31話 休日
反省会が終わり、その足で私と仁井くんと山口くんの3人で教会に行くことにした。
陣内くんはこの前のお祭りで知り合った人達とサッカーをするらしく、杉村くんとナルミくんが人数合わせに連行されていた。日菜乃と朱莉は何やら差し入れをもって見学にいくらしいから、私も教会のやりとりが終わったら行こうか思っている。
ぼーっと今後の予定を考えながら二人の後を歩いていたら教会にたどり着いた。
フラリスの教会は大きな木の中にあった。木製の扉を開くと、NPCの案内人が声をかけてきた。
『ごきげんよう。本日はどのような用件かしら?』
シスターの格好をしたNPCがどこぞの貴族言葉を話し出したことに、驚きよりも笑ってしまった。
「ふふふ……。フラリスのシスターはおもしろいね」
『あらぁ、嫌だわ。人の喋り方で笑うのは失礼がすぎるわよ』
「ふふふ……。そうですよね、すみません」
にやけた顔を引き締めて、NPCに謝罪をする。
『分かればよろしくてよ。さて、本日の用件を聞こうかしら?』
「えっと、教会クエストを受けに来ました」
『それなら3階の正面カウンターね。あちらからいけますわよ』
NPCに教えられた階段を昇る道ながら、山口くんに訪ねてみた。
「フラリスのNPCはみんなあんな感じなの?」
「いや、そ、そうじゃないよ。変なのもいるけど……。多分違うと思う……。違うかな……?違うと思いたい……」
どうも歯切れの悪い山口くんの反応にこれから会う受付のNPCに期待で胸が膨らむ。
『まいどーまいどーそこの両手に華ならぬ両手に団子のお嬢様、モテモテだね! 今日は何にしやす?』
1階の案内をしてくれたNPCとキャラデザインは全く一緒なのに性格がこうも違うものなのかと思わず引いてしまった。
「た、楽しみにしてたけど……これはないや……」
「そ、その……ごめん」
『へいへい! 二人で話さないで、シスターにも話しなよ? 悩める子羊たちを導くぜ』
「えっと、教会クエストを受けに来ました」
『そりゃーそーだよね。ここ教会クエストを受けるカウンターだもん。ここでオムライス何か注文された日には、私はシスターやめて調理師やらなきゃーいけないじゃん! 料理なんか作ったことねーよ! あ、食べたこともないや。だってNPCだもん』
謎のハイテンションに付き合いきれない私は、仁井くんに場所を変わり対応を任せた。
「アルブルユマン討伐クエストと種の納品クエストを受けたいです」
『お? どんなクエストがあるのか聞かないのかにゃ? いいね、物分かりのいい冒険者は好きだよ。それじゃーパーティーリーダーとグループリーダーはブレスレット出しな、受理するからさ』
そう言われて左手のブレスレットをNPCの前に出した。
私たちのブレスレットの上でさっと軽く手を振ると、ブレスレットが赤く光った。
『はいはい、これで受理完了ね。システムメニューから進行状況見えるから、確認してね』
受理を終えた私たちは一刻も早く教会を出るためにカウンターを後にする。背後から『シエスタするかな、シスターだけに。にゃはは』と笑い声が聞こえたが、無視をして足早に去っていった。
「どっと疲れたよ……」
「そうだね、僕もだよ」
フィッシャやルージュ村のNPCはむろん、ここフラリスの宿やレストランのNPCも同じくここまでキャラは濃くなかった。
「変な設定のキャラだったね。もしかしてさ、ストーリーのキーマンかな?」
仁井くんは「ストーリー?」と眉間にしわを寄せて思い出そうとしている。
ファンタジーワールドでは、はるか昔に封印された魔王が復活して人類に驚異を与えている。その魔王を倒すのが冒険者なのだが、私たちは生活の安定に重きをおき特にストーリーは進めていない。
「あぁ……そう言えばそうだったね。魔王の進行だっけ? すっかり忘れてたよ」
「私たちストーリー進めてないもんね」
仁井くんもすっかり忘れていたようだ。私も、あの変なキャラに会うまでは忘れていた。
