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33話 別れと出会い


 遠征を1度することで、無事に日菜乃と朱莉の分のシュヴローのレザーアーマーを購入することができた。


 装備が整った私たちは狩りの対象をアルブルユマンからブルジェオンに変更することにした。


「ダメージ全くなかったねぇ!」

「高かっただけあったとよ」

「でも二ヶ月の稼ぎが全部吹っ飛んだけどね」


 パチパチと乾いた音を立てる焚き火に手をかざす。今日は日菜乃と朱莉の装備の確認でアルブルユマンを少しだけ討伐した。



「でもさ、よかったん? この装備1ランクか2ランクは上の装備やったとよね?」

「山口くんが問題ない言ってるからいいんじゃないの?」

 真っ暗なキャンプ場の唯一の光源を頼りに、山口くんは何やら帳簿をつけている。

 静かにのぞみこむと、今日1日の耐久の減りを計算しているようだ。


「戦うモンスターが変わるってわくわくするよねぇ」

 のんびりとした朱莉の声の背後から「おい」と野太い声がした。


「あ! お久しぶりです。あとお姉さんは今日はお酒飲まれてないんですね」

 そこには大剣の件でお世話になった男性と以前は酔っぱらってた女性がいた。


「これから飲むわ」

 軽くウィンクする女性とは対照的に男性は私たちの装備をまじまじと見る。


「それだけの装備があれば後れをとることはないだろうな。俺たちは明日から狩り場を変えてエルベオの城下町にするつもりだ」

「え? フラリスも離れられるのですか?」


「あぁ、ここは悪くはないが俺たちもそろそろギルド作ろかって話になってんだ。だが、フラリスには『フラワーガーデン』ってでっけぇギルドがあるからな」

「別に1つの街に複数あってもよかったですよね? 『フラワーガーデン』さんと仲悪かったりするんですか?」

 ベータテストのメンバーがほとんどの『フラワーガーデン』と仲良くしない手はないと思う。なぜ出ていくのだろうかと首をかしげる。


「仲は悪くはねぇがな……。レアアイテムや狩り場確保で将来的に揉めるかもしれねーから拠点を移そうと思ってんだ」

 私たちは後方を走っている冒険者だ。狩り場の情報も教えてもらってるし、職業テストの内容も教えてもらっている。

 先を走る先行組には先行組の悩みがあるのだろう。私はギルド間の揉め事に首を突っ込むのを避けるために曖昧に返事を返した。


 雰囲気で察したのだろう、「ごっほん」と咳払いをして本題へと話を繋げる。


「そこで……だ! 今からパーティーやるがお前らも来ないか?」

「お肉や甘いものもあるわよ? 『料理人 18』の人もいるし、明日の狩りが楽になるバフ付きの料理も食べれるわ」

 皆が期待の眼差しで私を見る。リーダーの仁井くんは軽く頷いた。


 ゆっくりと立ち上がった私はお世話になりますと一礼をした。



 大剣を譲ってくれたFeマンさんと魔法使いのマリリンさんが旅立って1週間が経過した。ここで狩りをしていたほとんどの人たちは共にエルベオの城下町へ旅だった。

 そのため、沢山のテントが張られて、常に誰かの歌声が聞こえてた『深林』は静寂に支配されていた。


「寂しくなったねぇ」

「人おらんかったら、こんなに静かやったと」


 私たちと数組だけがここで狩りをしている。


「今まで守られっぱなしだったんだね。知らなかったよ」


 最後のパーティーが終わった翌日にFeマンさんから沢山のアドバイスを貰った。


 彼らがここで陣を張ってすぐの頃は、夜な夜な夜襲を受けたそうだ。数人が犠牲になり、日々睡眠不足に悩まされていたが、結界を張ることでやっと安定したとのことだ。


 その後は、後続プレーヤーがやってきては立地や狩り場を巡ってのいざこざがあったが、その都度話し合って問題を解決していったらしい。


 私たちが来た当初もまた揉め事になるのかと警戒したらしいが、1日だけの様子見遠征や時間や日時を決めた規則正しい狩りに、線香を使いモンスターが沸かないように見張りを立てた様子を見てからは、遠くから守る方向にシフトした。


 居なくなるまで気づかなかったが、私たちのテントは大剣使いのFeマンさんたちのグループの中心に立っていた。

 周りにはモンスターが立ち入れないように結界を張ったテントに囲まれていて、私たちはモンスターが沸かない線香を炊くことで擬似的に結界を使ったのと同じ状況になっていたようだ。



 そして、大人達が居なくなった前回の遠征は反省の連続だった。


 幸い大きな事故に繋がることはなかったが、大きな守りがなくなった私たちは1時間起きに襲撃されて睡眠不足に悩まされたり、狩りを終えて拠点に戻るとテントが壊されてたこともあった。


