー!
「あはっ。言ってくれるじゃねーですか、あーしも丁度同じこと思ってましたよ」
「ふふっ。じゃあ先ずは、どちらが目標の所に辿り着くか競争しましょう。ではよーいドンッですわ!」
「あっ、きったねーな。せめて二人共ドアの外に出てからスタートにしろよっ!」
勢いよくドアを開けてそのままスタートダッシュかました姫さまに届くよーに、大声で文句を言ってやった。
そんでとにかく急いで外に出る。
心配そーな顔したドナキロがぬっと顔出してきたからぶつかりそーになったぜ。
「リノンちゃん、いったい何がどうなっとるんじゃい!?」
「説明は後だ、下の階に急ぐぞドナキロ!」
「お、おうなんじゃいっ!」
なんかめちゃくちゃな状況になってきたが、こーなったらとことんノリでなんとかしてやんよっ!
――#12 おわり!――
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