#12 タテマエの上にノリを乗せればウマイ!(1)
リノンの会話術は、皆さんが異性を口説く時の参考になる……かどうかは分かりません。笑
一国の姫との一発トーク。ミスるワケにはいかねー。
だからこそ焦ったらダメだ。男が女を口説くのに必要な位の慎重さでいくぜ。
あーしはとりあえず、姫さまの話し方や仕草とかをもっと見て姫さまのことを知りてえ。
その為には、まずお近づきの印ってヤツを見せるか。
「姫さまは剣の訓練もするんすよね? あーしサーニス公にスタミナアップの回復薬なんかも渡してるんで、良かったら使ってくださいね」
にかっと笑顔で姫さまに言う。けどアンタの反応ひとつひとつを見逃しゃしねーかんな。
「はい、そうさせて頂きますわ」
レティシア姫さまは微笑みながらそー返してきた。一見、柔らかい雰囲気だ。
けどあーしには姫さまが、意図的に『ありがとう』とかの礼の言葉を抜いてるよーに感じられる。
あーしに対してうっすら心の壁を作ってやがんだなってのが、分かるんだよな。
『気持ちだけ受け取っておくね』みてーな、そーゆー当たり障りない拒絶の仕方。あまりにも自然に決めてくるもんだから、腹も立たねー。
仮に心の弱い男だったら、この時点で心折れちまうかもしんねーけど。
「姫さまはやっぱり剣捌きもお上手なんすか?」
女のやんわり拒否ってのは、ぶっちゃけ呼吸みてーなもんだ。だからそんなんは気にするだけムダってもんだぜ。
「そんなことはありません。私の力量など、ただ型通りに剣が振れるという程度ですのよ」
ふーん。謙遜かどーかは知らねーけど。
「それでも凄いと思いますよ。あーしにはぜってー振り回すとか出来ねーでしょーから」
ゼルトユニアに転移して初めて知ったんだけど、剣って結構重たいんだよなー。
前に街でぶっ飛ばした悪党が持ってた剣を、何気なく拾ったことがあんだけどさ。その時は『うわ重』つって速攻捨てたわ。
そんなことを思い出しててら、姫さまがなんかキョーミありそーな顔であーしの方を見てた。
「そうですか。……聖女様は女が剣を振ることに対して、特別視などはされないのですね?」
特別視?
「ゼルトユニアじゃ別にフツーのことなんじゃないんすか? 女の冒険者とかも結構居てガシガシ戦ってるって聞いてますよ?」
「そうですけれど。ただニホンから来訪される方の多くは、武器を持って戦う女に対して、男のそれとは比較にならない程興奮して目を輝かせますので」
あー、そーゆー意味か。
「それは多分、ニホンのスマホゲームでそーゆー女キャラが多いからすね。レアなヤツだとめっちゃ美形で物凄え人気で、場合によっちゃソイツを手に入れる為に結構な金を使うらしいすよ。――でもあーしは別になんも思わねーす。いやもちろん、剣を振ってるレティシア姫さまはカッケーに違いないとは思いますけど」
あーしスマホゲームは全然やんなかったしな。ゲームで課金すんなら自分の服とか買った方が良いって考えだったから。
だいたい今目の前に居るこのレティシア姫さまは、ゲームに出てくるキャラじゃなくて現実の女だし。
まぁ男と女のリアルな性格の傾向的な話なら、そこそこの違いは出るもんだってあーしは知ってるけどさ。
「まぁ剣を振るうとかバトるとかそーゆーのは、単にソイツ自身の取る行動の話だから。相手の性別の違いとかで自分の見る目を変える必要なんて無いでしょ?」
あーしの答えに、姫さまはちょっと驚いたみてーだった。
「ふぅん。そういうお考えですのね」
「もしかして姫さま的には、あーしがきゃーきゃー騒いできた方が良かったすか?」
あーしの言葉に、姫さまは『いいえ、その逆ですわ』と答えてきた。
「正直私は貴女をたまたま異世界転移して力を授かっただけの一般人、という風に思っていました。――ですがいざ貴女のお考えを聞けば私が期待した以上のお答えが返ってきましたので、その視野の深さに感嘆したのでございます」
コ、コイツ。やっぱり本音じゃあーしを格下に見てやがったな……。
まぁそれでもあーしの答えは姫さまの心に響いたし、本音を見せた分心の壁も薄くなったと考えりゃあ流れ的には悪くねーぜ。
それなら次の段階だ。――本題に入ってく為に、外堀から埋めていくぞ。
――(2)につづく!――
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