「是非とも一緒にやろうって」

 他のパーティーと話し合いをしてた仁井君が笑顔で戻ってきた。


「これでローテーション組めるようになるのはよかね」


 前回の失敗と先達に学んで、私たちは他の3つのパーティーと共同で結界を購入することにした。これまでは雨が降ったら出発を1日遅らせるなど、自由に活動してたが今後はより大きい集団で行動することになる。


「とりあえず明後日皆で戻ってテントと結界を購入することになったよ。日数は1チーム四泊五日で、順番はあとで決めようってさ」

「交渉してくれてありがとうね」

 日頃から交渉役の仁井くんを労って、コーヒーを手渡す。

 小さな一歩かもしれない。ただ、先人の後を追っただけかもしれない。

 それでも私は一歩大人に近づいた気がする。




 そして、ローテーションを組んで二週間が経過した。



「今日はなかなかおらんね」

 先頭を歩いて皆を先導する日菜乃が立ち止まり、警戒心を解いて振り向く。


「こっちも反応ないよぉ。見逃しはいないかなぁ」

 最後尾で背後からの奇襲に備える朱莉も警戒を解いたようで、私たちは小休止を取ることにした。


 ローテーションを組んでも、うまく回らないことや結界が壊されたこともあった。

 その時はこれ以上モンスターは出てくるなと思っていたが、その願いが叶ったのかここ数日はモンスターとほぼ遭遇していない。



「昨日もほとんどいなかったよな?」

「だな。どうなってんだ? もしかしておれたち狩り尽くしたか?」

「さすがにそれはないと思うけどな……」

 前衛三人は腕を組み少なくなったモンスターについて考えているようだ。


「次ここいかん? 先週いったきりやん」

「日暮れまで帰れるかなぁ? モンスターの数によっては日が暮れそうだよぉ」

「と、途中まで行って引き返すのもいいかも」

 中衛はこれから回るコースについて話し合っている。


 私たち後衛は魔力回復のために休憩だ。

 本来ならどちらかの話し合いに参加すべきなのだろうが、何もせずに木に寄っ掛かり魔力と体力を回復させる。


「ゆき先輩も飲みますか?」

 ナルミくんが水筒を取り出す。折角だから頂くことにした。


 トクトクと注がれるコップから爽やかなレモンの香りが広がる。

 白い湯気をたてたレモンティーに口をつける。口内に広がる甘酸っぱい刺激が疲れを癒し、魔力回復も速めてくれる。


「やっぱり『料理人』取ろうかな。野外で料理できたら遠征も楽になるよね」

「確かにそうですけど僕は3食お弁当でもいいと思いますよ」

 レストランで買ってきたバフ効果のある料理を朝とお昼は食べている。夜は『料理人』の職業スキルがないのでバフ効果を付与できないが、私が作っている。


「ナルミくんは私の手料理がそんなに嫌いなのかぁー」

 手を伸ばしナルミくんの髪をわしゃわしゃと触る。「そんなつもりはないです」と弁解しているが無視してもう少しだけ触ることにする。


「あれ?」


 コツンと小さな何かが頭に当たった。

 髪を触り確認すると、小枝が落ちてきたようだ。何気なく頭上を見上げると、違和感を感じた。


 腕の下で途中で動きを止めた私に「ゆき先輩?」とナルミくんが首を傾げる。



 そっとナルミくんの手を引き、今まで私たちが座っていた場所を広く見れるように移動する。


「ねえ……。ここ変じゃない?」

 私たちがいた場所は、草が倒れ高い位置の枝が折れていた。


「そうですか?」

「私たちここに座ったの初めてだよね? この辺だけ草が踏み潰されたあとがあるよ?」


「どうしたんだい?」

 ゆっくりとした足取りで仁井くんと山口くんがやって来る。


「あのね、何か大きな生き物が通った後があるの」

「大きな生き物? 巨大生物とかいたか?」

「い、いないよ。自然界ならともかく、ゲームだからエリアを越えて出現はしないし」

「だよな……」


 二人の間では既に結論ついているのかもしれないが、私は違和感を伝えることにした。


「この辺の草が踏まれたような跡が残ってないかな?」

「んー……他のプレイヤーが踏んだとか?」

「も、もしかしたらアルブルユマンが通ったとか?」

 アルブルユマンが通ったのでは? と結論つける二人に、頭上の折れた木を指差す。


「あそこの木も折れてるでしょ? 多分3メートルくらいはある高さだよ。アルブルユマンだと2メートルくらいだし、腕を振り上げても届かないと思うよ」

 

 頭上の折れた木を二人は見上げる。


「どう思う?」

「か、風魔法とか? モンスターの気配ないし」

「そうだよな。ここで戦ったプレイヤーが地形破壊したんじゃないかな」

「そ、それか自然の風とか?」

「この前風強かったもんな。あんときテント飛ぶかと思ったよ」


 不自然に何本も枝が折れてるように私には見えるが、どうやら二人には気にならないようだ。


 この話はここで終わり、これからのルートが発表された。ルートは北へ進みその後西から南に抜ける半時計回りのようだ。


 先ほど見つけた不自然な跡は西へ伸びていた。



 本日は18時にも投稿いたします。

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