#7 創作者とファンのマジトーク!(1)
或る意味でサブタイままのお話になります。笑
ナナカとの話は寺院の奥の間で進めることにした。ここ最近でもデゼルと重要な話をするのに使ってたかんな。
どーせなら落ち着いて話せる方が良いと思ってさ、イスやらテーブルやらあーしが街の露店で買ったモフモフ狼野郎くん人形やら、色々と置いてかなりのくつろぎ空間に変えたんだぜ。
「高名なファリシア寺院のその奥の間がこんなに素敵な所だとは、思いも寄りませんでした」
「そーすか? でも気に入ってくれたなら嬉しいっす」
興味深そーに辺りを見渡すナナカに、あーしは素直な気持ちを伝えた。
基本誰が相手でもタメ語で通すあーしだけど、この人にだけはちょっとそーし辛いわ。
そこにドナキロが飲み物を持ってきてくれた。寺院の食堂にあったレモネードだ。
「オークの、修道士さん?」
「ワシは自分の里からワケあってこの寺院に来て、そしてそのまた更にワケあって今はリノンちゃんのボディガードをしてるんじゃい」
「ドナキロっていって、あーしのゼルトユニアでの最初の友達なんすよ」
ナナカは最初驚いた顔をしてたけど、途中からはなんか面白いものを見るよーな目でドナキロをまじまじと見つめてた。
「……うん。奥底にある知性と、荒ぶるような漢気を感じます」
唐突にそう褒めてくる。
ドナキロは女に褒められることに慣れてないもんだから、「な、なんじゃいなぁっ!?」って素っ頓狂に叫びやがった。
――へっ、顔がめっちゃ赤くてウケるわ。
「すいません、コイツ結構ウブなもんで。でもコイツのイケメンっぷりが分かるなんて、流石っすよナナカさん」
「いえいえ。でもそういえばニホンに居た頃の絵師友達に、とても力強い筆のタッチをした人が居ましてね。彼が描く勇猛なキャラクターとドナキロさんとが重なって見えて、それでドナキロさんの内面の理解が進み易かったのかもしれません」
ナナカはそんなことを言って照れ臭そーに笑った。
へー。その人ナナカさんとは絵のジャンルが違ってそーだけど、それでも絵師同士気が合えば仲良くなるってことなのかな?
あとニホンでのことを話すとどーにも恥ずかしい気持ちになるっていう、その感じはあーしも分かるわ。
「の、飲み物は運んだからワシはもう行くんじゃいっ」
あーしが考えてる間に、ドナキロがそー言って出てっちまってた。
まったく、いくら恥ずかしいからって鼻をフンフン慣らしてんじゃねーっての。
「あー、そーいえばナナカさんはニホンじゃイラストレーターだったんすよね」
「はい。ファンタジー系の絵を主軸に描かせて貰っていました」
「それでこっちじゃ防具デザイナーもやってるって、スゴイっすよね」
「ありがとうございます。最初は勝手の違いに戸惑ってばかりだったんですけれど、私を召喚した工房のドワーフ族さん達が私の作業にいちいち目を輝かせて熱い言葉を掛けてくれて。……それがなんか嬉しいっていうか、寧ろ楽しいって風に思えてきて。それで私自身もうちょっと頑張ってみようと踏ん張っている内に、いつの間にかニホンでは持っていなかったデザインのスキルを習得するに至ったんです」
おおっ、それはめっちゃシンプルによく分かる話だぞっ。
「テンションアゲてやってける流れがあるなら、それにノッちまえばいーってことすよね。くーっ、その話なんかめっちゃシビレますっ!」
思わず両手でガッツポーズを取ったあーしに、ナナカはめっちゃにこやかに笑ってくれた。
「ふふっ。依頼の手紙の文面から感じていましたが、リノンさまはとてもはつらつとしたテンションの持ち主でらっしゃいますね」
「え、文字だけでそんなの分かるもんなんすか?」
「まあ、私も文面を読み解くことには慣れがあるといいますか。ニホンではツイッターで、私のツイートにくっつく数多のリプライを見てきましたからね」
「あー、なーるほど」
その言葉には分かるってより、察するって言ったほーがいい理解の仕方をしたぜ。
「あーしの文、めっちゃ頭ワルかったでしょ。さーせん」
改めて自分で書いた手紙の内容を思い出して、そのアホさ加減にもーしわけない気持ちが溢れてきちまう……。
でも、ナナカはあーしのその言葉には首を横に振った。
「そんなことはありません。とても素敵な文章でした。だから私はこの依頼を受けさせてもらったんです」
そんな風にオトナな微笑みで返してくれる。
……そー言ってくれんなら、それは正直ありがたい。
けど、それってやっぱり社交辞令みてーなもんだよなー。
――うん。ここは思い切って、言ってみるか。
「ナナカさん。その……どーせならもっとラフに話しません?」
ラフっていうのは、『砕けた感じ』とかって意味で使う言葉だ。
なぁなぁってのとも、ごぶごぶってのとも違くて。
なんつーかさ、最近ニホンでありがちだった『立場の違いとか気にせずいこーぜ』ってのじゃなくてさ。
『立場が違うのは理解した上で、それを手前達で砕いていこーぜ』っていう、そーゆーことをあーしは言ったつもりだ。
「ラフ、ですか?」
「そーす、ラフす。相手との壁をお互いの個性ごと取っ払ったなぁなぁじゃなくて、あーしが依頼主だからとかこの寺院の聖女だからとかっていう壁を、ナナカさんが持ってる個性でぶっ壊して話して欲しいんすよ」
ナナカはきょとんとしたけど、あーし自身は今めっちゃ真剣に言ってる。
さっきからナナカと話してて、感じてたことがあるんだ。
この人は遠慮とかそーゆーんじゃなくて、ホントのオトナのやり方でずっとあーしと話してる。
仕事を受ける側の者として、依頼主のあーしを立てて話してくれてるんだって。
それは勿論嬉しいことだし、世の中的には決して間違ってないやり方だとも思うけど。
でもさ。ここではもっと、この人自身のパワーを見せてほしいってゆーか。
「あーしはナナ・クゥってブランドのファンになったんす」
ここでナナ・クゥが防具屋じゃ日の目を見てないなんてことは言わねえ。
あーしにはややこしいことをオブラートに包んで話すなんて無理だ。手紙でもそーゆーのは抜いて、とにかくあーし個人がナナカのナナ・クゥについて思ったことを書き連ねた。
だからここでも、ひたすらシンプルに要点だけを伝えていく。
「あーしはナナ・クゥの服の可愛さで、世界を貫いてやりたいんす。その為にサイコーに可愛い聖女服を作ってほしい。だからそれを着るあーしに対する話では、ナナカさんのマジのトークで返してほしいんす。だってそーじゃなきゃナナカさんもぜってーマジの力出ねーって思うんすよ!」
――カンペキに決まった、筈だ。
ナナカの口が、半開きになっている。
そして――
「……」
けっこうな沈黙の時間があって――
そんで……。
「……ふ、あははははっ! やっぱりこの子サイッコーじゃん、私が見込んだ通りだったわ!」
――ナナカはいきなり盛大に噴き出して、腹抱えて笑って、結果なんかめっちゃ良い顔になってこっちを見てきたんだ。
――(2)につづく!――
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