#10 レティシア姫、のち曇り!(3)
ヒリつくガールズトーク。
しかしリノンは焦りません。
※
姫さまの部屋はきちんと整頓されてて、小洒落た小型の円形テーブルには本が置いてあったりした。
そんでもってふかふかしたベッドに――。
「あ、モフモフ虎野郎くん人形」
「父から頂いた物です。父は私に強い娘であって欲しいと常日頃思っておいでなので、きっと可愛さの中にも仄かな闘争心を感じさせるタイガーくんを選ばれたのですわ」
あーしから聞いたワケでもないのに、姫さまはそう語ってきてくれた。
会話の相手として無言だとか口数が少ねーとかよりは、間が持つ分だいぶマシなんだけどさ。
けどさり気なく会話の主導権を握られてるよーな感じもするから、色々聞きたいと思ってるあーしからしたら正直ちょっと厄介だ。
「そういえばレティシア姫さまは文武両道だって、サーニス公言ってましたよ。凄いっすねー、あーしなんて勉強の方はまるでダメなんで」
いや、頭が悪りーってワケじゃないよ?
ただ勉強することに面白さを見出せなかったってだけでさ。
でも聖女としてのスキル習得はやってて楽しいって思うぜ。
実は今日もあーしのスキルで作ったリノン特製回復薬を、幾つかこの城への手土産としてプレゼントしたからな、ふふん。
「勉強、苦手なのですか? 聖女様はとても利発そうだと見受けますけれど」
姫さまは意外だという顔をあーしに向けてる。
ん、これってフォロー入れてくれてんのかな?
利発ってどーゆー意味だったか、イマイチ分かんねーんだけど。
「さーせん。その利発ってのがもうあーし分かんなくて」
いいや、正直に言っとこ。
呆れられるんだろーなと思ったけど、姫さまは逆にふと笑い掛けてきてくれた。
「利発とは、頭の回転が早く賢いという意味ですわ。知識はともかく、聖女様からはそういった知性を感じるのです」
な、なるほどな?
「先程も、私の奇襲をとっさにお躱しになられましたしね」
……突然悪戯っぽい表情でそー言う姫さま。
その表情に、あーしは半ば強引に気付かされた。
「あー、成程なっ! 利発ってそーゆー機転が利くことも含まれんのかー!」
「ふふっ、私の軽めの皮肉にも動じないその強さも見事です」
姫さまは変わらずイタズラな顔をしてる。
その奇襲ってヤツも今となっては、あーしが聖女かを確かめるだけのもんじゃねー。
相手が誰であれ最初から一発かますつもりだったんだ。アンタの顔からそれが分かるぜ。
けどあーしにとってはそれ位の顔してくれてる方が、寧ろ接し易くていーわ。
ちょいワル、だけどほんのり気の良い女友達。そーゆーのはニホンじゃ当たり前に居たかんな!
「へっ、言ってくれるじゃねーっすか。姫さまこそ、背中から可愛くて獰猛な虎のオーラが、『がおー』って言って目ぇ光らせてますよっ」
中々の強敵だぜ、姫さま……いやレティシア・サーニス。
けどな、その分あーしも楽しくなってきちまったぜ。
これならちょっと荒っぽくイッても、泣き出したりなんかしねーだろっ。
「ふふっ、微笑みながら両手で虎の前足のポーズなんてお立てになって。聖女様はユーモアセンスもお有りですのね……その瞳、まるで知略で獲物の裏をかく狼のようですわ」
「そっすか? でもまあ、あーしは狼野郎くん人形の方を持ってるし、悪りぃ気はしないっすね、へへっ」
良いじゃん、姫さまのテンションもこっちに遠慮なしに上がってきてる。
けどテンションの波長ってのは、大きくなる程何処かに隙も生まれるんだぜ。
その隙を見つけて食らいついて、ぜってー聞き出してやんよ。
虎みてーに力強いアンタがうっかり惚れちまったっていう、闇の魔道士エルギアドのことをな。
――#10 おわり!――
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