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#6 サイジョウ・ナナカ!

果たしてリノンは、防具デザイナーであるサイジョウ・ナナカに逢えるのか?

 ファリシア寺院に帰ってきたあーしは、デゼルに聖女服特別注文(オーダーメイド)について相談した。


「リノン様はこの寺院のアイドルとなる御方。その為の準備なのですから、貴女様の思う通りになさいませ」


「サンキュー、お前ならそー言ってくれると信じてた。でさ、実際にどーやって依頼したもんかな? ゼルトユニアにはDMとかそーゆーネット的なの無いし」


「ふふ。確かにそうですが、しかし私に出来る方法でサポートさせて頂きますとも」


 デゼルは頼もしげにそー言ってくれた。


 夜になって、あーしは自分の部屋でひざ下丈ワンピースタイプの寝巻姿で、サイジョウ・ナナカに宛てた手紙を書いた。いわゆる依頼状ってヤツだ。


 ――つっても、あーしには自分の理想の服のイメージを上手く伝えられる程の文才は()え。


 だからナナカをこの寺院に招待して、直接のやりとりで服の希望を伝えたい。依頼状にもそのことを書き含めてる。


『ファリシア寺院の名にはそれだけで人を動かす力が有ります、だから臆さずにサイジョウ・ナナカを呼びつけなさいませ。貴女様ご自身の文章でね。――大丈夫、きっと上手くいきますよ』


 事前にデゼルが言ってくれた言葉がそれだった。まーアポ無しでいきなり相手の仕事場に飛び込んじまうのも迷惑掛かりそーだし、それもあるから来てもらう方を選んだんだ。


 なんでもこの世界の職人(クラフター)ってのは、自分の作業領域に他人を入れるってことそのものを嫌がる傾向にあるらしーんだと。


 その理由がちょっと独特で面白くて、作業員ってよりも、作業場に宿る精霊達が見知らぬヤツを嫌がって機嫌を損ねる――それは作業の成否にも関わることになり、だからダメなんだっていうさ。


 ファンタジー世界ならではな発想ってことなんだよなー。そもそもあーしも今じゃ自分の意思で煌綺妙杖ベルサレェトを出したり消したり出来る、立派なファンタジー系ギャルなワケで。


 ……よっし書けた。明日デゼルに送って貰おっと。


 今夜はもー寝るわ、おやすみー。


 ※


 次の日、昼っ。


「んじゃデゼル、頼んでいーか?」


「はい、しかとお任せあれ」


 あーしはナナカへの手紙をデゼルに手渡した。で、一体どーやって送るんだろな?


「サイジョウ・ナナカの工房(アトリエ)の場所は修道士に調べさせました」


「そーなんだ。皆、あんがとなー」


 近くに居た修道士らにニッカリ笑顔で手を振るあーし。


 いや、そこの連中とは違うヤツが調べたのかもしれねーけど。それでもみんな朝早くから寺院の仕事してんのは知ってたから、まー改めて礼言うのも恥ずかしーし、だからここで、な。


 修道士ら、戸惑いながらも()()()してくれてる。あはっ、可愛らしーじゃねーかっ。


「手紙出すのも修道士らの誰かにやって貰うのか?」


「いえ、そこまでの任をこなせる者は今の寺院には()りません」


 こっちは相変わらず手厳しーぜ。でも確かにデゼルの居ないこの寺院で聖女やれってなってたなら、それはぶっちゃけあーしも不安だわ。


「でも、じゃあデゼルが自分で行くのか?」


 それなら向こうも手紙を受け取るのまでは間違いなくしてくれそーだけど。デゼル、まず顔からして迫力あっからさ。


 だけどデゼルはそれにも首を横に振った。


 ええ、じゃあ誰が行くんだよー。


「――これが寺院からの依頼であることを強調する、適任となる者が居るのですよ。人間とは違う、使い魔(ファミリア)に属する者で御座います」


 使い魔(ファミリア)!? まーた新しいファンタジー要素が出てきやがったな!


 デゼルが手のひらを床に向けて念を籠める。


 すると床がぱあっと光って、そこから、全員や着てる服までもが淡く発光した前髪長い(メカクレ)女が姿を見せたんだ!