「そうだね。それよりさ、僕は学校に行くつもりだけど水田さんや三太はこれからどうする?」
「私は日菜乃たちと一緒にサッカー見ようと思ってるよ」
「お、俺もこれから鍛冶の授業を受けるつもりだ……よ」
仁井くんも山口くんも冒険者学校に行くようだ。サッカーの見学よりかは、少しでも魔法の精度を上げた方がいいのかもしれない。
「ふむ。それなら私も冒険者学校に行くよ。魔法のコツを教えてもらったから少し練習したいし」
「だ、大丈夫なの?」
この大丈夫は約束を無視してもいいのかといいたいのだろう。
「うん、大丈夫だと思うよ。ただ1度断りには行くけどね」
「そ、そうか。なら1度サッカーしてるところにいこうか」
途中で差し入れを購入してサッカーをしている広場に向かった。
サッカー場はまだ行ったことのないフラリスの中にある『スポーツの森』にあった。
森の中はよく手入れがされていて、ここだけは同年代のヨーロッパのような雰囲気がある。
小高い丘を登ると、金網のフェンスが顔を出した。
「は? なにあれ?」
今まで目にしてこなかったフェンスを見つけて、足早に近づく。
フェンスの中では陣内くんたちが、通常のサッカーコートの半分くらいの広さのコートで、5対5の試合をしていた。
ゴールポストもあるし、回りにはフェンスでボールが外に出ないようになっている。さらに、日菜乃や朱莉はフィールドの外に設置されているプラスチックで作られた青色のベンチに座っている。
「あれってサッカーボールだよね? こんな場所あったんだ……」
「ここはフットサルコートだね。あっちにはバスケットコートやテニス場もあるよ」
仁井くんが指差す方向を見るが、ここからは見えない。
「冒険者の能力でスポーツをしたら、漫画とかアニメのようなプレーができるかもしれないってことで、ベータテストの時に要望されてたらしいよ」
隣で仁井くんの説明を聞きながらコートに目を向ける。
ナルミくんはもしかしたらサッカー経験があるのだろうか、素早いドリブルで相手を抜いて陣内くんにパスを出している。
「ここの中のボールとかスパイクとかは全てレンタルできて、スポーツの森の外に持ち出すことはできないけど、お金さえ払えば誰でも使用できるよ」
「ほ、他のRPGでもミニゲーム的なものはあるし……。それと同じだね」
世界観を大事にしているゲームだと思ってたが、以外と愉快なところもあるようだ。それならば、もっと便利性を向上させてほしいと思う。
朝、顔を洗うときは桶に入った水を部屋に運ぶ必要がある。洗面台はいから、窓に写った影を頼りに髪のセットをしないといけない。さらに歯を磨くのも宿の外にある溝でやっている。
水を飲むのもわざわざ受付まで行って水差しを貰わないといけない。
変なところはリアルに拘ってサッカーコートなどでは拘りを捨てているのかと、脱力感が支配した体を動かしサッカーコートを後にする。
ゲームが始まって半年はたっているのに以外と知らないとが多いことに気づく。
テレビやネットを筆頭に、新聞やラジオなどの情報媒体がないから私たちが知らないだけで、もしかしたらもうすでに魔王退治寸前まで進んでいるプレイヤーがいるのかもしれない、と考えていると冒険者学校についた。
水魔法の講義ではNPCの教師が授業をおこなう。先生は時々冗談を言うが、教会のNPCのような感じではない。
やはり、あのNPCたちだけが特殊だったのだろうと考え講義に集中することにした。
翌日は午前に前衛3人の予備の武器を揃えて、職業のレベルを上げるためにテストを受けにいった。
次の試験を受けるにはレベル×ゲーム内日数が必要になる。
前回『弓使い』のレベルを30まで上げることに成功した日菜乃と朱莉は、前回からまだ30日を経過していないため、試験を受けることができなかったが、『弓使い』以外の職業は全員と同じ12レベルまで上げていた。
そして、初めての四泊五日の狩に出発した。
18時も投稿いたします。




