#7 創作者とファンのマジトーク!(2)
前回ラストでナナカの性格が急変したかのようでしたね。
でも彼女はあくまで歴としたオトナの仕事人。さてこの後どうなるのか?
「ふふっ、貴女本当に良いよ。これまで出逢ってきた創作者やその関係者、ファンとか全部ひっくるめて、その中でもトップ張れる位にイカれてる!」
「イ、イカれてるぅ――!?」
これには流石にめちゃびっくりしたよ!
めっちゃびっくりしたけど、でもこのナナカの満面の笑顔は決してあーしをバカにしたもんじゃないってことも感じられた。
だってこんなにもめちゃくちゃ楽しそーで、その他の感情なんてまったく入り込む余地がねー笑い方してるんだから。
「あははははっ! ひー、ひー。……う、おえっぷ。ヤバい、笑い過ぎて吐くトコだった」
ほら、こんな吐く位ウケてるんだぜ? こんな派手にリアクションしてくれるって、同世代同士でもそうそうねーよ?
てか、ナナカめっちゃ素じゃん。砕ける方向へのギアの入れ方が超ハイじゃん。
……なんだよーもー、やればめっちゃできるんじゃんナナカー!
「とりあえずさー、レモネード飲みなよ」
ささっとナナカのグラスを取って手渡してやった。
「あーありがと。――ぷはっ」
飲み方もゴーカイだなおい。
「……私があの手紙で貴女を見込んだっていうのは本当よ」
改めて最初の時よりも力強さを感じる、そんなパリッとした表情でラフのナナカがそー語る。
「こちらへの好意を表すのにそれらしい単語をただ並べ立てるなんて全くせず、それなのに滅茶苦茶シンプルな言い回しで、こっちが製作で大事にしてるポイントをやたら的確に突いてくる。『ナナ・クゥは着る本人の可愛さこそが引き立ってます』とか『色んな可愛さのタイプを分かってるナナカさん』とか、まだ会ったこと無いどころか、文章でのやり取りでも初絡みだってのに。……それでいて『あーしはイケてる聖女になりたいんです。その為にナナ・クゥが表現してる可愛さがぜってー要ります!』ってアナタ自身の願望や熱意は、これでもかって位にぶっこんできてた。――だからさ、そんな文を書いてしかも送ってこれるこの子は相当頭の良い子なんだなって分かったのよ」
――え?
「頭が良いって……。さっきはあーしのことイカれてるって言ってなかった?」
あーしももータメ語になっちゃってたけど、場の空気がもー熱くなってたから、これで良いってなってた。
「言ったわ。あのね、創作活動を続ける中で私がひとつ理解したことを教えてあげる。イカれたことを言えるのは、本当の意味で頭の良い人だけなのよ。肝心要となることを、迷わずに、周りの誰の顔も窺わずに見据えて相手に発信していく。……とっても深いところでの頭の良さがある人じゃないと、そんな大それた、本気でイカれた行動を起こすなんてこと出来ないのよ」
「いやごめん、あーしには正直めっちゃ難しー話過ぎて……」
ナナカの話だからちゃんと真面目に聞いてるけど、ホントにいきなり超謎な話をされたって感じだ。
だけどナナカはそんなあーしの反応にまた噴き出す。
「あははっ。そうね、本物は決まって自分じゃ気付いてないものなのよ」
「えー、マジでどーゆーことぉ?」
ちょっとぉ、ここまで聞いてもホントさっぱり分かんねーんだけどっ!
ナナカはあーしを見て微笑んでる。
けどさっきも言ったけど、それはバカにしてるとか生温かい笑顔だとかいうのとは違ってて。
何処か人の哀愁みたいなものを感じさせるような、でもやっぱり、それさえもグッと背負って話してるって感じのパリッと具合でーー。
「聖女リノン様」
「お、おうっ!?」
いきなりマジトーンな声出されて思わず身構えちまったぜ。
でもさ、これはアレか。来るってことだ、ナナカの真剣な話がさ。
「私は貴女のその本気のイカれ具合――真の熱の心の鼓動に乗りたくなったんです。防具デザイナーとして一人の創作者として、それまでやったことの無い方法に着手しようと思える勇気をくれる、その情熱にね」
「心の鼓動……?」
その言葉の意味はあーし自身にはまったく分かんなかったんだけど、それでも――。
「アナタのキラめくまでの心の力を表せるような、そんな聖女服を作らせていただきます。依頼を受けて、その上で私がそれを作りたいと強く思った、ナナ・クゥの本領を発揮させた本気の聖女服を!」
「……はいっ、よろですっ!!」
――ナナカがこんなにも表情を輝かせてこんなこと言ってきてくれたんだから、細かいことは分かんなくったって別にいいってそー思ったんだ。
素の感じもめっちゃイケてるけど、それを知った上で、職人として決めるべきところはバシッと決めてみせるっつーこの姿勢を見てさ。
マジでかっけえなって思ったんだ、このサイジョウ・ナナカって人に!
※
聖女服の納期には『二十三日間までに』って指定をした。
ホントはキリ良く三十日にしてやりたかったんだけど、ちっとばかり寺院の方で事情が出来ちまってて。
どーしても二十四日後には聖女としての正式デビューしなくちゃいけなくなってたんだ。
けどそこに間に合えば前に言った通り、聖女服を通したナナ・クゥブランドの超アピールにも繋げてくことが可能になる。
――この依頼の翌日からナナカは動き出してくれた。
あーしも速攻でナナカの工房に足を運んで、服の正確な寸法を出す為のサイズ測定に協力。
その後はデゼルのニンフを通して、定期的に製作の進捗ってヤツを確認していった。
デゼルがナナカに、工房からニンフに呼び掛けられる魔道具を渡してくれたんだ。
五日目の連絡でナナカから『カラーリングは赤とオレンジを主体にしようと思うのですが、如何でしょう?』と確認が入る。
アイツの色使いにはあーし的に信頼しかねーからオーケー出した。
なんせ手前の髪をこっちの世界に来て青緑に染めるよーなヤツだ。
色彩感覚を異世界のそれに寄せて、そこに更に自分流を織り込むなんて芸当するの、ド素人のあーしでも凄げえって分かるわ。
一方であーしはあーしとしての、聖女の基礎修行的な行動も続けていったよ。
街の土地勘を掴めたその次のステップとして、ちっとヤバい感じの区域を根城にしてた小悪党を相手に、魔力を使った実戦の経験値を上げたり。
また街の外にも出てさ、野生のモンスター相手に戦ったり、回復薬やらの現地作成のワザを磨いたりなんかもした。
勿論ドナキロの援護にはだいぶ助けられたぜ。
聖女本格デビューしたら、コイツの元々の望みのファリシアの加護をちゃんと与えてやらねーとな。
でもって、なんやかんやあって――。
遂にその時が来たんだっ。
――#7 おわり!――
リノンの魅力にご興味頂けたなら、⬇︎にあるブックマーク登録と評価をよろしくお願いします!