「だ、誰よコイツっ!?」


 袖無し上着(トップス)にロングスカート、でもって裸足……という謎な姿。


 いや、あーあれか。服っぽく見えてるのはコイツのエナジーがそーゆー形を取ってるだけで、本当は裸なのとそー違わねーんだ。だから足が裸足でもそれは問題ねーんだな。


「ニンフという種族です。俗人には()()()()()高潔な気質でありまして、彼女を使者に立てることがこのファリシア寺院の依頼であることの強い証となるワケです」


「な、なるほどっ!!」


 これは素直に脱帽だわ。


 流石デゼル。ここまで威厳出してやってくれりゃあ、もー見事と言うしかねーぜ!


 改めてニンフの方を見る。おー、うっすらと微笑んできてる。メカクレだから表情が見えにくい筈なのに、それが逆にめちゃ可愛いぞっ!


 これは、神秘可愛いだ。見てる内にコイツの醸し出してる雰囲気がクセになっちまうよーな、そんな特殊な性癖が芽生えちまう連中も世の中にゃ居るかもしんねーな。


 デゼルから今度はニンフへと手紙が手渡される。


 ニンフはその手紙を自分の胸に当てて、ひとつ小さく会釈(ぺこり)してゆっくりと床の下へと沈んでった。


 仕草までいちいち可愛いっ……。


「彼女は異空間を通ることで、他者の目に触れずに行動が可能。メッセンジャー役としてとても有用なのです」


「お、おう。あのニンフが行ってくれんなら、あーしももっと堂々としてようって気になれるわ」


 うん、ニンフの帰りを信じて待つぜっ。


 その後――。


 帰ってきたニンフの手には、ナナカの工房(アトリエ)からの返信手紙があった。


 その手紙には『十八日後、サイジョウ・ナナカがファリシア寺院に(おもむ)きます』ということが書かれてたんだ。


 十八日後と聞いて最初は随分掛かるなって思ったんだけど、それは間違いだってすぐに分かった。


 工房仕事ってのはデザイナー個人だけじゃなく、実際に防具を生成するヤツや防具の素材を収集するヤツとの連携作業になる為に、そこらも踏まえて日程(スケジュール)を組まなきゃいけないらしくてさ。


 その上での対応と考えれば、寧ろめっちゃ早い日取りなんだってそー思い直したのさ。


 ※


 それから十七日の間、あーしはテキトーに遊んで過ごすなんてことは無かったよ。


 ドナキロ連れて街を散策して土地勘を掴んだり、ちょっとずつ早起き出来るよーに体を慣らして、そんで十二日目からは修道士らとマジに変わらねーリズムで朝過ごすよーになれた。


 ゼルトユニア流のスキンケア法についても、理解を深めてったぜ。下手すりゃニホンに居た頃より肌の調子良くなったかもしんねーよ?


 本読んでの勉強は、まあそこそこ。数は色々と読んだわ、三十ページ辺りで飽きて次にいったってのが大体だけどな。


 でもって、十八日目――。


 修道士の一人があーしの部屋に急いできたからすぐに分かって、礼拝の間へと出迎えにいった。


 ……居る、居るぞっ。あれがナナカか!


 年上だけど、百六十九センチのあーしに比べたら結構小さく見える。


 けど、迫力がある。磨かれた綺麗さのオーラが百五十五、六センチの体を大きく感じさせる。


 髪型はオトナっぽいややクセの付いたセミロングで、髪色(ヘアカラー)は絶妙な深さの青緑(ビリジアン)


 切れ長な目が髪の雰囲気とベストマッチしてめっちゃ可憐で色っぽくて、深紅の前開きワンピースをボタン全開――腰部のバンドだけできゅっと()めてる。こ、腰()せえっ。


 ネックリボンがやや左側に付いた黒レース素材のインナー服。そして下にはスリムな体型が活きる、()せた色合いを持ったネイビーブルーのパンツスーツ。


 ()げえオシャレさだ……。


「はじめまして、聖女リノンさん。【ナナ・クゥ】のデザイナー、サイジョウ・ナナカと申します」


 オシャレさに(おご)らない落ち着いた物腰で、向こうから挨拶してきてくれた。


 めっちゃオトナな振る舞い、だけどほんのちょっぴり照れ臭そうな微笑み。


 ――あー、初対面だけど分かるわ。


『同じニホンの、人と人なのにね』っていう、暗黙の了解みたいな、肩書とかじゃねえ根っこからの親しみの気持ち……。


 あーしもさ、今照れ臭いもん。


 ――#6 おわり!――

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