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35話 クローバーの花束をあなたに


 居た。都合がいいことに小さな広場にヤツは居た。


 大きく息を吸い、ゆっくりと震える足を前に出す。


「やあ、お久しぶり。ダンスパーティの招待ありがとう」


 スカートの端を軽くつまみ上げて、膝を折る。

 ガルルとこちらを威嚇するように唸り声をあげるが私は無視をする。


「少々お待ちになられて下さいね。もう一人遅れているようなので、呼びますわ」



 小さく息を吐く。



「『PTS:召集 ターゲット プレイヤー クロース』」



 これで信仰ポイントが無くなった私たちのパーティーは、パーティースキルを使えなくなった。


 私は「まぁ、もう使うことはないか」と小さく笑う。



 どこからか淡い青色の光が飛んでくる。そして、ゆっくりと人の形に変わってくる。



 やがて青色の光は山口くんの姿に変わる。


 ゆっくりと辺りを見回した山口くんは全てを察したのだろう。私に優しく微笑む。



 これがデスゲームなら私は間違いなく殺人罪になるだろう。容疑者死亡の不起訴処分だ。



 いつの間にか涙が流れていたようだ。山口くんがゆっくりと震える手で私の頬を拭う。



 あっ……



 心臓が小さく音を立てる。



『ゆき、恋はね突然くるんよ!』



 少し早い走馬灯だろうか。中学時代の日菜乃のを思い出した。



 この人は私と死ぬことを受け入れてくれている。



 多分これが恋なんだと思う。


 人を好きになるのに理由は必要ないとはよく言ったものだ。



 待ってくれているオーディエンスの期待に答えるようにゆっくりと両手を頬に添える。



 最初で最後のキスを君にあげるよ。




 私が見た最後の景色は真っ赤に燃える炎に包まれた君の笑顔だった。

 かなり短いですが最終話です。

 エピローグも19時投稿します

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